『蕁麻疹(じんましん)』の原因・症状・治療法【症例画像】

蕁麻疹(じんましん)とは

蕁麻疹(じんましん)とは、皮膚に境界のはっきりした円形、もしくは地図状の膨疹(ぼうしん:皮膚の盛り上がり)が突然現れ、かゆみを伴う皮膚の病気です。

蕁麻疹のほとんどは原因不明ですが、通常は数時間~24時間で痕を残さず消失するのが特徴です。症状がひどい場合や、長引く場合は抗ヒスタミン薬の内服などによって症状を抑える治療を行うこともあります。

蕁麻疹に見られる皮膚の変化は、一見虫刺されの症状に似ています。ただし、虫刺されの場合は何日も同じ場所に赤みやかゆみ、はれが続き、痕が残る場合もあるのに対し、蕁麻疹の場合は24時間以内に痕もなく消えてしまうという違いがあります。

太ももから膝、すねにかけて地図のように広がった蕁麻疹

蕁麻疹の症例画像

赤みを伴う境界のはっきりした皮膚の盛りあがり

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蕁麻疹の症状

蕁麻疹の代表的な症状としては、身体の一部にかゆみを伴う皮膚の盛り上がりや赤みが突然現れます。盛り上がりの大きさや形は、2~3mmの円形や楕円形のもの、直径10cm以上の地図状のものまでいろいろです。患部を搔くことで赤いみみずばれができて、さらにかゆみが増します。蕁麻疹の中にはかゆみだけでなく、チクチクするような痛み、焼けるような痛みを伴う場合もあります。

蕁麻疹の症状のほとんどは皮膚に現れますが、稀に喉の粘膜がはれることもあり、かすれ声になったり、悪化すると呼吸困難などの症状が出たりするケースもあります。

蕁麻疹の症状は夕方から夜間に発症する傾向があり、翌日には痕を残さず消えていることがほとんどです。一旦症状が消えたと思っていても別の場所に新しい膨疹が出たり、範囲が広がったりして、数カ月間症状が続くことがあります。湿疹のように、皮膚がカサカサしたり、痕が残ったりすることはありません。

蕁麻疹の原因

蕁麻疹は、かゆみを引き起こす物質であるヒスタミンが何らかのきっかけによって体内に放出されることで毛細血管の変化を引き起こし、発症すると考えられています。

発症の原因として特定の食物、薬品、植物などに対するアレルギーやほかの疾患が関与しているものもありますが、ほとんどの場合、直接的な原因は特定できません。

蕁麻疹の発症や悪化に関わる背景因子としては、ウイルス・細菌感染、疲労・ストレス、食物、運動発汗、日内リズムなどが知られていますが、複数の原因が重なって発症することもあり、特定は困難です。

一覧表:蕁麻疹の発症や悪化に関わる因子

食物 魚介類(サバ、マグロ、サンマ、エビ、カニなど)
肉類(豚肉、牛肉、鶏肉など)
卵、乳製品(鶏卵、牛乳、チーズなど)
穀類・野菜(大豆、小麦、ソバなど)
果物、香辛料など
食品添加物 人工色素(黄色、赤色など)、防腐剤(パラベンなど)、サリチル酸
薬剤 抗生物質(ペニシリン、セフェム系など)、解熱鎮痛薬、咳止めなど
植物・昆虫 イラクサ、ゴム、蜂など(触れたり刺されたりして起きる)
感染症 寄生虫、真菌(カビ類)、細菌、ウイルス
物理的刺激 皮膚のこすれ・圧迫、寒冷、日光、温熱、振動など
内臓・全身性疾患 虫歯・血液疾患、膠原病、血清病など
その他 運動・発汗・疲労・身体的ストレス・精神的ストレス

蕁麻疹の種類とその特徴

蕁麻疹の症状の出方や重症度はさまざまですが、発症メカニズムの違いによって大まかに3つに分けて考えることができます。

・「突発性の蕁麻疹(直接的な原因なく症状が現れる)」
・「刺激誘発型の蕁麻疹(特定の刺激やアレルギーによって症状が引き起こされる)」
・それ以外の特殊な蕁麻疹

これらのうち、比較的よく見られるのは「突発性の蕁麻疹」と「刺激誘発型の蕁麻疹」です。

突発性の蕁麻疹

これといった原因が特定できない蕁麻疹のことを言います。日常的に遭遇する蕁麻疹のほとんどがこのタイプに属します。症状が続く期間の長さによって「急性蕁麻疹」と「慢性蕁麻疹」に分けられます。

・急性蕁麻疹

最初の症状が出始めてから6週間以内のもの。子どもでは、感冒や上気道感染(いわゆる風邪)に伴って発症する傾向があります。

・慢性蕁麻疹

症状が6週間以上続いているもの。夕方から夜間にかけて症状が出やすく、悪化しやすい傾向があります。発症メカニズムや要因は不明で、症状が数カ月~数年続くケースもあります。

刺激誘発型の蕁麻疹

特定の刺激が加わることによって起こる蕁麻疹です。刺激が加わる頻度によって、1日に何度も症状が出ることもあれば、しばらく症状が出ないこともあります。このタイプには、主に「アレルギー性蕁麻疹」、「物理性蕁麻疹」、「コリン性蕁麻疹」などがあります。

