『異汗性湿疹』の原因・症状・治療法

異汗性湿疹とは

  • 異汗性湿疹(いかんせいしっしん)とは、かゆみ や痛みを伴う1~2mm大ぐらいの小さなブツブツ・水ぶくれが、左右対称に手のひらや足の裏に繰り返し現れる皮膚疾患です。
  • 症状が軽い場合は汗疱と考えられることが多く、自然に治ることもありますが、悪化すると指の側面や手の甲、足の甲などにも広がることがあります。
  • 多くの場合は原因不明ですが、夏場や季節の変わり目などに再発しやすいといわれています。
  • 人から人にうつることはありません。

異汗性湿疹の原因

  • 異汗性湿疹の根本的な原因は分かっていません。
  • 何らかの原因やきっかけによって、手足の皮膚に「汗疱(かんぽう)」というかゆみのない小さな水ぶくれができ、これがやがて炎症を伴って湿疹化し、異汗性湿疹へと移行すると考えられています。
  • 夏場や季節の変わり目などに再発しやすいことから、以前は発汗との関連が疑われていましたが、近年の研究によって水ぶくれのできる場所がかならずしも汗腺と一致しないことが分かり、現在では発汗との関連性は低いと考えられています。


異汗性湿疹の症状

  • 異汗性湿疹では、強いかゆみや赤み・痛みを伴う1~2mm大ぐらいの小さな水ぶくれが手のひらや足の裏から指の側面にかけて集中してできます 。
  • 水ぶくれはそれぞれ1~2mm程度で少し盛り上がって見えます。それぞれ小さいものが進行すると症状として広がり、水ぶくれ同士がくっついて大きな水ぶくれになることがあります。さらに湿疹の範囲も広がり、指の側面や手の甲・足の甲にも水ぶくれが広がることがあります。
  • 水ぶくれを掻きむしると、破れてジュクジュクした傷になります。
  • たいてい左右の手のひらや足の裏に左右対称に症状が出るのが特徴です。
  • 水ぶくれやかゆみなどの症状は2~3週間ほど続き、最後はかさぶたのようになって剥がれ落ちて治ります。色素沈着などの痕は残りません。
  • 再発しやすく、何度も同じような症状を繰り返す特徴があります。

異汗性湿疹とよく似た疾患

  • 異汗性湿疹には、見た目がよく似た疾患がいくつかあります。

汗疱

中が透き通った1~2mmほどの小さな水ぶくれが、手のひらや足の裏に集中してたくさんできます。炎症はないため、赤みやかゆみ、痛みはありません。ほとんどは原因不明で 、たいてい1カ月程度で自然治癒しますが、再発を繰り返すことが多いです。

白癬(はくせん)

いわゆる「水虫」です。皮膚糸状菌の一種である「白癬菌」というカビ(真菌)が皮膚に寄生することで起こる感染症です。足の指の間や土踏まずなどにかゆみ のある水疱ができて、やがて皮膚はふやけたように白くなり、ポロポロと剥がれ落ちます。ジュクジュクすることもあります。ただし手のひらにできる手白癬は稀で、足白癬でもかゆみを訴える人は半数程度です。


掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

手のひらや足の裏に透明または膿の入った水ぶくれが繰り返しできる病気です。詳しい原因についてはまだ解明されていませんが、喫煙、金属アレルギー、扁桃炎などの病巣感染などが発症や悪化に関係していると考えられています。

接触皮膚炎

俗にいうかぶれです。通常かぶれはすぐに原因がわかると思いますが、植物や金属などでかぶれた場合、かぶれと気が付かないことがあります。なぜならば手のひらは皮膚が厚いので、かぶれの症状が目立たないことがあるからです。かぶれ症状がある場合は、皮膚科を受診し、何にかぶれたのかを調べ、原因を知っておくことが重要です。

異汗性湿疹の治療法

  • 異汗性湿疹には似たような皮膚疾患がいくつかあり、見分けるのが難しい病気です。異汗性湿疹が疑われるような症状が続いている時は皮膚科を受診し、医師の診断と治療を受けましょう。
  • 異汗性湿疹は原因不明のため、医療機関での治療は対症療法が基本になります。
  • かゆみや痛みが続いている場合は炎症を抑える作用のあるステロイド外用剤を塗って炎症に対する治療を行います。ジュクジュクした傷を放置していると、細菌などへの二次感染を起こすことがあるので医師のもとで治療を行いましょう。ほとんどの場合はステロイド外用剤による治療で治りますが、慢性化して治療が難航するものもあります。
  • ステロイド外用剤による治療を行っても症状が改善しない時はパッチテストなどを用いて金属アレルギーの検査を行うことがあります。検査の結果、食べ物に含まれる金属や歯科材料などの原因金属が特定できた場合にはそれらを除去し、経過を見ます。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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