身体の『かゆみ』の原因は?考えられる疾患、対処法を解説

「かゆみ」は身体の何らかの異常を知らせるSOSです。乾燥やアレルゲンによる皮膚への外的刺激、皮膚の病気、内臓の病気などによってかゆみ症状が起きることがあります。今回は身体にかゆみが起きる原因や対処法を解説します。

かゆみが起こる原因

「かゆみ」は私たち人間の身体に備わった防衛反応の一つであり、大切な皮膚感覚です。例えば、腕に小さな虫が付着した時、皮膚の表面近くにある神経を通してムズムズするようなかゆみを知覚し、とっさに手で払いのけられます。かゆみを伝える神経は皮膚の表皮と真皮の境目まで伸びてきており、皮膚への外的刺激に反応して、シグナルを脳に伝えています。

一方で、「皮膚は内臓の鏡」ともいわれるように身体の中で起こった異常がかゆみ症状として皮膚に現れるケースもあります。身体の中のアレルギー反応によって、かゆみの神経伝達物質であるヒスタミンが放出された場合や何らかの内臓疾患が存在している場合にも、かゆみ感覚として脳に伝わります。

日常的によく見られるかゆみの原因 には、皮膚の「乾燥によるもの」「炎症によるもの」「アレルギーによるもの」「真菌(カビ)によるもの」があります。

乾燥によるかゆみ

私たちの皮膚は皮脂膜でコーティングされた角質層(角層)からなる「バリア機能」によって守られています。皮膚のバリア機能は、皮膚の水分を外に逃がさないようにするとともに、微生物やアレルゲンなどの異物の侵入をブロックしています。しかし、間違ったスキンケアや加齢などによって皮膚のバリア機能が低下すると、皮膚から水分が逃げ出し、乾燥が進みます。潤いを失った皮膚はさまざまな外的刺激に対して無防備になり、少しの刺激でもかゆみを感じるようになります。

炎症によるかゆみ

皮膚の病気、薬品・化粧品のかぶれ、虫刺され、特定の物質に対するアレルギー反応が起きるなど、皮膚の防御反応として、炎症が起こります。皮膚に炎症があると、強いかゆみ症状とともに、赤みや痛み、はれなどの症状を伴うのが特徴です。アトピー性皮膚炎のかゆみ症状もこの炎症によるものです。

アレルギーによるかゆみ

食べ物や花粉など「アレルゲン」とよばれる特定の物質に対するアレルギー反応が起きると、かゆみとともに赤みやはれなどを伴うのが特徴です。アレルゲンは人によって様々です。蕁麻疹のかゆみ症状はこのアレルギー反応によるものです。

真菌によるかゆみ

いわゆる水虫(足白癬)やマラセチア毛包炎など、真菌類(カビ)の一種に感染することにより、皮膚にかゆみが生じることがあります。

かゆみの対処法

かゆみの対処法は、かゆみの原因によって変わります。ただし、いずれのケースでもかゆみに任せて掻いてしまうと、掻くことが新たな刺激となってさらにかゆみが増すという悪循環に陥ります。

自宅でできる応急処置として、冷たいタオルや氷を入れたビニール袋を当てて、患部を冷やし、かゆみをしずめましょう。

乾燥によるかゆみ

冬場の乾燥や洗浄力の強い石鹸による洗いすぎ・こすりすぎによる乾燥が原因で、皮膚がカサつき、かゆみがある場合は、保湿剤を使って保湿ケアを行いましょう。

炎症によるかゆみ

「薬品や化粧品にかぶれた」「虫に刺された」などのトラブルによって皮膚が赤くなり、かゆみがある場合は、炎症をおさえる治療が必要です。市販のステロイド外用剤を使って、かゆみの元になる炎症を抑えます。ただし、かぶれや虫刺されに対して、ステロイド外用剤を5~6日使用してもかゆみが治まらない、あるいは悪化している場合は使用を中止し、皮膚科を受診してください。また、アトピー性皮膚炎を持つ人は専門医の指導と適切な治療を受け、症状をコントロールすることが大切です。

肝臓・胆嚢・腎臓の病気がある人で、かゆみ症状が現れた場合はかかりつけ医に相談しましょう。病気に心当たりがない人も、全身のかゆみが現れた場合は医療機関を受診しましょう。

