通勤や通学の電車の中、大事な試験の前。そのような精神的なストレスを感じる状況で、突然おなかが痛くなり、下痢や便秘に悩まされることはありませんか。
その症状、もしかしたら過敏性腸症候群(IBS)かもしれません。
IBSは、腸にあきらかな異常が認められないのに、精神的ストレスを受けるとおなかの痛みや不快感を下痢や便秘の症状が起こり、良くなったり悪くなったりを繰り返す疾患のことをいいます。
IBSによるおなかの不快な症状の原因はストレスといわれています。
なぜ、IBSの患者さんには、おなかの不快な症状が起きてしまうのでしょうか。それは、私たちの脳と腸が密接に情報を交換し合っているためです。
ストレスを受けると、脳からストレス関連ホルモンが分泌されて消化管に働きかけ、腸の働きを乱し、下痢や便秘といった症状を引き起こします。
下痢や便秘といった体調の変化は、「電車の中でおなかが痛くなったらどうしよう」「大切な会議がある、途中でトイレに行きたくなったら困る」といった新たなストレスになります。それに加えて、IBSの患者さんでは、痛みに対して敏感になっているため、ちょっとした刺激にも腸管が反応して、便通の異常やおなかの強い痛みといった症状を起こします。
こうして体が感じたストレスは、脳へと届けられます。すると、再びストレス関連ホルモンの分泌が促されて、おなかの痛みなどを引き起こし、IBSの症状が悪化していきます。この悪循環を「IBSスパイラル」と呼んでいます。
IBSによる下痢や便秘は、大腸が過剰に運動することが主な原因で引き起こされています。
大腸の最大のはたらきは、内容物の水分を吸収し、固形状の糞便を形成することです。糞便の固形物には、分解されにくい食物繊維などの食物残渣、細菌、はがれ落ちた粘膜細胞などが含まれています。
大腸の運動には、主にぜん動運動(伝播性収縮)と分節運動(局所性収縮)があります。大腸に送り込まれた内容物は、ぜん動運動と分節運動により、混和されながら肛門へ向かって徐々に移送されます。
IBSには、主に下痢の症状が起こる「下痢型」、便秘の症状が起こる「便秘型」、下痢と便秘が同程度起こる混合型があります。その他どれにも分類されない「分類不能型」もあります。