治らない『手湿疹』はストレスが原因?手湿疹の種類と原因を解説

「手湿疹(てしっしん)」とは、手指にブツブツ・赤みなどができる皮膚トラブルの総称です。手指は、常に外気や洗剤などにさらされるため、一度湿疹ができると治りにくく、症状を繰り返しやすい部位です。家事や仕事が忙しくてストレスを感じている時に、手の皮膚トラブルに悩まされると「ストレスが原因では?」と思うことがあるかもしれません。今回は、手湿疹の種類やその原因、治らない手湿疹とストレスの関係を解説します。

手湿疹の症状

水仕事による手湿疹の症例画像

洗剤かぶれの症例画像


症例画像を鮮明にする

※ボタンを押下することで症例画像が切り替わります。

手湿疹はいわゆる「手荒れ」がさらに進行した状態と考えられており、皮膚の赤みやかゆみ、小さなブツブツなど、いくつかの症状が混ざり合って発症します。皮膚を外敵刺激から守る「皮膚のバリア機能」が低下しているため、洗剤や薬剤がしみて、ピリピリとした痛みを感じることもあります。さらに悪化すると、皮膚が極度に乾燥して亀裂やひび割れを生じるタイプと、ブツブツや水疱ができるなどして患部がジュクジュクするタイプのどちらかの手湿疹に進行します。

主に利き手の指先から発症し、皮膚が何度も剥がれ落ちて硬くなり、徐々に症状の範囲が広がります。手の甲や関節周囲に発症し、腫れを伴うこともあります。何度も再発を繰り返していたり、重症化したりすると患部が化膿することもあるため注意が必要です。

手湿疹は、職業柄、水や化学物質を含む洗剤に触れる機会が多い美容師や調理師の他、炊事・洗濯など水仕事をする主婦などに多い疾患のため「主婦湿疹」と呼ばれることもあります。

手湿疹とストレスは関係がある?

手湿疹の発症とストレスは何か関係があるのでしょうか。結論をいうと、医学的には手湿疹とストレスに直接的な関連性はないと考えられています。

しかし、手湿疹はかゆみなどの不快な症状だけでなく、見た目にも影響するため、症状が気になりだすとつい触ったり、掻いたりすることを抑えることができず、症状を悪化させてしまいます。そのほかにも、人によっては、イライラすると身体を掻く癖があったり、自分で指の皮をめくってしまったりなど、心の状態によって掻きむしる行動が起き、手湿疹を悪化させているケースもあります。

手湿疹とアトピーの関係

もともとアトピー性皮膚炎の人や、昔アトピー性皮膚炎を発症したことのある人は、皮膚のバリア機能が弱い上に、体調不良や過度なストレスの影響で手湿疹のような症状が出たり、手湿疹が悪化したりすることがあります。

手湿疹の種類と原因

手湿疹には、発症メカニズムや原因の違いによっていくつかの種類に分類されています。ただし、種類の異なる手湿疹を同時に発症することもあり、種類や原因を特定できないこともよくあります。

刺激性接触皮膚炎

洗剤や化粧品、薬品、食べ物、植物に含まれる刺激性物質に触れることによって手指の皮膚がダメージ受けて発症する皮膚炎です。手湿疹の約7割がこの刺激性接触皮膚炎だといわれており、原因となる物質に触れる頻度の高い利き手の指先を中心に症状が出やすいのが特徴です。誰でも起こり得る疾患で、水仕事や乾燥、アトピー性皮膚炎などによって皮膚のバリア機能が低下しているとより発症しやすくなります。

化学物質によるアレルギー性接触皮膚炎

化学物質に対するアレルギー反応によっておこる皮膚炎です。洗剤や化粧品、薬品、植物などに含まれる特定の物質やゴム製品の成分、金属に対して免疫が働き、アレルギー反応を起こす体質になることを「感作(かんさ)」といいます。一度、特定の物質に対する感作が起きると、再び同じ物質に触れることでアレルギー反応を生じ、かぶれを発症します。アレルギー反応によって、かゆみ物質であるヒスタミンなどが皮内に放出されるため、湿疹やかゆみの症状が強い傾向があります。

手湿疹と間違えられやすい疾患

手指の皮膚病はすべて手湿疹というわけではありません。一見、症状は似ていても、手湿疹とは別の疾患である場合もあります。手湿疹と間違えられやすい疾患についても解説します。

汗疱(かんぽう)

手のひらにかゆみを伴う1~2mm大のポツポツが生じ、その後皮が剥ける皮膚病です。数か月以内に自然治癒しますが、一年に数回再発することが多いです。

異汗性湿疹(いかんせいしっしん)

汗疱の患部に刺激が加わり、湿疹になった疾患のことです。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

手のひらや足裏に膿のある小さな水ぶくれができ、慢性に経過します。まだ分からないことも多い疾患ですが、喫煙、銀歯による金属アレルギー、ストレス、扁桃炎などの要因が関与していると考えられています。

手白癬(てはくせん)

白癬菌というカビが皮膚で繁殖しておこる感染症で、いわゆる“水虫”の一種です。かゆみは少なく、患部全体が硬くなり、鱗屑(りんせつ)と呼ばれる角質層がはがれた時にできる垢(あか)やフケのようなものが出ることがあります。白癬菌を殺菌する薬を使って治療する必要があります。

手湿疹の対処法

刺激性接触皮膚炎、化学物質などによるアレルギー性接触皮膚炎の場合は、原因となる物質に触れないようにすることが重要です。家事や仕事でどうしても水に触れなくてはならない場合は、手袋をするなどしてなるべく手にものが触れない工夫をし、日頃から保湿ケアをすることが大切です。

手湿疹のケアは保湿が基本です。手湿疹になると、皮膚のバリア機能が低下し、手指は乾燥してカサカサしてくるため、こまめに保湿をして、皮膚を保護しましょう。

患部を掻くと悪化するため、炎症を起こしてかゆみがひどい部位には、ステロイド外用剤を塗って治療しましょう。傷ができて細菌感染が心配な時は、抗生物質が入ったステロイド外用剤を使用します。ステロイド外用剤は、成人であればストロングランクの充分な強さのステロイド外用剤を使用し、炎症のある患部にのみ塗るようにしましょう。

手湿疹で病院に行く目安

基本的な保湿ケアを続けても、手指の乾燥・手湿疹が改善しない場合や、何度も症状を繰り返す場合は皮膚科を受診しましょう。また、我慢できないほどのかゆみや痛みがある場合、炎症の範囲が手のひら2~3枚を超える広範囲に及ぶ場合は、皮膚科で治療を受けましょう。炎症のある範囲が小さい場合でも、ステロイド外用剤を5~6日間使用して症状が改善しない、悪化している場合は使用を中止し、医師に相談してください。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

他の症状を探す

他の症状を探す場合はこちらから

症状一覧ページへ