『蕁麻疹』と『ストレス』の関係は?原因と対処法を解説


多くの人が一度は経験したことのある「蕁麻疹(じんましん)」。受験、就職など人生の転機となるタイミングや、ストレスの多い生活が続いている時などに、突然蕁麻疹を発症したことがある人もいるかもしれません。蕁麻疹は、身体に疲労が溜まっていたり、心理的に大きなプレッシャーを感じたりしている時に発症することがありますが、大きなストレスが原因となって、蕁麻疹を発症することはあるのでしょうか。

今回は、蕁麻疹とストレスの関係や蕁麻疹が出る原因、蕁麻疹が出た際の対処法について解説します。

蕁麻疹(じんましん)とストレスの関係

蕁麻疹の症例画像

蕁麻疹の症例画像(拡大)


症例画像を鮮明にする

※ボタンを押下することで症例画像が切り替わります。
画像提供:帝京大学皮膚科 名誉教授 渡辺晋一氏

過剰なストレスは、私たちの健康に悪影響を及ぼしたり、さまざまな病気の症状を悪化させたりすることはよく知られています。蕁麻疹などの皮膚病もまた、ストレスの影響を受けて症状が悪化するケースがあります。

例えば、蕁麻疹の中でも、特に思い当たる原因がないにも関わらず、毎日繰り返し蕁麻疹が現れる「慢性蕁麻疹(まんせいじんましん)」は、心身へのストレスが、蕁麻疹の症状を長引かせたり、悪化させたりすることがあるといわれています。

では、蕁麻疹を発症する原因もストレスにあるのかというと、決してそうではありません。蕁麻疹とストレスの関係について、医学的には、ストレス自体が蕁麻疹の原因になることはないですが、症状を悪化させる、あるいは蕁麻疹を発症する背景因子になると考えられています。蕁麻疹は、さまざまな要因が複合的に絡み合って発症するものが多く、ストレスが直接的な原因になるわけではありません。

その他、特定の食べ物や薬品などによる蕁麻疹など、原因が明らかな蕁麻疹は、ストレスの影響はほぼないとされています。

蕁麻疹の症状と原因

蕁麻疹の症状

蕁麻疹になると、身体の一部に皮膚の盛り上がり(膨疹:ぼうしん)が現れます。膨疹の大きさや形は、2〜3mmの円形や楕円形のものから直径10cm以上で手のひら1枚分ぐらいの地図状のものになるものもあり、たいていチクチクした痛みやかゆみ、ほてりを伴います。

蕁麻疹の膨疹は短いと数十分から数時間以内、長くても24時間以内に痕を残さず消えるのが特徴です。ただし、一つ一つの膨疹は消失しても、次々と新しい膨疹が出現したり、症状の範囲が移動または広がったりして、症状が続く場合もあります。

蕁麻疹の原因

蕁麻疹の症状は、かゆみを引き起こすヒスタミンという物質が体内に放出されることで起こりますが、その直接的な原因は特定できないことがほとんどです。ただし、蕁麻疹の中には、特定の食べ物、薬品、植物、動物などへのアレルギー反応として起きるものもあります。

蕁麻疹の発症や悪化の背景因子としては、ウイルス・細菌感染、疲労、食べ物、運動発汗、日内リズムなどが知られていますが、複数の要因が複雑に絡み合って発症するため、わからないことも多い病気です。

蕁麻疹の種類

蕁麻疹の原因や症状の出方はさまざまです。発症のメカニズムや蕁麻疹の種類が明らかな場合もあれば、異なるタイプの蕁麻疹を同時に発症していて蕁麻疹の種類を特定できないということもあります。

医学的にその発症メカニズムや症状の特徴が比較的はっきりとしているものを中心に、代表的な蕁麻疹の種類を解説します。

1.特発性の蕁麻疹

これといった原因がない蕁麻疹のことを「特発性蕁麻疹(とくはつせいじんましん)」と呼びます。蕁麻疹の大半はこの特発性蕁麻疹に属すると考えられています。

最初の症状が出始めてから6週間以内のものを「急性蕁麻疹(きゅうせいじんましん)」といい、子どもでは、感冒や上気道感染症(いわゆる風邪)に伴って発症する場合があります。

