爪白癬(爪水虫)とは
爪の水虫(爪白癬)
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- 爪白癬(つめはくせん)とは、皮膚糸状というカビ(真菌)が爪に寄生することで起こる感染症です。
- “爪水虫(つめみずむし)”とも呼ばれます。
- 白癬菌は爪や角質層に多く含まれるケラチンというたんぱく質をエサに増殖します。
- 爪白癬になると、爪が白色から黄色に濁ったり、厚くなってぼろぼろと欠けたりするようになります。
- 重症例では、爪が変形して厚みが増し、靴下や靴が履きづらくなるなど日常生活に支障をきたすようになります。
- 爪白癬は、かゆみなどの自覚症状がほとんどありません。しかし、人にうつる病気なので、しっかりと治療することが大切です。
- 日本人の5人に1人は足白癬(白癬菌が足の皮膚に感染したもの。いわゆる水虫)、10人に1人は爪白癬に罹っていると推定されています。
- 日本の爪白癬の推定患者数は1000万人以上と推定されています。
- 爪白癬は、特に高齢者に発生しやすいと言われています。
爪白癬(爪水虫)の原因
- 爪白癬は、白癬菌というカビ(真菌)が爪の内部に侵入し、ケラチンをエサに増殖することで発症します。
- いきなり爪白癬を発症することは稀です。主な感染経路としては、すでに足白癬に罹っている人がそれを放置しているうちに白癬菌が爪へと移り、爪白癬を発症するパターンがほとんどです。
- 爪の先端や側面から白癬菌が侵入しますが、稀に甘皮や爪表面から侵入することもあります。
- 白癬菌は高温多湿な環境で増殖します。靴下や靴が蒸れたまま履き続けると足白癬になりやすく、その後爪白癬になります。
爪白癬(爪水虫)の症状
- 爪白癬になると、爪の一部が白色から黄色に濁ります。
- 爪の下の角質層で白癬菌が増殖することで、爪が厚くなり、ぼろぼろと欠けることもあります。
- 爪の変色や形状変化などの症状は、爪の先端から始まり、徐々に根元のほうに症状が広がっていくパターンがほとんどです。
- ただし、甘皮部分から白癬菌が侵入した場合では、爪の付け根が白く濁るなどの症状がみられますが、稀な病型です。
- 爪表面から白癬菌が侵入したパターンでは、爪表面に白い点状・斑状の濁りが生じますが、稀な病型です。
- かゆみなどの自覚症状はほとんどありませんが、接触やタオル、マットの共有などを介して白癬菌を他の人にうつし、白癬を発症させる可能性があります。
爪白癬(爪水虫)に感染しやすい環境
- 爪白癬は、足白癬を発症した足から、白癬菌が爪へと移動し、感染するケースがほとんどです。爪白癬にならないために、まずは足白癬を予防することが大切です。
- 白癬菌は、汗で蒸れた環境を好み、増殖します。蒸れた靴下を履き続ける、毎日同じ靴を履き続ける、雨で濡れた靴を履き続けることで感染しやすくなります。
- 公衆浴場やスポーツジムなど、不特定多数の人が裸足や濡れた足でマットやスリッパなどを共有する環境では、白癬菌に感染するリスクが高まります。
- 家庭内でも、足白癬や爪白癬に罹った人とタオルやバスマットを共有すると、感染するリスクがあります。
爪白癬(爪水虫)の診断方法・治療法
診断について
- 爪白癬はかゆみなどの自覚症状がないものの、家族や他人にうつる可能性のある感染症です。爪の変色や変形に気付いたら、医療機関を受診し、診断を受けましょう。
- 爪白癬の診断は、医師が爪の一部を採取し、白癬菌の有無を確認します。この検査を直接鏡検と言います。
治療について
- 爪白癬と診断されたら、OTC医薬品によるセルフケアでは対処できません。医療機関での治療が必要です。
- 爪白癬の治療は、抗真菌薬による薬物治療を行います。抗真菌薬は、白癬菌などの真菌の構造や機能を妨げることで、それらの増殖を抑える作用のある薬です。患部に塗布する外用薬と、経口投与する内服薬の2つのタイプがあります。
- 爪の厚みに変化はなく、白っぽくなっている程度であれば、外用剤を塗布し、有効成分を浸透させることで、治療できる可能性があります。
- 一方、すでに爪の変形や爪が黄色~白色に濁るなどの変化が起きている場合は、外用剤で治療することはできないため、内服薬を服用する必要があります。ただし爪の先端から縦に線状の混濁がある場合は、爪白癬専用の外用剤でないと治りません。
- 爪白癬に対する外用剤と内服薬は、いずれも市販されていないため、医療機関を受診し、医師の指導のもとで薬物治療を受けましょう。
ただし外用剤を使用する場合は、爪の先端から液剤を垂らしこむように使用しないと効果は乏しいです。
医療機関に行く目安
- 白癬菌を抑制する作用のある薬剤で治療を行いますが、一度、変色・変形してしまった爪が完全に生えかわるまでには最低でも1年はかかります。途中で治療をやめてしまうと、再発するため、医師の指示通りに最後まで治療を受けることが大切です。
爪白癬(爪水虫)の予防法
- 爪白癬を予防するには、まずは足白癬を予防しましょう。
- 白癬菌への感染経路は、マットやスリッパなどの他人と共有しているものになります。白癬菌を皮膚に付着させないよう、できるだけ他人との共有を避け、清潔なものを使用しましょう。
- 特に公衆浴場やスポーツジムでは、多くの人が裸足で歩いたり、マットやスリッパを共用したりすることがあるため、白癬菌に感染するリスクが高まります。そのような場所を利用した後は、石鹸などで足の裏、足の指の間などを軽く洗って、清潔に保ちましょう。ゴシゴシ洗いをすると、皮膚を傷つけ、かえって水虫になりやすくなります。
- 万が一、白癬菌が付着しても、すぐに感染するわけではありません。1日1回の入浴などで身体を清潔にしていれば、感染を予防することができます。
- 日常生活では、こまめに靴下を履き替える、毎日靴を履き替えて、足が蒸れそうだなと感じたら靴を脱いで乾燥させるなどの工夫をしましょう。
- 家のバスマット、ラグ類はこまめに洗濯し、天日干しをするなどして清潔に保ちましょう。
- 市販の水虫薬をつけていれば、水虫にかかることはありません。水虫(足白癬)にならなければ、爪白癬になることもありません。
監修
帝京大学医学部皮膚科 名誉教授
渡辺晋一先生
1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。