その他、掻くのを我慢できない時やかゆみが強くて眠れない時、皮膚に水疱やただれなどの症状がある時、発熱やめまい、吐き気などの全身症状を伴う時、症状の範囲が手のひら2枚分を超える広範囲におよぶ場合も自分で治療することはできません。医療機関を受診してください。

アレルギーによるかゆみ

特定の物質に触れたり、摂取することで「ヒスタミン」という物質が分泌され、かゆみやはれなどのアレルギー症状があらわれます。治療としてはこのヒスタミンのはたらきを抑える「抗ヒスタミン薬」を服用します。また原因物質に触れたり食べたりしないことが大切です。原因がわからない場合は医療機関を受診しましょう。

真菌によるかゆみ

水虫やマラセチア毛包炎など、真菌が原因で起こる症状に対しては、真菌の増殖をおさえる治療が必要です。しかしながら、皮膚真菌症を自分で見分けることは難しいため、おかしいなと思ったら、医療機関を受診し、医師の診断と治療を受けましょう。皮膚真菌症は、家族やパートナーなど周囲の人にうつしてしまうリスクがあるため、直接的な接触やタオル、バスマットなどの共有はやめ、感染予防に努めましょう。

かゆみの予防法

かゆみの予防法も、かゆみの原因によって異なります。

乾燥によるかゆみ

乾燥肌が原因でかゆみがある場合は、皮膚本来のバリア機能を高めることがかゆみ予防になります。規則正しい生活リズムと正しいスキンケアを行い、皮膚のバリア機能を高めましょう。基本となるのは充分な睡眠とバランスのよい食事です。食事面では皮膚の細胞の修復に欠かせない栄養素であるタンパク質、ビタミン・ミネラル類を意識して、1日3回、規則正しく食べましょう。

スキンケアに関しては洗いすぎ、こすりすぎに注意し、入浴・洗顔後には保湿ケアを習慣づけましょう。保湿剤を塗ることで皮膚を乾燥や刺激から守るとともに、皮膚のバリア機能の強化につながります。

炎症によるかゆみ

かゆみの原因がかぶれや虫刺されなどの皮膚トラブルに伴う炎症であることが明らかな場合は、原因を取り除きます。かぶれの原因になる物質に触れないようにする、虫よけを塗って虫に刺されないように予防するなど工夫しましょう。

真菌によるかゆみ

皮膚真菌症によるかゆみを予防するには、まず皮膚を清潔に保ち、真菌に感染しないようにすることが重要です。特に水虫を予防するためには、公共浴場やスポーツジムなど、不特定多数の人が裸足で過ごす場所でのバスマットやスリッパの共有を避けるなどして、感染を予防しましょう。ただし、万が一、真菌が皮膚に付着しても、その日のうちに石鹸で洗えば感染することはないと考えられていますので、過度に心配する必要はありません。

かゆみを伴う皮膚疾患

かゆみの多くは、皮膚で起こったトラブルに反応して起こります。まずはかゆみの原因になりやすい皮膚トラブルを解説します。

乾燥肌・乾皮症(かんぴしょう)

皮膚が乾燥して皮膚のバリア機能が低下することによって、少しの刺激でもかゆみを感じる状態です。「ドライスキン」とも呼ばれます。かゆみに任せて掻くことで角質が白い粉をふいたように剥がれ落ち、皮膚のバリア機能が破壊されて乾燥が進むという悪循環に陥ります。外気が乾燥する冬場にひどくなる傾向があります。

接触皮膚炎

いわゆる「かぶれ」のことです。特定の物質に皮膚が触れることで炎症による赤みやブツブツ、水ぶくれができ、強いかゆみ、痛みを感じます。化学物質による刺激が原因で起きる「刺激性接触皮膚炎」と、アレルギー反応によって起きる「アレルギー性接触皮膚炎」、紫外線が関わる「光接触皮膚炎」があります。原因物質に触れたところにだけに症状が出ます。

アトピー性皮膚炎

強いかゆみを伴うジュクジュクした湿疹が現れて、良くなったり、悪くなったりを繰り返す病気です。顔、耳、首、わきの下、ひじ、ひざなどの部位に左右対称に出やすいのが特徴です。