・アレルギー性蕁麻疹

食物、薬品、植物などに含まれる特定物質(アレルゲン)に反応して起こります。通常アレルギーの原因物質を食べたり、それらに触れたりした数分後~1、2時間後に症状が出ます。

・物理性蕁麻疹(機械性、寒冷、温熱、日光など)

皮膚に対する機械的な摩擦や寒冷・温熱刺激、日光照射などによって引き起こされる蕁麻疹。機械的刺激によって起こるものを「機械性蕁麻疹」、寒冷刺激によって起こるものを「寒冷蕁麻疹」、温熱刺激によって起こるものを「温熱蕁麻疹」、日光への暴露によって起こるものを「日光蕁麻疹」と呼びます。

・コリン性蕁麻疹

入浴や運動、精神的な緊張によって体温が上がり、発汗に伴って起こる蕁麻疹。かゆみもしくはピリピリとした痛みと、赤みを伴った3~5mm大の小さい膨疹または紅斑(こうはん)ができます。この症状は、通常数分から 2 時間以内に自然に消えますが、再び発汗する状況になると同じ症状が繰り返し現れる場合もあります。

その他、蕁麻疹の中には、非常に重い全身症状を伴うものもあります。例えば、食物依存性運動誘発アナフィラキシーはアレルゲン(アレルギーの原因)となる食物を食べた後、運動による刺激が加わることで発症するもので、蕁麻疹が出た後、呼吸困難やショック症状などの重い症状が現れます。10~20代の若い世代に多く、発生頻度はおよそ6000人に1人と言われています。

蕁麻疹の対処法と予防法

蕁麻疹の症状が出た時は患部を掻かないようにしましょう。掻けば掻くほど、かゆみが広がり、湿疹化してしまう恐れがあるからです。どうしてもかゆい場合は濡れタオルなどで患部を冷やして、一時的にかゆみを抑えましょう。ただし、寒冷刺激による蕁麻疹(寒冷蕁麻疹)の場合は冷やすと症状が悪化するので、冷やさないようにしてください。

患部を掻かないようにして様子を見ていても、症状が治まらない時や何度も同じような症状を繰り返す時、強いかゆみのために掻くことを我慢できない時などは、皮膚科などの医療機関を受診し、医師の診断と治療を受けましょう。

ごく稀に、蕁麻疹に伴って呼吸困難やめまい、吐き気などの全身性の強い症状、いわゆるアナフィラキシーショックが起きることがあります。このような症状が現れた場合は、すみやかに救急受診しましょう。

蕁麻疹の原因として特定の食物や物質、刺激が特定できた場合は、その原因となるものを避ければ、基本的に症状が出ることはありません。それらの食物や物質・刺激を避けて生活をしましょう。また、蕁麻疹はたいてい自然に治っていきますが、中には内科的な病気が関係しているケースもあります。原因がよく分からない蕁麻疹が続く場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。

蕁麻疹の原因となる物質や食物、刺激などが特定できている場合は、それらを避けて生活することで、蕁麻疹の発症を回避することが一番の予防になります。蕁麻疹の原因を特定できるケースは少ないため、原因が分からないタイプの蕁麻疹の場合は、日常的な生活環境を見直し、身体本来の免疫力を高めておくことが予防につながります。

規則正しい食事・睡眠習慣を身につけるとともに、日常的に適度な運動を取り入れ、心身の健康を保ちましょう。過度の疲労や精神的ストレス、食生活や衣服による締め付け、温度・湿度の変化などが、症状の悪化に関与していることもあります。思い当たるものがないか振り返ってみましょう。

蕁麻疹の治療法

蕁麻疹の多くは、数時間~24時間で痕を残さず自然に消失します。ただし、以下のような場合は、医療機関での診断・治療が必要です。

・かゆみや痛みの症状が強い
・膨疹が広範囲に及んでいる
・原因が分からないが繰り返し症状が現れる、あるいは、症状が長引いている
・蕁麻疹だけでなく、まぶたや唇、喉のはれ、呼吸困難を伴っている

蕁麻疹の診断では、まず食べたもの、常用薬、受けた刺激、既往症などの問診を行い、必要に応じて血液検査・アレルギー検査などをして、直接的な原因や蕁麻疹のタイプを探ります。ただし、検査をしても原因が特定できるケースは稀です。検査によって特定の原因物質や刺激(食物、薬品、物理的刺激など)が分かった場合はそれらを避けて生活するようにします。

蕁麻疹の治療は、医療機関での抗ヒスタミン薬内服治療が基本ですが、最近では蕁麻疹に適応のある市販のOTC医薬品が販売されています。それらを活用してセルフケアをすることもできます。かゆみのために掻いてしまい、患部が湿疹化した場合はステロイド外用剤を併用して患部を治療します。

蕁麻疹の症状は軽いものから重いものまでさまざまです。蕁麻疹のタイプによっては抗ヒスタミン薬以外の治療が有効な場合もあるので、医師に相談しましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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