一方、症状が6週間以上続いているものは「慢性蕁麻疹(まんせいじんましん)」といい、夕方から夜間にかけて症状が出やすく、ストレスによって悪化する傾向があります。発症メカニズムや要因は不明で、症状が数か月~数年続くケースもあります。

2.刺激誘発型の蕁麻疹

特定の刺激が加わることによって起こる蕁麻疹のタイプを「刺激誘発型(しげきゆうはつがた)の蕁麻疹」と呼びます。刺激が加わる頻度によって、1日に何度も症状が出ることもあれば、しばらく症状が出ないこともあります。刺激誘発型の蕁麻疹にも、発症のきっかけとなる刺激が異なるいくつかの種類があります。

比較的よく見られるものとしては、食物、薬品、植物などに含まれる特定物質(アレルゲン)へのアレルギー反応として症状が出る「アレルギー性蕁麻疹」があります。

その他、皮膚を強くこすることや、寒冷・温熱刺激、日光照射など、皮膚への物理的な刺激がきっかけで発症する「物理性蕁麻疹(ぶつりせいじんましん)」もあります。特に、摩擦や圧迫などの機械的刺激によって起こるものを「機械性蕁麻疹(きかいせいじんましん)」、寒冷刺激によって起こるものを「寒冷蕁麻疹(かんれいじんましん)」、温熱刺激によって起こるものを「温熱蕁麻疹(おんねつじんましん)」、日光への暴露によって起こるものを「日光蕁麻疹(にっこうじんましん)」といいます。


刺激誘発型の蕁麻疹の中には、「コリン性蕁麻疹」という少し珍しいタイプの蕁麻疹もあります。コリン性蕁麻疹は、神経伝達物質であるアセチルコリンが関係する蕁麻疹で、入浴や運動、または精神的な緊張によって発汗すると発症します。若い人や小児に見られ、かゆみや赤み、ピリピリとした痛みを伴う3~5 mm大の小さい膨疹がたくさんできます。

蕁麻疹の対処法

特定の原因物質や刺激(食物、薬品、物理的刺激など)が蕁麻疹の原因と分かっている場合は、その原因を避けることで、基本的に発症や悪化を防ぐことができます。

原因が分からない場合であっても、蕁麻疹のほとんどは、数時間~24時間で痕を残さず自然に消失します。そのため、医療機関に行っても診察を受ける頃には症状がほとんど消えていることもあります。ただし、患部を掻いたりすると、それが新たな刺激となって症状が広がったり、湿疹になったりすることもあります。かゆみがある時は、濡れタオルを当ててかゆみをしずめ、掻かないようにしましょう。

万が一、掻いて湿疹になってしまった場合は、ステロイド外用剤を塗って治療します。ステロイド外用剤は、大人であればストロングランクの充分な強さのものを使用し、一週間以内を目途に、湿疹のある患部のみに塗りましょう。ただし、手のひら2~3枚分を超える広範囲に症状が出ている場合は、自分で治療することはできません。皮膚科を受診し、医師の診察を受けましょう。

蕁麻疹の中には、疲労や精神的ストレス、食生活、睡眠不足などの要因が背景になっていることも考えられます。同じような蕁麻疹を繰り返す場合は、充分な休息と栄養を摂り、ストレスのない生活を心がけましょう。

蕁麻疹で病院に行く目安

蕁麻疹は軽いものから重いものまでさまざまです。いずれも「抗ヒスタミン剤」の内服で良くなることが多いです。かゆみや痛みの症状が強い時、広範囲に症状が出ている時、まぶた・唇の腫れ・呼吸が苦しいなどの症状を伴う時は、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。

監修

天下茶屋あみ皮フ科クリニック 院長

山田貴博 先生

2010年名古屋市立大学医学部卒。NTT西日本大阪病院(現・第二大阪警察病院)にて初期臨床研修後、大阪大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学講座助教として基礎医学研究に従事。阪南中央病院皮膚科勤務を経て、2017年天下茶屋あみ皮フ科クリニック開院。

他の症状を探す

他の症状を探す場合はこちらから

症状一覧ページへ