突然、何の前ぶれもなく現れる蕁麻疹。
見た目が悪い上にかゆみもつらく、その症状が繰り返されると気になるものです。蕁麻疹の症状や原因、対処法はさまざまです。
今回は、気になる蕁麻疹の原因と適切な対処法、そして蕁麻疹を繰り返さないための日常生活の注意点について解説します。
蕁麻疹(じんましん)の症状とは?
蕁麻疹はその症状として、蚊に刺されたときのような、赤いふくらみが現れる皮膚トラブルです。突然、体の一部に現れたかと思うと、数時間で何事もなかったかのように消えてしまうというのも、特徴の1つです。
その形状は、2~3mmの円形や楕円形のものから、直径10cm以上にもなる地図状のものまで、じつにさまざまです。
多くはかゆみを伴いますが、場合によってチクチクとした痛みや、灼熱感(熱く焼けつくような痛み)を感じることもあります。
また、症状が強い場合は、いったん消えたかと思うとまた別の場所に現れたり、次々と新しい蕁麻疹が出て、体中に広がることもあります。
「湿疹とはどう違うの?」と思われる方がおられるかもしれません。
かゆみを伴う点はどちらも一緒ですが、蕁麻疹の場合、湿疹と違って患部がカサつくことがなく、皮膚の一部がふくらみ、しかも短時間で消えるという様子から湿疹と区別することができます。
何が原因で蕁麻疹(じんましん)が出来るの?
蕁麻疹は、かゆみを引き起こすヒスタミンという物質が、何らかの原因によって体内に放出され、神経や血管を刺激することで起こると考えられています。
蕁麻疹と一口に言っても、いくつかの種類があり、まずは「特定の刺激が原因のタイプ」と、「原因不明のタイプ」に大別されます。
前者のタイプは、その原因によってさらに「アレルギー反応によるもの」「物理的刺激によるもの」「発汗刺激によるもの」の3つに分類されます。
そして、後者のタイプは、やっかいなことに原因が分からないだけでなく、毎日のように症状が繰り返されるのが特徴で、1ヵ月以内に治る場合を「急性蕁麻疹」、1ヵ月以上続くものを「慢性蕁麻疹」として区別しています。
蕁麻疹(じんましん)のおもな種類
分類 | 種類 | 原因/特徴 |
特定の刺激が原因のタイプ | アレルギー性蕁麻疹 | 食べ物、薬剤、植物など |
物理性蕁麻疹 | まさつ、温熱、寒冷、日光、圧迫など | |
コリン性蕁麻疹※ | 発汗 | |
原因不明のタイプ | 急性蕁麻疹 | 毎日のように症状が現れ、1ヵ月以内に治る |
慢性蕁麻疹 | 毎日のように症状が現れ、1ヵ月以上続く |
※汗腺を刺激するアセチルコリンという物質名に由来
原因が分からないと「体のどこかが悪いの?」と不安になる方も多いでしょう。
原因不明のタイプのうち、急性蕁麻疹については食べ物や風邪、気管支炎が原因のケースもあると考えられていますが、慢性蕁麻疹の場合、まだはっきりしたことは分かっていません。
ただ、慢性の場合でも、発症から1~2年以内が症状のピークで、治療によってしだいに軽くなり、いずれ治るケースが多いとされています。
蕁麻疹(じんましん)が現れたときの対処法
蕁麻疹が現れると多くの場合、強いかゆみを伴います。そういうときは入浴を避け、患部を冷やすといいでしょう(ただし、寒冷刺激による蕁麻疹の場合は避けてください)。
衣類などによるまさつや圧迫の刺激を与えないよう注意し、ゆったりと安静に過ごしてください。
蕁麻疹の治療の中心は抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服です。併せて腫れやかゆみが強くてガマンできない場合は、充分な強さのステロイド外用剤を選ぶことをおすすめします。
かゆみを早期に抑えることで心理的なストレスも軽くなり、かき壊しを防ぐことができます。
かき壊してしまった場合には、抗生物質が配合されたステロイド外用剤を用いて、炎症と細菌の増殖を抑えましょう。ただし、蕁麻疹が広範囲の場合は医師の診療を受けてください。
また、小さい子どもの場合、アレルギーを起こす可能性がある食べ物については、保護者の慎重な配慮が必要です。蕁麻疹が現れると、子どもはかゆみがガマンできないため、かき壊しを防ぐためにも早めの対策を心がけて下さい。
もし、蕁麻疹だけでなく、まぶたや唇の腫れ、呼吸困難を伴う場合は危険な状態の恐れがありますので、すぐに医療機関を受診してください。
蕁麻疹(じんましん)を繰り返さないために
蕁麻疹も、種類によっては予防が可能です。アレルギー反応による蕁麻疹の場合、原因となる食物や薬剤を避ければ、基本的に症状が出ることはありません。
アレルギーを引き起こす物質はさまざまですが、なかでもソバやピーナッツ、ラテックス(ゴム)が原因の場合は、重篤な症状が出る危険性があります。「体質改善をしよう」と安易に考えるのではなく、厳重にその物質を避けるようにしてください。
原因不明のタイプの場合、何が原因かは特定出来なくても、疲労やストレス、食生活が蕁麻疹を悪化させるとされています。
がんこな蕁麻疹で悩んでいた方が、職場や生活環境の変化をきっかけに、突然治ることもめずらしくありません。充分な睡眠やバランスのとれた食事、過労や人間関係によるストレスの解消を心がけるようにしましょう。
そして、適切な治療のためにも、症状が続く場合は「たかが蕁麻疹」と放置せず、医療機関で検査を受けることをおすすめします。
監修
薬剤師
門田 麻里さん
北里大学・薬学部卒業後、製薬会社の開発部や医薬情報担当者として10年以上従事。
製薬会社勤務時代は、幅広い薬剤(ステロイドや抗生物質、高血圧、高脂血症、頭痛薬、メンタル疾患系、など)を扱い、説明会などを実施。医療関係者からの質問に数多く回答。 また、薬剤師という立場上、一般の人からも薬に関する相談を多く受ける。
その中で、薬に対して、過度に怖がる人も多く、正しい知識を伝達することの必要性を感じる。
自身も一児の母であり、自身だけでなく家族の皮膚のトラブルにも対応してきたことから、経験に基づいたアドバイスも可能。