『痒疹(ようしん)』の症状、原因、治療法

痒疹とは

  • 痒疹(ようしん)とは、強いかゆみを伴うブツブツが身体の広い範囲にたくさんできる病気です。
  • 特に小さいブツブツを丘疹(きゅうしん)、ブツブツが大きいしこりになったものを結節(けっせつ)といいます。
  • ブツブツを掻きむしると、潰れてジュクジュクした傷になります。
  • すねやおなかまわりにだけできるタイプや全身にできるタイプなど、さまざまなパターンがあります。
  • 強いかゆみのために日中の活動や睡眠が妨げられることもあります。
  • 非感染性で、人にうつることはありません。

痒疹の原因

痒疹の原因は詳しく分かっていません。しかし、虫さされやアトピー性皮膚炎、金属アレルギーなどのアレルギー疾患、腎臓、肝臓、血液の病気などがきっかけになって痒疹を発症するケースが知られています。

痒疹のタイプ

  • 痒疹には一時的に症状が出てすぐに治まる「急性痒疹(きゅうせいようしん)」と、症状が何カ月も続いて茶色のいぼのようなものができる「慢性痒疹(まんせいようしん)」があります。
  • 急性痒疹は虫さされに伴うアレルギー反応と関係しているケースが多く、夏場に発症しやすいといわれています。また、浸出液が多い傾向があり、かさぶたができることもあります。
  • 慢性痒疹では表皮が分厚く、硬くなる特徴があります。慢性痒疹には「多形慢性痒疹(たけいまんせいようしん)」と「結節性痒疹(けっせつせいようしん)」の2つのタイプがあります。

 

  • 多形慢性痒疹
    蕁麻疹のような赤く浮腫んだ盛り上がりが体幹部を中心に出現し、消えることなく症状が長期間持続します。強いかゆみを伴い、掻き壊すと患部から浸出液が出てかさぶたができたり、一部が「苔癬化(たいせんか)」して象の皮膚のようにゴワゴワした分厚い皮膚になったります。主に高齢者が発症する病気です。
  • 結節性痒疹
    直径5㎜~2㎝程度で強いかゆみを伴う結節がたくさんできます。結節は四肢を中心にできるといわれていますが、体幹部にできることもあります。それぞれの結節はつながることはなく、散在しているのが特徴です。青年期以降の女性に多い病気です。症状が1年以上続くこともあります。

痒疹に似た症状の疾患

痒疹に似た症状が出る皮膚疾患は多く、その見分けは難しいといわれています。痒疹に似た症状の皮膚疾患として代表例は以下のとおりですが、痒疹は皮膚を掻き続けることによって生じますので、以下の皮膚疾患でも皮膚を掻き続けると痒疹が生ずるようになります。

皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)

見た目に明らかな炎症や皮疹がないのに、皮膚にかゆみが生じる病気です。広い範囲にかゆみを感じることもあれば、身体の一部にのみかゆみを感じるケースもあります。内科的な病気が関わっていることもあります。

貨幣状湿疹

腕や足、胴体などに赤いコイン状の湿疹ができる炎症性皮膚疾患です。患部はカサカサし、小さな水ぶくれやかさぶたができて強いかゆみがあるのが特徴です。冬場によく見られますが、はっきりした原因は分かっていません。

アトピー性皮膚炎

強いかゆみを伴うジュクジュクした湿疹が繰り返し現れます。湿疹は顔、耳、首、わきの下、ひじ、ひざなどに左右対称に出て慢性化します。アトピー性皮膚炎になりやすい体質の人がストレスやアレルゲンにさらされることで発症すると考えられています。

アミロイド苔癬

アミロイドという繊維状のタンパク質が皮膚の内部に蓄積することによって、足のすねや前腕部、背中などに数mm程度のブツブツがたくさんできます。患部の皮膚はやや暗褐色になり、かゆみを伴ってザラザラした状態になります。湿疹やアトピー性皮膚炎による慢性的な炎症をきっかけに、アミロイド苔癬に移行することがあります。

疥癬(かいせん)

「ヒゼンダニ」というダニが皮膚の角質層に寄生して起こる感染症です。疥癬を痒疹と間違えると疥癬患者が蔓延し、施設内での集団感染を起こしますので、疥癬の疑いがある場合は皮膚科を受診しましょう。

痒疹の治療法

    • 痒疹はほかの皮膚疾患との見分けも難しく、慢性痒疹の場合は治療が難しく日常生活の負担が大きい病気です。掻くことを我慢できないようなかゆみが続いている、しこりのようなブツブツがたくさんできているなど、「痒疹かな?」と疑ったら医療機関を受診して皮膚科専門医の診断と治療を受けましょう。
    • アトピー性皮膚炎を持つ人は、まず原因となるアトピー性皮膚炎の症状をコントロールすることが重要です。専門医に相談してください。
    • 医療機関では、ステロイド外用剤を使った治療が中心になります。
    • 痒疹は掻くことが原因ですので、掻かないようにすることが大切です。搔かないようにするためには、皮膚を広範囲にラップで覆って、皮疹部位を掻けないようにする必要があります。包帯などで覆っても、包帯の隙間から手を入れて掻いたり、手袋をして寝ても、朝には手袋を外して掻いていることが多いです。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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