アテローム(粉瘤・ふんりゅう)の症例画像
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粉瘤(ふんりゅう)とは
- 粉瘤(ふんりゅう)は、直径数mm~数cmの弾力のあるしこり(できもの)が皮下にできる病気で、皮膚がドーム状に盛り上がってみえます。
- 粉瘤は皮膚の良性腫瘍の1つで、「アテローム」ともいいます。ありふれた病気で、全身どこにでもできます。
- “脂肪のかたまり”といわれることがありますが、しこりの中身は脂肪ではなく、皮膚の垢が溜まってできます。
- 古くなった角質や皮脂が、皮下にできた袋状の空間の中にどんどん溜まって、大きくなります。
- 粉瘤の部分の盛り上がりをよく見ると、中心に黒い穴が開いていることもあり、独特の不快な臭いを発する場合や、強く圧迫するとドロドロとした物質が出てくる場合があります。
- 粉瘤と呼ばれるものには、状態の異なる複数の種類が存在しますが、表皮嚢腫とそれが感染した炎症性粉瘤が多いです。
表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)
表皮の一部が真皮層に入り込んで袋状になり、そのなかに皮膚の垢が溜まってしこりになったものです。はじめは直径数ミリの小さいものが次第に大きくなり、ときに10cm以上の大きさになることもあります。表面は正常な皮膚と同じ色をしていて、よく見ると中心部に黒い穴が開いています。
炎症性粉瘤・化膿性粉瘤(えんしょうせいふんりゅう・かのうせいふんりゅう)
粉瘤の内部に細菌が入り込み、感染を引き起こした状態です。炎症によって急に赤くなり、大きく腫れあがります。粉瘤そのものは痛みのない良性腫瘍ですが、炎症が起きると痛みを感じるようになります。
外毛根鞘性嚢腫(がいもうこんしょうせいのうしゅ)
頭部にできる粉瘤です。毛根由来の細胞が袋状の空間をつくってできると考えられています。
多発性毛包嚢腫(たはつせいもうほうのうしゅ)
胸の正中部、わき、首などに小豆大ほどのしこりが数個から数十個できます。皮膚の盛り上がりに黒い穴はなく、匂いのないドロッとした液体が入っています。
脂腺嚢腫(しせんのうしゅ)
皮脂を分泌する脂腺の周辺にできる袋状のできものです。毛穴に一致して発生することがあります。
- 粉瘤は良性腫瘍のため、それ自体が問題になることはありませんが、大きくなりすぎたときや、感染を起こして痛みや腫れを生じたときは、手術をして取り除きます。
粉瘤の原因
- 粉瘤の断面を顕微鏡で見てみると、本来身体の表面にあるはずの表皮が、皮膚の奥に入り込んで袋状の空間をつくっていることがわかります。袋の中には、皮脂や古くなった角質などが排出できずに溜まり続け、袋がだんだんと大きく膨らみ、やがて皮膚の上から盛り上がってみえるようになります。
- 粉瘤の多くは原因不明ですが、切り傷や打撲がきっかけで発症することもあります。
- ごく稀に遺伝子の影響やヒトパピローマウイルスへの感染によって粉瘤が発生するケースも報告されています。
粉瘤の症状
- 直径数mm~数cmの弾力のあるしこりが皮下にでき、皮膚がドーム状に盛り上がります。表面の色は周囲の正常な皮膚と同じか、やや白っぽくみえます。
- 盛り上がりの中には、皮脂や古い角質などの老廃物が溜まっており、いやな臭いがします。
- 盛り上がりの中心部をよく見ると、黒い穴が開いていることがあります。
- 強く圧迫すると、しこりの中からドロドロした臭い内容物が出てくることがあります。
- 全身どこにでもできますが、特にできやすい場所は、顔、頭、首、背中、耳の後ろなどです。
- 通常、粉瘤自体には痛みやかゆみはなく、小さいものの場合は気付かないこともあります。
- ただし、粉瘤の内部に細菌が侵入すると感染を起こし、炎症のために赤くなって大きく腫れあがり、痛みが出ます。細菌感染を起こした粉瘤は「炎症性粉瘤・化膿性粉瘤」と呼びます。
粉瘤の治療法
- 粉瘤の場合、一度できてしまうと自然に治ることはないので、専門医による治療が必要です。
- 粉瘤を自分でつぶしてはいけません。細菌感染を引き起こし、悪化させる恐れがあります。
- すでに細菌感染を起こして赤みや腫れ、痛みなどの症状がある場合は、すみやかに専門医を受診しましょう。炎症が軽度の場合は、抗生物質の内服によって症状をコントロールすることができます。ただし、炎症がひどかったり、炎症を繰り返したりする場合は、外科手術によって粉瘤を取り除く必要があります。
- 粉瘤の手術には、主に「切開法」と「くりぬき法」の2つの方法があります。
切開法
粉瘤の直径に合わせて表皮を切開し、中の袋ごと切除する方法です。大きくなった粉瘤でも確実に取り除くことができます。再発しにくいメリットがある一方、手術の傷が大きく、抜糸のために通院しなげればならないというデメリットがあります。
くりぬき法
専用の器具を使って粉瘤の中心部に小さな穴を開け、袋の中の内容物を押し出します。袋の中身を抜いたあと、残りの皮の部分をピンセットで少しずつ剥離し、取り出します。手術の傷が小さく、縫合が不要というメリットがありますが、取り残してしまうことも多く、大きな粉瘤には向いていないというデメリットがあります。
- 専門医は粉瘤の大きさや場所、状態によって治療方法を選択します。いずれの方法でも特に大きな粉瘤でなければ、日帰りで手術ができます。
- 皮膚にできるできものには、粉瘤以外のものもあります。粉瘤かなと思ったら、専門医を受診しましょう。
監修
帝京大学医学部皮膚科 名誉教授
渡辺晋一先生
1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。