汗疱とは
- 汗疱(かんぽう)とは、小さな水ぶくれが手のひらや足の裏に集中して現れる皮膚の病気です。
- 中が透き通った1~2mm大の小さな水ぶくれが、たくさんできます。
- 汗疱であれば、徐々に水ぶくれは吸収された後、古い皮が剥がれ落ちて自然治癒することが多いです。
- 小さな水ぶくれ以外に赤みがかった発疹や強いかゆみを伴う場合は、汗疱ではなく、異汗性湿疹と呼ばれます。
- 異汗性湿疹になると、症状が指の側面や手の甲、足の甲などにも広がって、強いかゆみと痛みを伴うことがあります。
汗疱の原因
- 多汗症といって、汗をたくさんかきやすい病気の場合も、汗疱のような症状がみられることもありますが、これを汗疱と呼ぶことはありません。
- 汗疱のほとんどは原因不明です。発汗の異常が関係しているのではないかと考えられていたこともありましたが、現在では、発汗との関連は薄いとされています。
汗疱の症状
- 手指や手のひら、足底に突然1~2mm大の透明で小さな水ぶくれ(小水疱)ができます。
- 水ぶくれは複数個が散らばって現れることもあれば、一度にたくさん現れることもあり、水ぶくれ同士がくっついて、大きな水ぶくれになることもあります。
- 水ぶくれができたところには、軽いかゆみを伴うこともあります。
- 通常、水ぶくれは破れ、治癒の過程で乾燥し、やがて白い皮膚片となってポロポロと剥がれ落ちていきます。
- 通常1~2カ月で自然になおりますが、再発を繰り返すことが多いです。
- 水ぶくれが破れた後、自分で皮をむしったり、刺激を加えたりしていると、患部が湿疹化して異汗性湿疹に進行することもあります。異汗性湿疹では、かゆみや痛みが出ます。
汗疱とよく似た間違いやすい疾患
- 汗疱の症状は、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)や白癬(はくせん)と見た目がよく似ています。気になる症状がある時は、医療機関で調べてもらいましょう。
掌蹠膿疱症
掌蹠膿疱症の症例画像
症例画像を鮮明にする
※ボタンを押下することで症例画像が切り替わります。
手のひらや足の裏に、膿がたまった小さな水ぶくれ(膿疱)がたくさんできます。膿疱の周囲は赤くなって、かゆみを伴います。膿疱はやがて茶色っぽいかさぶたになって剥がれますが、次々と新しい膿疱が発生し、2~4週間症状が続きます。30~50代の女性に多くみられ、一度治ってもまたすぐに再発するのが特徴です。発症には、喫煙、金属アレルギー、虫歯や副鼻腔炎、扁桃炎などの細菌感染が関係していると考えられていますが、わからないことも多い病気です。
白癬(はくせん)
手の水虫(手白癬)の症例画像
症例画像を鮮明にする
※ボタンを押下することで症例画像が切り替わります。
いわゆる水虫と呼ばれるものです。白癬菌(はくせんきん)というカビによって発生し、足にできるものを「足白癬(あしはくせん)」、手にできるものを「手白癬」と言います。足の裏や手のひら に水ぶくれができ、やがて皮がむけます。ただし手白癬は頻度が少なく、水ぶくれではなく、角質が厚くなる角質増殖型が多いです。皮膚科では、患部の皮膚を採取して、顕微鏡でカビの有無を検査します。
汗疱の治療・予防法
- 何度も症状を繰り返す場合は病院を受診しましょう。
- かゆみがなく、水ぶくれが小さいなど、比較的症状が軽い場合は、水ぶくれが吸収されて自然に治ることが多いです。
- 赤みやかゆみがある場合、かゆみにまかせて掻いてしまうと、湿疹化してしまいます。充分な強さのステロイド外用剤で炎症を抑え、かゆみを抑えましょう。
- 破れそうな大きな水ぶくれがある場合や、次々に新しい水ぶくれができて症状が治まらない場合は汗疱でないかもしれませんので、皮膚科を受診しましょう。
監修
帝京大学医学部皮膚科 名誉教授
渡辺晋一先生
1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。