湿疹(皮膚炎)に用いる治療薬の選び方。セルフケアのポイントも解説

湿疹は、誰にでも起こりうる皮膚疾患です。皮膚に赤みやブツブツができ、強いかゆみを伴います。かゆみのために、ついつい掻き壊して皮膚を傷付けてしまい、ただれや細菌感染を起こして化膿することもあります。

湿疹は、掻けば掻くほど悪化するので、早めにケアすることが大切です。湿疹の治療薬の選び方、セルフケアのポイントと注意点について解説します。

湿疹(皮膚炎)とは

水仕事による手湿疹


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皮膚の表面に起きる炎症をまとめて「湿疹」または「皮膚炎」と呼びます。皮膚が赤くなり、ブツブツや水ぶくれができることもあり、強いかゆみを伴います。

皮膚の構造は、表皮、真皮、皮下組織の3つの層でできています。層の最も外側にある表皮は、外的な刺激から体を守り、細菌やウイルス、ダニや花粉などのアレルゲン、化学物質、紫外線などの異物の侵入を防ぐバリアとしての働きがあります。肌の乾燥や物理的刺激などによって、このバリア機能が低下すると、異物が体内へと侵入し、肌トラブルを引き起こします。この時、皮膚の内部では、異物を排除するために活発になった免疫系の働きによって、かゆみの原因物質であるヒスタミンや、炎症性物質が分泌され、皮膚に炎症が起きるのです。

セルフケアする場合と対処のポイント

湿疹は軽症であれば、専用の市販薬を使ってセルフケアすることもできます。

ただし、湿疹の原因や症状はさまざまです。まず自分の症状が、市販薬によるセルフケアで対処できるものなのかどうか、チェックしましょう。

市販薬でセルフケアできる湿疹

原因がはっきりしていて、一時的な症状であれば、市販薬によるセルフケアが可能です。

  • 明らかな原因のある接触皮膚炎(かぶれ、接触性皮膚炎)
  • 衣服やゴムによる圧迫や、繊維などの物理的刺激によるもの
  • 肌に触れた化粧品や洗剤、金属や植物などの刺激によるもの
  • 虫刺され
  • あせも
  • 肌の乾燥による軽い掻き壊し
  • 日焼けやしもやけによる炎症 など

医療機関での治療が必要な湿疹

原因が思い当たらない湿疹や、以下のような症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。

  • 手のひら2~3枚を超えるような広い範囲に症状がある
  • 急速に腫れやかゆみが広がる
  • 市販薬を1週間使用しても改善が見られない
  • 皮膚の異変だけでなく体調も悪化している(発熱、倦怠感など)
  • 軽快悪化を繰り返している など

湿疹は我慢せず早めの対処を

湿疹の治療は初動が肝心です。

炎症を起こしている患部はかゆみが強く、かゆみにまかせて掻きむしっていると患部の皮膚を傷付けてしまいます。また掻くことがさらに刺激となり、炎症を悪化させてしまう悪循環が起こってしまいます。

湿疹を悪化させないためには、この炎症の悪化サイクルを、早く断ち切ることがポイントです。

つまり、かゆみを鎮めるだけでなく、かゆみの原因である炎症にアプローチする治療を早期に行い、悪化を防ぐことが大切です。

湿疹に用いる治療薬とその種類

湿疹の治療では、外用薬をメインに使用しますが、症状の範囲が全身に及ぶ場合などは内服薬を用いることもあります。

外用薬

湿疹の治療で最もよく使われるのが外用薬です。

外用薬にも、さまざまな種類がありますが、湿疹には、合成副腎皮質ホルモンを配合した外用薬が有効です。これは、一般的に「ステロイド外用剤」と呼ばれています。

もともと、副腎皮質ホルモンは、私たちの副腎皮質で作られているホルモンで、炎症を鎮める働きを持っています。ステロイド外用剤は、その副腎皮質ホルモンの構造をもとに抗炎症作用を強化して化学合成された「合成副腎皮質ホルモン」を配合しているので、赤みや腫れ、かゆみなどの症状を抑えるだけでなく、炎症が起こるのを抑える働きがあります。

また、掻き壊しなどによる患部の細菌感染の防止のために、ステロイド成分に抗生物質を配合した外用剤を選択することもできます。

炎症の根本を抑制することができるステロイド外用剤は、多くの炎症性皮膚疾患の治療薬として欠かせないものです。

内服薬

医療機関の受診が必要な広範囲の湿疹や、全身性の症状が続いている場合など、外用薬での治療が難しい場合は、内服薬を使用することもあります。

炎症性皮膚疾患では、ステロイド成分配合内服薬や、かゆみの原因物質であるヒスタミンを抑える「抗ヒスタミン剤」を使用することがありますが、ステロイド外用剤が基本になります。

