『頭皮のかゆみ』の原因は?かゆい場合に考えられる疾患、正しいケア方法を解説

「毎日清潔にしているつもりなのに頭皮がかゆい!」という悩みは、誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。頭皮のかゆみは一日中ムズムズして不快なだけでなく、フケや頭皮の赤みなどの症状を伴うこともあります。

今回は、頭皮のかゆみの原因として考えられる疾患や、正しいケア方法を解説します。

なぜ頭皮はかゆくなるの?

「かゆみ」は私たち人間の身体に備わった防衛反応の一つであり、何らかの異常を知らせてくれる大切な皮膚感覚と考えられています。かゆみを伝える神経は全身の皮膚にあり、表皮と真皮の境目まで伸びてきた神経を介して、皮膚に加わった刺激を脳へと伝えます。

例えば、髪や頭皮に虫やゴミなどの異物が付着した時にも敏感に感知して異常を知らせ、とっさに手で払いのけるなどの反応を起こします。

また、頭皮は常に外気や紫外線にさらされ、汗による蒸れも起きやすいことから、少しの頭皮環境の変化によって、かゆみ症状が生じることもあります。

皮膚の病気が原因でかゆみが起きる場合もあります。例えば、「頭皮が乾燥している」「何かしらのアレルギー反応が起きている」「細菌感染による炎症が生じている」という場合でも、最初は頭皮のかゆみとして身体に異常が現れることもあります。

頭皮がかゆい!考えられる皮膚トラブル

頭皮に異物が付着していたり、虫に刺されたりしたわけではないのに、かゆみ症状がある時は頭皮に何らかの皮膚トラブルが起きている可能性があります。

頭皮の乾燥(ドライスキン)

健康な状態の頭皮は、角質層と皮脂膜からなる「皮膚のバリア機能」によって守られ、適度な水分で潤っています。しかし、加齢によって皮脂の分泌が徐々に減ってきたり、洗浄力の強いシャンプーでゴシゴシと洗髪しすぎて皮脂膜を洗い流してしまったり、固いブラシやタオルで頭皮を擦りすぎて角質層に傷をつけたりするなどの間違ったヘアケアを繰り返していると、バリア機能が低下します。バリア機能が低下した頭皮からは水分が抜け出すことで頭皮は本来の潤いを失い、乾燥します。

頭皮の乾燥が進むと、かゆみを伝える神経が表皮近くまで伸びてくるようになり、かゆみに敏感になるため、少しの外的刺激に対してもかゆみを感じやすくなります。かゆいからといって、かゆみに任せて頭皮を搔くと、それがまた新たな刺激になってかゆみが増すという悪循環に陥ります。

頭皮の湿疹(皮膚炎)

頭皮に湿疹(皮膚炎)による炎症がある場合も、強いかゆみを感じます。よくあるのは、「接触皮膚炎」という、いわゆる「かぶれ」による症状として現れるかゆみです。

接触皮膚炎とは、シャンプー・毛染め剤などに含まれる特定の成分や汗に含まれる塩分・アンモニアなどの刺激によって炎症が起きる病気のことです。特に、乾燥によって皮膚のバリア機能が低下していたりする時は、かぶれが起きやすくなります。

その他、花粉や特定のアレルギー物質に触れることによって、アレルギー反応が起き、皮膚炎が起きることもあります。もともとアトピー性皮膚炎を持つ人は、アトピーの皮膚症状として頭皮に炎症を伴うかゆみが出ることがあります。

脂漏性皮膚炎・脂漏性湿疹(しろうせいひふえん・しろうせいしっしん)

頭皮や髪の生え際などにやや黄色っぽい色調でベトベトした鱗状のフケが大量に出る病気です。マラセチア菌が原因と考えられています。

脂漏性皮膚炎は頭皮だけでなく、耳の後ろや小鼻、胸部、陰部など、皮脂の分泌が多い所に起こるもので、左右対称に症状が出る特徴があります。通常では強いかゆみはありませんが、炎症が悪化するとかゆみや匂い、頭皮の赤みが強く出ます。放置していると、脱毛が起きることもあるので注意が必要です。

湿疹と脂漏性皮膚炎の見分け方

湿疹と脂漏性皮膚炎は、いずれも頭皮に起こりうる皮膚トラブルであり、赤みやかゆみなど、共通した症状があります。自分の頭皮のかゆみが湿疹によるものか脂漏性皮膚炎によるものなのかを見分けるための一つのポイントは、ベトベトと湿り気のあるフケが出るかどうかです。

