虫刺され痕(あと)を残さないようにするにはどうすれば?正しいケア方法をご紹介

ひどい虫刺されの後、皮膚に茶色いシミのような痕ができたことはありませんか?
いつまでたっても消えないシミ。それは「炎症後色素沈着」といって、虫刺されによる炎症から皮膚を守り、皮膚を修復させる過程でメラニンという色素が沈着して起こるものです。
腕や脚など、虫に刺されやすく目立つ場所にできることが多いので、気になりますよね。
虫刺され痕を残さないように、虫刺されをきれいに治すための正しいケア方法について解説します。

ブユによる虫刺され

チャドクガ(毛虫)による虫刺され


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虫刺され痕(あと)が残る原因

蚊やダニ、ブユに刺されると、赤く腫れて強いかゆみを感じますが、この症状が長引くと、茶色いシミのような痕が残ることがあります。この痕は、虫刺されによってひどい炎症が起きた時や、虫刺されを掻き壊して肌を傷付けてしまった時、その自然治癒の過程でメラニンという色素が沈着して起こるもので、医学的には「炎症後色素沈着」といいます。

この炎症後色素沈着は、虫刺されだけでなく、日焼け、ニキビ、切り傷、湿疹ややけどなど、炎症を伴うさまざまな肌トラブルによって起きます。皮膚は炎症によって組織が傷付くと、組織を作り直して修復しようとするのですが、その過程で、表皮にあるメラノサイトが活性化されメラニン色素が生成され、色が黒くなります。通常、このメラニン色素は、肌のターンオーバー(肌の新陳代謝)に伴って、時間と共に肌の外へ外へと押し出され、最終的には垢として自然に排出されます。通常、数か月~半年でメラニン色素は自然に排出されますが、場合によっては1年近くかかることがあります。ただし掻き壊しなどをして炎症がひどいと、メラニンが真皮に落ちて、色素沈着が1年以上残ることがあり、この場合はシミとして残ることがあります。ターンオーバーではメラニンが排出できなくなるからです。

一般的に、子どもは肌の新陳代謝が活発なので、痕が残っても比較的早く元の肌色に回復しますが、年齢を経るごとに肌のターンオーバーの周期が遅くなるため、メラニン色素が抜けるのにも時間がかかるようになります。

痕(あと)にならないために!刺された後の対処法

虫に刺された後、炎症が強く、長引くほど、炎症後色素沈着が起きやすく、濃い痕が残りやすくなります。特に、かゆみが強い虫刺されの場合は、かゆいからといって掻き壊してしまうと、ジュクジュクした傷になったり、そこから細菌感染を起こしてしまったりして、消えないシミを作ることになりかねません。痕にならないためには、かゆみを無理に我慢せずに、充分な強さのステロイド外用剤を使ってすみやかに炎症を抑えることが大切です。

まずは虫に刺された箇所を「掻かない」ことが大切ですが、掻くのを我慢するのが難しい子どもや、すでに掻き壊してしまった場合など、細菌感染の心配がある時は、抗生物質を配合したステロイド外用剤を使うとよいでしょう。

ステロイド外用剤による治療と並行して行うべき対策としては、紫外線対策があげられます。

炎症が起きている場所が日焼けしてしまうと、メラノサイトがより活発になり、色素沈着が濃くなって消えにくくなってしまいます。外出する際は、衣服や絆創膏などで患部を覆って、紫外線が当たらないようにすることも大切です。

虫刺されで痕にしないためには、まず虫に刺されないことが一番です。

虫に刺されそうな場所へ行く時は、肌の露出を控えたり、虫よけスプレーや忌避剤を活用する、屋内の場合は、ダニやノミが発生しないように燻煙剤を使って防除するなどして、虫に刺さないようにしましょう。

虫刺され痕(あと)のケア方法

虫刺され痕、つまり虫刺されによって起きた炎症後色素沈着は、軽度のものであれば、肌のターンオーバーと共に自然に薄くなり、最終的にはほとんど目立たなくなっていきます。ただし、肌がターンオーバーするには、それなりに時間がかかるため、虫刺され痕が消えるまでには数か月~年単位での時間が必要です。

日常生活においても、虫刺され痕をゴシゴシとこすったり、紫外線による日焼け等の刺激を与えたりすると、色素沈着が濃くなってしまうことがあるので、そのような刺激を与えないように気を付けましょう。

ただし、虫刺されによる炎症の程度によっては、気をつけていてもどうしても痕が残ってしまうこともあります。時間とともに薄くなっていきますが、目立つ場所にできてしまった時や、どうしても気になる場合は皮膚科医に相談するとよいでしょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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