蕁麻疹

皮膚に突然強いかゆみを伴う赤い膨疹(ぼうしん:皮膚の盛り上がり)ができる病気です。数時間~24時間以内に何事もなかったかのように痕を残さず自然に消えます。しかし、中には範囲が広がったり、長期間症状が続いたりする場合もあります。食べ物が原因と思っている人も多いですが、ほとんどは原因不明です。

あせも(汗疹)

あせもは医学的には汗疹(かんしん)と呼ばれ、大量に汗をかくことによって汗の出口「汗管(かんかん)」に汗がたまり、皮膚表面に透明のプツプツや赤み、かゆみが出る皮膚トラブルです。特に高温多湿の季節に多くの汗をかいた後など、急に症状が出るのが特徴です。

手湿疹

手指にできるブツブツ・赤みなどの湿疹や炎症の総称です。いわゆる“手荒れ”がさらに進行した状態と考えられており、炎症による皮膚の赤みやかゆみ、小さなブツブツなど、いくつかの症状が混ざり合って発症することがほとんどです。悪化すると、皮膚が極度に乾燥して亀裂やひび割れを生じるタイプと、ブツブツや水疱ができるなどして、患部がジュクジュクするタイプの主に二つのタイプの手湿疹に進行します。

皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)

ブツブツなどの目立った症状がないのに皮膚がかゆくなる病気です。身体の一部がかゆくなるタイプと、全身がかゆくなるタイプの2種類があります。内臓の病気などを背景に発症することが多く、空気の乾燥や心理的ストレスの影響で症状が悪化します。

虫刺され(虫刺症)

吸血性の蚊やブヨ、ダニ、ノミのほか、身体に毒を持ったハチ、毛虫、ムカデ、クモなどに刺されて起きる皮膚炎のことです。虫の毒液や唾液成分といった異物が人間の皮膚の中に侵入することで、炎症が生じます。

痒疹(ようしん)

強いかゆみを伴うブツブツが身体の広い範囲に多くできる病気です。虫刺されやアトピー性皮膚炎、金属アレルギーなどのアレルギー疾患、腎臓・肝臓、血液の病気などがきっかけになって発症する例が報告されていますが、詳しい原因は不明です。1週間程度で治る急性痒疹(きゅうせいようしん)、症状が何カ月も続く慢性痒疹(まんせいようしん)があります。

皮膚真菌症

真菌(カビ)に感染して起こる皮膚の病気です。水虫(足白癬)やマラセチア毛包炎などでは、かゆみを伴うことがあります。

内臓の病気が原因の場合も

皮膚に目立った異常はないにもかかわらず、かゆみ症状があるケースは内蔵の病気が関係していることがあります。

肝臓や胆嚢の病気

肝硬変(かんこうへん)などの肝臓の病気があると、全身にかゆみ症状が現れることがあります。原発性胆汁性肝硬変(げんぱつせいたんじゅうせいかんこうへん)といって、胆汁を排出する管が壊れる病気になった時も皮膚のかゆみ症状が現れます。肝臓や胆嚢の病気が原因のかゆみは症状が強く、不眠の原因にもなります。

腎臓の病気

腎臓は身体の老廃物を尿として捨てる働きを担っています。病気によってその働きが低下すると、老廃物が皮膚や血中に溜まり、かゆみ症状が現れます。腎臓が悪くなると皮膚が乾燥するので、かゆみを感じやすくなります。

内臓の病気に関連したかゆみの対処法

肝臓や腎臓の病気がある場合は、皮膚に炎症が起こり、かゆみ症状が現れることもあります。まずは原因となる病気を治療することが大切になるため、早めに医療機関を受診して医師に相談しましょう。病気に心当たりがない人も、全身のかゆみが現れた場合は医療機関を受診しましょう。

監修

天下茶屋あみ皮フ科クリニック 院長

山田貴博 先生

2010年名古屋市立大学医学部卒。NTT西日本大阪病院(現・第二大阪警察病院)にて初期臨床研修後、大阪大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学講座助教として基礎医学研究に従事。阪南中央病院皮膚科勤務を経て、2017年天下茶屋あみ皮フ科クリニック開院。

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