頭皮から黄色っぽくベトッとしていて脂っぽいフケが大量に出ている場合は、脂漏性皮膚炎である可能性があります。一方、湿疹は、赤みや強いかゆみ、ブツブツなどの症状が中心 で乾燥した白いフケを伴うことがありますが、脂っぽいフケが大量に出ることはないと考えてよいでしょう。

頭皮のかゆみの治療法

頭皮のかゆみの治療法は原因となる疾患によって異なります。自己判断で誤った治療をすると、症状が悪化することがあるので注意しましょう。

頭皮の皮膚トラブルは、人によって症状の程度に違いがあり、典型的な症状がみられないケースもあります。自分の頭皮のかゆみが乾燥によるものなのか、湿疹によるものなのか判断できない場合は、皮膚科を受診して医師に相談しましょう。

頭皮の乾燥

頭皮の乾燥はたいてい洗いすぎ、擦りすぎが原因です。洗浄力の強いシャンプーの使用を避ける、ゴシゴシと頭皮をこする洗い方をやめるなど、正しいヘアケアを行うことで自然に頭皮の環境が整い、乾燥によるかゆみ症状は自然に治まります。

頭皮の湿疹(皮膚炎)

湿疹の原因がシャンプーや毛染め剤などのかぶれであることが明らかな場合は、まず原因となる製品や成分の使用をやめましょう。すでにできてしまった頭皮の湿疹に対しては、炎症をおさえる治療が必要です。湿疹のある部分にローションタイプのステロイド外用剤を塗って、かゆみの元である炎症を抑えましょう。

ただし、ステロイド外用剤を5~6日使用しても症状が改善しない、または悪化している場合は使用を中止し、医療機関を受診しましょう。また、もともとアトピー性皮膚炎を持つ人に頭皮湿疹が出た場合は皮膚科専門医 の指導のもと、症状をコントロールすることが大切です。

脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎に適応のある市販薬はなく、自然治癒も難しいため、医療機関での治療が必要です。医療機関では、一般的にステロイド外用剤を使って炎症をおさえる治療を行います。症状によってはカビの繁殖をおさえる抗真菌外用剤を併用することもあります。

頭皮のかゆみを予防しよう。正しいケア方法

頭皮のかゆみを予防するためには、まず正しいヘアケア習慣を身につけることが大切です。

よくある間違いとしては頭皮を清潔にしようと意識しすぎるあまり、

  • 洗浄力の強いシャンプー剤を使う
  • ゴシゴシと強く頭皮をこする

など、頭皮を傷つけて乾燥させてしまうヘアケア習慣です。

頭皮が乾燥すると、それが刺激となってかゆみが生じるほか、バリア機能が損なわれるため、かぶれなどの皮膚トラブルが発生するリスクが高まります。

正しいシャンプーの手順は以下の通りです。

  1. 適度な洗浄力のあるシャンプーを選ぶ
  2. あらかじめ手でよく泡立ててから泡でやさしく包むように洗う
  3. すすぎ残しがあるとかぶれを起こしやすいため、洗い残しのないようにすすぐ
  4. 洗髪後はタオルで水気をとって、すぐに乾かす

頭皮を濡れたまま長時間放置していると雑菌が繁殖したりするため、フケやかゆみの原因になります。洗髪後はなるべく早く乾かしましょう。

また、特定のシャンプーや整髪料、パーマ剤、毛染め剤などの使用が原因で頭皮のトラブルが起こることもあります。頭皮にかゆみやフケなどが出やすい人はできるだけ刺激の少ないものを選び、頭皮の状態を観察しながら使用しましょう。

その他にも、紫外線から頭皮を守ることも大切です。紫外線を必要以上に浴びると、頭皮の乾燥や炎症を引き起こし、かゆみの原因になります。日差しの強い季節には帽子や日傘などを活用し、紫外線から頭皮を守りましょう。

監修

天下茶屋あみ皮フ科クリニック 院長

山田貴博 先生

2010年名古屋市立大学医学部卒。NTT西日本大阪病院(現・第二大阪警察病院)にて初期臨床研修後、大阪大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学講座助教として基礎医学研究に従事。阪南中央病院皮膚科勤務を経て、2017年天下茶屋あみ皮フ科クリニック開院。

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