また、症状によっては、外用薬と併用して治療することもあります。

内服薬の選び方と注意点

湿疹治療では、ひとりひとりの状態や、症状に合わせた治療薬を選ぶようにします。ここでは、市販の治療薬(OTC医薬品)の選び方と注意点を中心に解説します。

ステロイド成分配合の市販薬を上手に活用する

身近な湿疹に対しては、ステロイド成分が配合されている市販薬を活用するとよいでしょう。

ステロイド外用剤は、炎症そのものを強く抑える「抗炎症作用」と、炎症を加速させる免疫系の亢進にブレーキをかける「免疫抑制作用」の二つの作用によって、すばやく炎症を抑え、赤みやかゆみなどの症状を根本から鎮めることができます。

「炎症を抑える」という働きは、ステロイド成分が配合されていないタイプの抗炎症剤(非ステロイド性抗炎症成分:NSAID‘s)にもありますが、これは炎症反応の一部を抑えるものなので、湿疹に対する有効性は最近疑問を持たれるようになりました。

市販のステロイド外用剤の中には、抗生物質を配合しているものもあります。抗生物質入りのステロイド外用剤は、かゆみのある初期の湿疹から、掻き壊して痛みのある湿疹まで、幅広く使用できます。湿疹・皮膚炎は掻き壊しを伴うことがあり、ジュクジュクした患部での細菌増殖を防ぐためには抗生物質が配合されているものを選ぶとよいでしょう。

ステロイド外用剤の強さと、年齢による使い分け

ステロイド外用剤は、作用の強さによって、弱い(ウィーク)から最も強い(ストロンゲスト)までの5段階に分類されています。5段階のうち、ストロンゲストとベリーストロングは医療用のみで、市販薬は、ウィーク、マイルド、ストロングの3段階に限られています。

セルフメディケーションにおける外用ステロイドのランク選択の目安

セルフケアを行う場合、ステロイドランクは基本的に年齢に応じて使い分けをします。

大人にはストロング、子どもにはマイルド、赤ちゃんにはウィークを使用するのが一般的です。

子どもや赤ちゃんの肌は、バリア機能が未熟なため、薬がよく浸透し作用が強く出ます。年齢に応じてランクを下げることによって、適度な効果が期待できます。

部位ごとのステロイドランクの使い分け

大人が使用する場合でも、使用部位によっては、ステロイドランクを下げたほうがよいこともあります。特に陰部・顔面などのデリケートな部位は、成分を吸収しやすいので、ランクを下げてもよいでしょう。

ステロイド外用剤が吸収される割合

ステロイド外用剤の剤形による使い分け

市販のステロイド外用剤の剤形には、主に「軟膏」、「クリーム」、「ローション」などがあります。クリームやローションは、さらっとしていて使いやすいのですが、刺激性があるため、水ぶくれやジュクジュク、膿疱などを伴う湿疹には使用できません。

一方、軟膏は、刺激性がほとんどなく、あらゆる状態の湿疹に対して幅広く使用することができます。好みだけでなく患部の状態も考慮して使い分けるとよいでしょう。

ステロイド外用剤の上手な使い方

湿疹は我慢せず、早めにステロイド外用剤を使ってケアすることが、治療期間をより短くして傷痕を残さないために大切です。ステロイド外用剤を上手に使うには、まずはじめに充分な薬効のあるランクのものを使用し、かゆみの原因を元から断つことが重要です。

大人の場合、症状がではじめた初期の段階でストロングランクのステロイド外用剤を使用し、炎症をしっかりと抑えます。そうすることで、かゆみも鎮まり、患部の掻き壊しを防ぐことができます。症状が落ち着いた後は、弱いランクのステロイド外用剤、あるいは他の外用薬に切り替えても大丈夫です。この方法は、「ステップダウン療法」と呼ばれ、医療現場でのスタンダードな考え方です。

弱いランクのステロイド外用剤を長く使うよりも、治療期間が短くてすみ、傷痕が残りにくいのできれいに治すことが期待できます。

ステロイド外用剤を使用する時の注意点

「ステロイド」は、副作用が多いのではないかと誤解されることもあるのですが、定められた使用方法や用法・用量を守れば、速やかに症状を改善できる薬です。

子どもや赤ちゃんに使用する場合や、大人でもデリケートな部位に使用する場合は、ステロイドのランクを下げるとよいでしょう。また、ステロイド外用剤による治療は、だらだらと長く続けるものではなく、短期間で行うものです。ステロイド外用剤を1週間使用しても改善しない場合は、使用を中止し、医療機関を受診するようにしましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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