『寒冷蕁麻疹』の原因・症状・治療法

寒冷蕁麻疹とは

寒冷蕁麻疹の症状

寒冷蕁麻疹の原因

  • 局所性寒冷蕁麻疹は、冷たい水や凍ったものに触れたり、冷風を直接肌に当てたりすることが刺激になって発症します。実際に、寒冷負荷試験(氷などを肌に当てて症状の出方を確かめる試験)を行うと、寒冷刺激を与えたところにだけ、蕁麻疹の症状が出ることが確認できます。
  • 全身性寒冷蕁麻疹の場合は、「クーラーのきいた部屋に入る」、「冷たい外気に触れる」、「運動後や湯上りの冷え」、「冷たい飲み物や食べ物をとる」、「フローリングの上を素足で歩く」などによる全身の冷えがきっかけになって発症します。特に、暖かいところから寒いところへ移動するなど、急な温度変化を伴うようなシチュエーションで、症状が出やすい傾向があります。
  • いずれの寒冷蕁麻疹も、寒冷刺激によって、かゆみの原因物質であるヒスタミンが皮膚の内部に大量に分泌され、その働きによって蕁麻疹が生じます。ただし、寒冷刺激によってヒスタミンが大量に分泌される詳しいメカニズムは分かっていません。今のところ、何らかのアレルギー反応あるいは免疫反応の異常が関係しているのではないかと考えられています。
  • 全身性寒冷蕁麻疹の中には、稀に遺伝性のものあります(家族性寒冷誘発自己炎症性症候群)。

寒冷蕁麻疹の治療・予防法

  • 軽度の寒冷蕁麻疹の多くは、特に治療をしなくても時間の経過とともに自然に治ることが多いのですが、なかには数年続くこともあります。なかなか症状が治まらない時や、再発を繰り返している場合は、皮膚科を受診しましょう。

病院での治療

  • 皮膚科では、蕁麻疹が出た時の状況を問診しながら、寒冷刺激がきっかけで起きる蕁麻疹かどうかを診断します。必要に応じて、寒冷負荷試験や血液検査を行うこともあります。
  • 寒冷蕁麻疹の第一の治療は、できるだけ寒冷刺激を避ける工夫をし、再発を防ぐことです。原因になる刺激をできるだけ見つけ出し、それらを避けて生活するようにします。
  • かゆみ、赤みなど、蕁麻疹の症状に対しては、主に抗ヒスタミン薬の内服によって治療します。
  • 「外気の影響」や「職場や外出先のクーラー」など、避けようのない寒冷刺激も少なくありません。寒冷刺激を避けられず、再発を繰り返してしまう場合は、しばらく抗ヒスタミン薬の内服を続けて症状をコントロールすることもあります。

自宅でできるセルフケアと予防法

  • 他のタイプの蕁麻疹とは違い、寒冷蕁麻疹の場合は温めることで、症状が改善することがあります。症状の出やすい部分に重ね着をしたり、暖かい部屋で全身を温めたりするとよいでしょう(冷やすと症状の悪化を招くので、冷やさないでください)。
  • 症状が出ている時、かゆいからといって掻きむしってしまうと、蕁麻疹が広がったり、患部が湿疹化したりすることがあります。湿疹化した場合は、痕が残ってしまうことがあるので、市販のステロイド外用剤を塗って早くきれいに治しましょう。
  • 日常生活のちょっとした工夫によって、冷えを避けることで、寒冷蕁麻疹の症状を出にくくすることができます。
    1. 寒暖の差をなるべく作らない…気温の低いところへ行く時は、防寒対策をしっかりしましょう。
    2. 冬場だけでなく夏場も注意…夏場のプールやクーラー、湯冷めがきっかけで発症することもあるので、一年を通して注意しましょう。
    3. 冷たい飲み物や食べ物に注意…身体を冷やすものは避けましょう。口にする場合は、様子を見ながら少量ずつにしましょう。
    4. 足元の冷えを防ぐ…フローリングの上を素足で歩かないようにし、家の中でも靴下やスリッパを履いて過ごしましょう。
  • 寒冷蕁麻疹は、内科的な病気が関わって起こることもあるので、症状が長く続く時は医師に相談しましょう。また、稀に重篤な症状を伴う症例もあります。息苦しさやむくみなど、身体に異常を感じた場合は、すぐに受診してください。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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