『しこり』になったニキビの原因と対処法。間違いやすい粉瘤との見分け方も解説


誰しもが一度は経験したことがあるといわれる皮膚トラブルの「ニキビ」。ニキビの中には、悪化してはれあがり、しこりのようになってしまうものもあります。

今回は、ニキビがしこりになってしまう原因や正しい対処法、ニキビとよく似ている粉瘤との見分け方を解説します。

なぜニキビがしこりになるの?

ニキビとは「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」という皮膚の病気です。「皮脂の分泌過多」「毛穴の詰まり」「アクネ菌の繁殖」などの要因が重なり、毛穴に炎症が起こります。

ニキビができると、皮膚の毛穴の中にアクネ菌や皮脂、膿などが一時的に溜まります。その際、毛穴の出口が空いていれば、そこから内容物が自然に排出され、やがて治癒します。しかし、ニキビの内容物がうまく排出できずに内部に溜まることで慢性的な炎症が起きると、組織が固くなって、結節(けっせつ)と呼ばれるいわゆる「しこり」ができます。

ニキビが悪化するプロセス

ニキビは、一般的には「白ニキビ」「黒ニキビ」「赤ニキビ」「黄ニキビ」の順番で経過をたどります。ただし、逆の経過をたどったり、途中で治ったりすることもあります。

白ニキビ

白ニキビとは毛穴の中に皮脂が溜まり出し、白っぽい盛り上がりができる段階で、毛穴の出口はふさがっています。この状態を医学用語では「コメド」または「閉鎖面疱(へいさめんぽう)」といいます。盛り上がりの中ではアクネ菌が増え始めていますが、炎症はまだありません。

黒ニキビ

次に、ニキビの毛穴部分が開いて広がり、内部に黒く酸化した皮脂が見える「黒ニキビ」の状態になります。毛穴部分が開いているので、医学用語では「開放面疱(かいぽうめんぽう)」といいます。この段階でも炎症はまだみられません。

赤ニキビ

その後、毛穴の中でアクネ菌が増殖すると、毛穴周囲に炎症が広がります。炎症によって周囲にはれを伴う赤いブツブツにかわるので、「赤ニキビ」と呼ばれます。医学用語では「炎症性面疱(えんしょうせいめんぽう)」といいます。

黄色ニキビ

赤ニキビが悪化し、その中に黄色い膿が溜まると「黄ニキビ」になります。医学用語では「膿疱性面疱(のうほうせいめんぽう)」といいます。

ニキビがしこりになってしまう場合

ニキビがしこりになってしまうのは、特に毛穴の深い場所でアクネ菌が増殖し、ひどい炎症が起き、赤ニキビや黄色ニキビへと進行してしまうケースです。

出口がないために内容物を排出できず、慢性的な炎症によって固いしこり(結節)となってはれあがります。さらに、結節の内部が化膿して膿が溜まると「嚢腫性ざ瘡(のうしゅせいざそう)」という状態になります。

嚢腫性ざ瘡では、ひどい炎症のために赤みとはれが強く、指で触ると痛みが生じます。炎症は周囲の組織を傷つけ、皮膚の深い所にある真皮層にまでおよぶため、治った後も色素沈着やケロイド、アイスピック型と呼ばれるアイスピックで突いたような深い傷痕を残すこともあります。

しこりのあるニキビと粉瘤の見分け方

しこりになったニキビとよく似た皮膚の病気に「粉瘤(ふんりゅう)」があります。粉瘤とは、直径数mm~数cmの弾力のあるしこり(できもの)が皮下にできる病気で、良性腫瘍の1種です。全身どこにでもできる可能性があり、しこりが大きくなるにつれて皮膚がドーム状に盛り上がって見えます。しこりの内部は袋状の構造になっていて、皮膚から出た老廃物が溜まっています。通常、痛みはありませんが、粉瘤の中に細菌が入り込んで炎症が起きると、急激に大きくなって痛みが出ます。

一見、しこりになったニキビと見た目は似ていますが、ニキビと粉瘤は全く別の病気で治療法も異なります。これらを見分けるポイントとしては、粉瘤には盛り上がりの中心に黒い穴が開いている特徴があります。また、ニキビは悪化したとしても数㎜以内にしかなりませんが、粉瘤の場合は直径数㎝まで急激に大きくなることがあります。また、ニキビには匂いはありませんが、粉瘤の場合は中の内容物の不快な臭いがしたり、ドロドロとした物質が出てきたりすることがあります。

ただし、初期の段階の粉瘤の場合はニキビとの見分けが難しいため、皮膚科を受診し、医師の診断を受けましょう。

しこりになったニキビの対処法

ニキビが悪化してしこりになってしまうと、市販のニキビ治療薬では治療できません。できるだけ早めに皮膚科を受診し、医師の治療を受けましょう。

ニキビを自分で潰そうとして触ると、症状が悪化し、クレーター状のへこみやケロイド、色素沈着などの痕が残りやすくなります。へこみやケロイドなどの痕は一度できてしまうと元の状態には戻りにくく、治療も難しいため、注意しましょう。

ニキビがしこりにならないように予防する方法

ニキビがしこりにならないように予防するためには、まずニキビそのものを予防することが大切です。日々の正しいスキンケアと規則正しい生活習慣を身につけ、身体の外側と内側の両方からニキビの発症を防ぎましょう。

基本的なニキビの予防法

ニキビ予防の基本は皮膚を常に清潔に保つことです。ニキビは過剰な皮脂と毛穴の詰まりによって起こるため、日々の洗顔で余分な皮脂や角質の汚れを落とし、ニキビができにくい皮膚環境を整えることが大切です。

しかし、洗いすぎ、擦りすぎによる皮膚への刺激はよくありません。適度な洗浄力の洗顔料を選び、手でよく泡立ててからやさしく洗い上げ、すすぎましょう。特に顎まわりや髪の生え際などは洗浄成分が残りやすいので、すすぎ忘れをしないように注意しましょう。保湿する場合はニキビ肌用の化粧水がよいでしょう。軟膏や保湿クリームは毛穴を埋め、ニキビを悪化させることがありますので避けましょう。

ニキビの発症や悪化を予防するためには、日常生活における皮膚へのストレスを減らすことも大切です。顔まわりに触る癖のある人や、髪の毛、衣服の繊維が顔に触れる状態にある人は、皮膚を刺激しているのでニキビ発症のきっかけになります。衣服の素材は皮膚への刺激の少ない綿素材にしたり、髪が皮膚に触れないようにしたりして、日常生活から工夫しましょう。

また、乱れた食生活や睡眠不足、過度なストレスなどの要因が重なると、ホルモンバランスの乱れによって皮脂分泌が過剰になり、ニキビができやすい状態になります。規則正しい食生活・睡眠習慣、ストレスの少ない環境を整え、身体の内側からニキビを予防しましょう。

ニキビができてしまった場合

予防をしていてもニキビができてしまったら、患部を清潔に保ちつつ、ニキビに適応のある市販のOTC医薬品を使って早めにセルフケアを行いましょう。ニキビに触ったり、潰そうとしたりすると、皮膚の奥で炎症が広がってしこりに発展するリスクが高まります。セルフケアでよくならない場合、悪化している時は皮膚科を受診しましょう。

監修

天下茶屋あみ皮フ科クリニック 院長

山田貴博 先生

2010年名古屋市立大学医学部卒。NTT西日本大阪病院(現・第二大阪警察病院)にて初期臨床研修後、大阪大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学講座助教として基礎医学研究に従事。阪南中央病院皮膚科勤務を経て、2017年天下茶屋あみ皮フ科クリニック開院。

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