アトピーはステロイド軟膏で対処できる?正しい治療法について

アトピーの治療薬について、
「ステロイドを配合していない薬は身体にやさしい」
「ステロイド配合の薬は強いから、なるべく使わないほうがいい」
という意見を聞くことがありますが、この考え方は正しいのでしょうか?

今回は、アトピー性皮膚炎とはそもそもどのような疾患なのか、またステロイド軟膏による治療について、どのように考えるのがいいのかをお伝えします。

「アトピー性皮膚炎」はどうして起こるの?

アトピー性皮膚炎は、日本を含めた先進国の乳幼児でよくみられる炎症性の皮ふ疾患です。
まだはっきりとした原因はわかっていませんが、体質が主な原因だと言われており、さらに環境などが悪化要因となり発症すると考えられています。

「乾燥肌」のような軽度の症状の方から「全身を掻き壊してじゅくじゅくする」といった重度の症状の方までさまざま。

こんな症状に心当たりがある方はアトピー性皮膚炎かもしれません。

  1. 皮ふにかゆみがある
  2. 左右対称に現れる、皮ふの湿疹がみられる
  3. 上記にあげたような症状が、慢性的に、または繰り返し現れる

上記のような症状が、

  • 幼児〜成人であれば「6ヶ月以上」
  • 乳児であれば「2ヶ月以上」

続いた場合、アトピー性皮膚炎の可能性があります。

アトピーを悪化させる、一番の要因

アトピー性皮膚炎を悪化させてしまう一番の要因は、「炎症悪化サイクル」に陥ること。
寝ている間など無意識に患部をかくことで「かきむしる→皮ふの状態が悪化する→かゆみが増す→さらにかきむしる」といった炎症の悪化サイクルに陥ってしまうのです。

そうならないためにも、かいてしまう原因である「かゆみ」を上手くコントロールすることが重要なのですね。

炎症を鎮め「かゆみ」を抑えるステロイド軟膏

かゆみのもとである炎症を鎮める「ステロイド軟膏」を上手に活用することによって、かゆみを抑えることができます。

「ステロイドは怖い」というイメージから、ステロイド軟膏を使わずに治療を続ける方もいますが、かきむしってしまったら意味がありません
悪循環を断ち切るためにも、ステロイド軟膏を上手に使用しましょう。

ステロイド軟膏は効き目の優れた薬ですが、だから副作用が強いというわけではなく、使用上の注意を守って使用すれば、心配はありません

皮ふに塗る回数の目安は1日2~3回。
1回あたりの使用量は「口径5mmのチューブから、大人の人差し指の先から第一関節まで押し出した量(約0.5g)を大人の手のひら2枚分くらいの広さに伸ばして塗る」を適量の目安とし、患部の広さに合わせて使用量を決めます。
※製品によって口径は様々です。5gチューブなど口径が小さい場合は多めに出すなど調整してください。

かゆみが強い部分にステロイド軟膏を使い、症状が改善しかゆみがなくなった部分は保湿剤でスキンケアするといったコントロールが大切です。

ステロイド軟膏は年齢に合わせて選ぶ

ステロイド軟膏には、「ストロング」や「ウィーク」などの強さのレベルがあります。

アトピーに対してステロイド軟膏を使うのは、悪化する前にイッキに治すため。だから「症状が軽いから」「まずはお試しで…」と弱いものを選んでも効き目が弱く、結局、炎症を悪化させてしまう可能性があります。

皮ふがどれだけ薬を吸収しやすいか、つまり年齢を中心にランクを選ぶのが正解。
赤ちゃんや子どもに使う薬を選ぶときは、まずは医療機関を受診し医師に相談するのがおすすめです。

ステロイド成分は強力な抗炎症作用をもっているため、通常数日から1週間程で効果が現れます。もし1週間経過しても薬の効果が見られない場合は、再度医師の診察を受けるようにしてください。

まとめ

アトピー治療の近道は、かゆみのために患部をかき壊してしまう「炎症悪化サイクル」を断ち切ること。
そのためには、ステロイド軟膏も手段の1つとして取り入れて、かゆみをコントロールすることが大切です。

アトピー性皮膚炎は中学生くらいになると、症状が軽くなることが多いです。
まずはステロイド軟膏について正しく理解し、医師と相談しながら、アトピー性皮膚炎と上手に向き合っていきましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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