『乾燥肌(ドライスキン)』『乾皮症』の原因・症状・治療法【症例画像】

乾燥肌とは

  • 乾燥肌とは、肌の皮脂や水分が不足して“肌が乾燥している状態”のことで、“ドライスキン”または“乾皮症(かんぴしょう)”とも呼ばれます。
  • 全身が常にカサカサしたり、洗顔の後、肌がつっぱったりといった不快な症状が出ます。
  • 肌のターンオーバーの乱れ、紫外線、加齢、誤ったスキンケアの影響、洗いすぎによる皮脂の欠乏、乾燥などの刺激によって、皮膚本来のバリア機能が低下し、肌が水分を失った状態です。
  • 乾燥肌を放置していると、皮膚にあるかゆみの知覚神経が過敏になり、少しの外的刺激でもかゆみや湿疹などの皮膚トラブルが起きやすくなります。

原因

  • 健康な皮膚は皮脂膜でコーティングされたみずみずしい角層(角質層)がバリアとなり、微生物やアレルゲンなどの異物の侵入を防ぐ、あるいは体内の水分を外に逃がさないようにする働きがあります。これを皮膚のバリア機能といいます。
  • 健康な皮膚は、新しい細胞へとターンオーバーを繰り返すことでバリア機能を維持しています。
  • ところが、さまざまな原因によって、このバリア機能が低下すると、皮膚の中に水分をとどめておくことができなくなり、“乾燥肌”になります。

  • 角層のバリア機能の低下は、以下のような原因が絡み合って起こります。
    1. 肌のターンオーバーの乱れ…不規則な生活やストレスによってターンオーバーのリズムが乱れると、正常なバリア機能が維持できなくなります。
    2. 紫外線の影響…紫外線を浴びることによって、肌表面の角層がダメージを受け、バリア機能が低下します。
    3. 誤ったスキンケア…タオルによる過剰な摩擦刺激や洗浄成分による洗いすぎによって、バリア機能が低下します。
    4. 炊事・洗濯…強力な洗浄剤やお湯の使用によって皮脂が流されてしまい、バリア機能が低下します。
    5. 加齢…歳を重ねると、皮脂やうるおい成分(天然保湿因子:NMF)が失われ、バリア機能が低下しやすくなります。
    6. エアコンによる乾燥…エアコンによって乾燥した空間にいることによって、肌表面の乾燥が進み、バリア機能が低下しやすくなります。

症状

  • 肌の水分や皮脂が不足して、潤いが失われます。
  • 全身のかさつきや、洗顔・水仕事の後のつっぱり感などの不快感を覚えます。
  • ひじやひざ、すねなどがカサカサして、粉をふいたり、皮膚表面に光沢を伴うしわができることもあります。
  • 肌のバリア機能が低下して肌が無防備になるため、アレルゲンや異物が皮膚の内部に侵入しやすくなり、炎症を伴う肌トラブルが起きやすくなります。
  • 乾燥肌の状態を放置していると、本来皮膚の奥に存在しているかゆみの知覚神経が刺激され、皮膚の表面近くまで伸びてきます。これによって知覚神経が過敏になり、衣服のこすれや洗剤などのわずかな刺激でもかゆみや違和感を覚えやすくなります。

  • 乾燥肌は全身どこでも起きる可能性がありますが、特に多いのは、ひじ、ひざ、すね、手の甲など、もともと皮脂の分泌が少ない部位です。頬や目、口周囲など、皮膚の薄い部位にも好発します。

ドライスキンの症例画像

ドライスキンによる掻き壊しの症例画像


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治療法

  • 乾燥肌を改善するには、基本的に“保湿”が大切です。
  • かさつきなどの症状が出ている部位に保湿剤を塗って、皮膚の乾燥を防ぎます。

乾燥肌に用いる主な保湿剤

ワセリン(油脂性軟膏)
皮膚の中の水分を保持し、皮膚を保護する作用がある。低刺激性。保湿力は高いが、ややべたつき感がある。

尿素(クリーム・乳液タイプのローション)
保湿効果が高く、使用感もよい。刺激性があるため炎症のある部位には使用できない。

セラミド
角質に含まれる天然の潤い成分(角質細胞間脂質)。皮膚から水分が逃げるのを防ぐとともに、皮膚を保護する作用がある。

 

  • 患部にかゆみや赤みがある場合は、乾燥だけでなく炎症が起きている状態です。ステロイド外用剤を使ってかゆみ・赤みの元である炎症をしっかりと抑えてから、保湿を行いましょう。
  • ただし、乾燥が強く、激しいかゆみを伴う場合はアトピー性皮膚炎、皮膚瘙痒症など、他の皮膚疾患である可能性があります。自己判断せず、医師に相談しましょう。
  • セルフケアを続けていても症状が改善しない、または悪化している場合は、医療機関を受診しましょう。
  • 乾燥に加えて湿疹などの症状が広範囲(手のひら2枚分を超える範囲)に出ている場合も、医療機関の受診が必要です。

予防・対策

  • 乾燥肌を予防するためには、まず角層を傷つける、または皮脂を除去しすぎる習慣を見直し、正しいスキンケアを行うことが大切です。
  • 入浴の時にタオルでゴシゴシとこすったり、洗浄力の強いボディソープを使ったりすると、角層や皮脂が奪われ、バリア機能が失われてしまいます。皮脂のコーティングを壊さないように、泡でやさしく洗ってよくすすぎましょう。水仕事をする時は、ゴム手袋を活用するなどして、肌のバリア機能を守りましょう。
  • 入浴や水仕事の後は、5分以内に保湿剤を塗り、皮膚の水分を逃がさないようにしましょう。
  • シャワーや入浴ができない時は、低刺激性の化粧水やぬるま湯で皮膚に水分補給を行い、その上から保湿剤を塗るとよいでしょう。
  • 充分な睡眠、バランスのよい食習慣を心がけ、肌のターンオーバーのリズムを整えましょう。
  • 空気が乾燥しがちな冬場は、部屋を加湿して肌の乾燥を防ぎましょう。
  • 春~夏場は紫外線に要注意です。紫外線対策をしっかりと行い、肌へのダメージを防ぎましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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