『アトピー性皮膚炎』の症状・治療法【症例画像】

アトピー性皮膚炎:左右対称の皮膚炎・かぶれ

症例画像:左右対称の皮膚炎・かぶれ

アトピー性皮膚炎:乳児期では頬にジュクジュクした発疹

症例画像:乳児期では頬にジュクジュクした発疹

アトピー性皮膚炎:ひじやひざの内側にできる皮膚炎・かぶれ

症例画像:ひじやひざの内側にできる皮膚炎・かぶれ


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画像提供:帝京大学皮膚科 名誉教授 渡辺晋一氏

アトピー性皮膚炎とは

  • アトピー性皮膚炎とは、良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹ができる病気です。
  • アトピー性皮膚炎の皮膚は乾燥しているのが特徴で、赤いブツブツ(発疹)ができ、掻き壊すと患部がジュクジュクしてかさぶたができたり、皮膚の表面がゴワゴワと分厚くなったりします。
  • 首やひざやひじの内側にできやすく、身体の左右対称に症状が出ます。
  • 症状が落ち着いたと思っても、また同じ症状が現れ、長期化します。
  • 患者の多くはアトピー素因(アレルギーの既往歴あるいは家族歴、抗体を産生しやすい体質)を持っており、アレルギーやさまざまな刺激に対する反応などの因子が複合的に絡み合って発症すると考えられています。
  • アトピー性皮膚炎の多くは乳幼児期に発症しますが、大人になってから発症したり、悪化したりするケースもあります。

アトピー性皮膚炎の原因

  • アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が弱い体質の人が、汗やアレルゲンなどによる刺激を受けることによって皮膚が過剰反応を起こし、かゆみや湿疹などの炎症が起きる病気です。
  • 原因は免疫異常による皮膚のバリア機能の低下といわれています。例えば、アトピー性皮膚炎では皮膚が乾燥してバリア機能が低下しています。この状態が続くと、外部の刺激を直接的に受けやすくなるため、知覚神経が過敏になり、少しの刺激でもかゆみや赤みなどの炎症反応が起きやすくなります。
  • 皮膚が乾燥することによる不快感や、強いかゆみのために、患部を掻き壊すと、さらに刺激となってアトピー性皮膚炎の症状が悪化します。
  • アトピー性皮膚炎の患者の多くは、アトピー素因と呼ばれる体質を持っており、症状の発症に関連していると考えられています。アトピー素因とは、アレルギー体質の一種で、①「家族あるいは本人に、気管支喘息,アレルギー性鼻炎,結膜炎,アトピー性皮膚炎などの病気がある」、または②「異物に対する抗体を作りやすい体質」のことです。
  • ただし、アトピー性皮膚炎の発症や悪化のきっかけになる因子は、一つではなく、複数の因子が重なり合うことで起きると考えられており、はっきりとした原因が特定できないこともあります。

表1 アトピー性皮膚炎発症・悪化のきっかけになると考えられている因子

アレルギー性の因子(アレルゲン) 非アレルギー性の因子(非アレルゲン)
  • 食べ物
  • ハウスダスト
  • 細菌・カビ
  • ペット
  • 化粧品や薬品によるかぶれ
  • ストレス
  • 繊維による刺激
  • 汗や汚れ
  • 日光
  • 乾燥
  • かぜ
  • 睡眠不足
  • 掻破(ひっかくこと)による刺激

出典:厚生労働省「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2001」より改変

アトピー性皮膚炎の症状

  • アトピー性皮膚炎の主な症状は以下の3つです。
  1. かゆみ症状
  2. 耳の後ろやひじ・ひざの内側、手足の関節部分などに左右対称の湿疹ができる。皮膚の赤みやブツブツができ、掻き壊すとジュクジュクして、やがてかさぶたになる。症状を繰り返すうち、患部の皮膚がゴワゴワと分厚く、固くなる(苔癬化:たいせんか)
  3. 良くなったり悪くなったりを繰り返し、なかなか治らない(2歳未満では2カ月以上、2歳以上では6カ月以上症状が続く)
    アトピー性皮膚炎の診断基準が示すこれらの3つの項目を満たす場合は、アトピー性皮膚炎として診断されます。
  • アトピー性皮膚炎のほとんどは、1~5歳で発症します。医療機関で適切な治療を続ければ、たいていは症状が改善しますが、中には大人になっても症状が続いたり、悪化したりするケースや、成人になってから発症するケースもあります。
  • 症状の出やすい部位は、年齢によって異なります(図1)。

図1

<イメージ>

乳児期

生後2~3カ月あたりから、頬や口の周りが乾燥してカサカサし、かゆみのある赤いブツブツができます。その後、頭皮や耳の周囲、さらに背中、手足などに症状が出て、次第にジュクジュクしてきます。

幼小児期・学童期

乳児期の症状が続いている場合と、幼児期以降に初めて症状が出る場合とで、症状の出方に違いがあります。前者では、患部が赤くなって広がり、掻き壊しによってジュクジュクやかさぶたができます。一方、後者では、皮膚が乾燥してカサカサし、首、ひじやひざの内側、手首、足首にかゆみを伴う湿疹ができます。

思春期・成人期

慢性化した炎症によって皮膚がゴワゴワしたり、小豆大のかゆくて硬い発疹ができたりします。患部への色素沈着や顔面の赤みなど、皮膚の色調の変化も見られます。

アトピー性皮膚炎の治療・予防法

  • アトピー性皮膚炎と診断されたら、医療機関で治療を受ける必要があります。①「原因・悪化因子の除去」、②「スキンケア」、③「薬物療法」の3つがありますが、③「薬物療法」が治療の基本です。

①原因・悪化因子の除去

  • アトピー性皮膚炎の原因はすべて解明されているわけではありませんが、発症あるいは悪化に関わる因子として知られているものもあります(表1)。例えば、特定のアレルゲンに対するアレルギー反応が関係している可能性がある場合は、アレルゲンをできるだけ避けて生活するようにします。湿度や温度など、生活環境が関係している可能性がある場合は、住環境や衣服を調節して、アトピー性皮膚炎の症状を誘発しないように工夫します。

②スキンケア

  • アトピー性皮膚炎の患者の皮膚は、とても乾燥しています。皮膚の一番外側にある角層がもろくなり、バリア機能が低下したままの状態が続くと、少しの外部刺激でも過剰な炎症反応が起きてしまい、症状が悪化してしまいます。保湿剤を使ったスキンケアを行い、正常なバリア機能を取り戻すことも重要です。
  • 保湿剤は、アトピー性皮膚炎によって乾燥した皮膚に潤いを与え、皮膚のバリア機能を回復させることで、アレルゲンなどの外敵の侵入を防ぐとともに、皮膚の不快な症状を改善します。保湿剤には、基剤によって様々な種類がありますが、皮膚に水分を与えることを主な目的としたものと、皮膚を保護し、水分を逃がさないようにすることを主な目的としたものに大別されます。(表2)

表2:アトピー性皮膚炎に使用する保湿剤の種類

皮膚に水分を与える作用がある保湿剤 尿素製剤、ヘパリン類似物質含有製剤など
皮膚を保護し、皮膚の水分を逃がさないようにする作用がある保湿剤 白色ワセリン、亜鉛華軟膏など

(出典:日本皮膚科学会ガイドライン「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」より一部改変)

  • 保湿剤によって潤いを補うだけでなく、皮膚の潤いを保つ生活習慣を身につけることも大切です。入浴時の洗いすぎやこすりすぎは、角層を傷つけ、皮膚のバリア機能にダメージを与えます。ゴシゴシとこすらずによく泡立てた石鹸でつつむようにやさしく洗い、しっかりとすすぎましょう。
  • 入浴・シャワーの後は、水分を取って、皮膚が乾かないうちに保湿剤を塗るようにします。ただし、洗剤や石鹸類は、できるだけ低刺激性のものを使用しましょう。
  • 無意識に掻いていしまっても、皮膚を傷つけないように、こまめに爪のお手入れをしましょう。

③薬物療法

  • アトピー性皮膚炎に対する薬物療法は、ステロイド外用剤などの抗炎症外用剤による治療が基本です。
  • ステロイド外用剤は、薬効作用の強さによって、ストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、マイルド、ウィークの5つのランクに分かれています。アトピー性皮膚炎の重症度や発症部位、患者の年齢などを医師が考慮し、炎症が充分抑えられる強さのステロイド外用剤を選んで使用します。
  • 症状が改善し、状態が落ち着いてきたら、ステロイド外用剤のランクを下げる、またはステロイド外用剤の使用を中止して保湿剤によるスキンケアを続けます。
  • 症状が改善しない場合は、医師の判断で抗炎症外用剤の種類を変更したり、補助的に内服薬による治療を行ったりすることもあります。
  • 昨今では、これまでのステロイド外用剤とは作用の異なる新しいタイプの治療薬も登場しています。ステロイド外用剤による治療で効果が得られない場合や、アトピー性皮膚炎の症状の程度や部位によっては、医師の判断により新しい治療薬を使用することがあります。自分に合った治療法については医師に相談してください。
  • アトピー性皮膚炎は、体質が関わっている病気であり、治療によってその体質自体を完全に治すことはできませんが、適切な治療によって症状を抑えることができます。特に乳児期に発症するアトピー性皮膚炎は、適切な時期に適切な治療を行うことでそのほとんどが軽快します。自己判断で治療を中断したりすると、再発を繰り返して治りにくくなることもあります。アトピー性皮膚炎と診断されたら、医師の指導のもと、専門の治療を受けましょう。

監修

天下茶屋あみ皮フ科クリニック 院長

山田貴博 先生

2010年名古屋市立大学医学部卒。NTT西日本大阪病院(現・第二大阪警察病院)にて初期臨床研修後、大阪大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学講座助教として基礎医学研究に従事。阪南中央病院皮膚科勤務を経て、2017年天下茶屋あみ皮フ科クリニック開院。

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