『二の腕にブツブツ』ができた時の対処法は?考えられる疾患と治療法


子どもの頃から思春期にかけて、二の腕のブツブツに悩んだ経験はないでしょうか。薄い茶褐色のブツブツができて、見た目やザラザラとしたサメ肌のような質感が気になったという人もいるかもしれません。今回は二の腕のブツブツの原因、考えられる病気、対処法を解説します。

二の腕にできたブツブツは「毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)」かも?

二の腕にできたブツブツは毛孔性苔癬という皮膚の病気である可能性があります。毛孔性苔癬は、皮膚の毛穴に一致して、粟粒大(ぞくりゅうだい)のブツブツ(皮疹)ができます。ブツブツは薄い茶褐色をしていてやや硬く、患部に触るとサメ肌やおろし金のようにザラザラしているのが特徴です。二の腕や太もも、おしりなどで、たいてい左右対称に症状が出ます。

このブツブツは、毛穴の中にある毛包の細胞が変化して、異常に厚く・硬くなった(角化:かくか)ものです。「毛孔性角化症(もうこうせいかくかしょう)」とも呼ばれます。赤みやかゆみなどの自覚症状はほとんどありません。

5~6才頃に発症し、思春期を迎える頃に最も症状が目立ちます。加齢とともに症状が軽くなり、中年以降には目立たなくなるのが一般的です。軽い症状を含めると、10代のおよそ30~40%が毛孔性苔癬を発症するといわれています。また、感染性はなく、ほかの人にうつることはありません。

毛孔性苔癬以外にも考えられる皮膚疾患

腕にできるブツブツの中には毛孔性苔癬ではなく、別の皮膚疾患が原因である可能性もあります。しかし、見た目が異なるので、毛孔性苔癬と間違われることはほとんどありません。

毛嚢炎・毛包炎(もうのうえん・もうほうえん)

細菌感染症の一つです。皮膚にできた傷を介して、毛穴にある毛根を包む部分(毛包)に、黄色ブドウ球菌などの細菌が入り込んで繁殖し、炎症が起きます。毛穴の中央部分に、白~黄色の膿を含んだ盛り上がりができ、周囲の皮膚には炎症による赤みやかゆみ、痛みがあります。全身、毛の生えるところであればどこにでもできる可能性があり、特にムダ毛処理や髭剃りをした部位などによく見られますが、二の腕に多発することはほとんどありません。

マラセチア毛包炎

毛嚢炎(毛包炎)の中でも、マラセチアという真菌(カビ)の一種を原因とする皮膚疾患です。胸や背中の上部といったニキビができやすい部位を中心に、毛穴に一致して、黄色~赤いブツブツが現れます。ただし、マラセチア毛包炎が二の腕に多発することはほとんどありません。

アミロイド苔癬(たいせん)

「アミロイド」と呼ばれる繊維状のタンパク質が表皮の下に蓄積することにより、足のすねや前腕部、背中などに数mm程度の褐色のブツブツが現れます。患部はやや暗褐色になり、激しいかゆみを伴ってザラザラした状態になります。湿疹やアトピー性皮膚炎の人で慢性的に皮膚を掻いていると、掻いていた部位がアミロイド苔癬になることがあります。

二の腕にブツブツができた時の治療法

二の腕にブツブツができた時の治療法は疾患ごとに異なります。それぞれの治療法について確認しましょう。

毛孔性苔癬

毛孔性苔癬はそれ自体に害はなく、たいてい思春期を過ぎると徐々に目立たなくなります。そのため、基本的には積極的な治療は行わず、自然に治るのを待つことが一般的です。どうしても気になる場合は、皮膚科専門医に相談しましょう。

毛嚢炎・毛包炎

軽度であれば、皮膚を清潔に保つように心がけることでたいてい自然に軽快します。しかし、赤みや痛みなどの症状が気になる場合は、抗菌成分を含んだ市販の外用剤を塗って治療します。

毛嚢炎がたくさんできている時や、市販のOTC医薬品を使用してもなかなか症状が治まらない・悪化している時は皮膚科を受診しましょう。皮膚科では、毛嚢炎の原因菌に合った抗菌薬の外用や内服治療を行います。すでに毛嚢炎が悪化し、皮膚の深いところに膿が溜まってはれあがる「せつ」や「よう」といった状態に進行している場合は外科的に切開して膿を排出することもあります。

毛嚢炎のブツブツが気になるからといって、患部に触ったり、潰したりすると炎症が広がって化膿したり、色素沈着や皮膚の凹凸などの痕が残ってしまうこともあります。患部を刺激することはやめましょう。

マラセチア毛包炎

マラセチアという真菌(カビ)に感染して起こるマラセチア毛包炎の場合は、抗真菌薬による治療が必要です。よくならない場合は、医療機関を受診しましょう。

アミロイド苔癬

アミロイド苔癬に適用のある市販薬はないため、皮膚科で治療を行います。皮膚科では、ステロイド外用剤による治療が基本になります。完治までには時間もかかるため、医師の指導のもと、治療を続けることが大切です。

気になる二の腕のブツブツ。生活習慣で気をつけること

二の腕のブツブツは気になりますが、指で潰したり、硬いボディタオルで削ろうとしたりすると、皮膚を傷つけ、痕が残ったり、細菌感染のリスクが高まったりするため避けましょう。

日常生活におけるスキンケアも見直しましょう。皮膚を清潔に保つことは大切ですが、洗いすぎは逆効果です。

  • 入浴時にゴシゴシと強くこすって身体を洗う
  • ボディスクラブ剤で洗う

上記のような習慣がある人は皮膚を傷つけることになり、毛孔性苔癬が悪化します。つまりブツブツなどの皮膚トラブルが起きやすい状態になっているので、洗い方を改めましょう。

正しい身体の洗い方

  1. 入浴時は適度な洗浄力のボディソープを使う
  2. あらかじめボディソープをよく泡立ててから、泡で包むように身体を洗う
  3. タオルドライもやさしく行う

なるべく皮膚に負担をかけないように洗いましょう。また、皮膚が乾燥すると、毛孔性苔癬の症状が悪化する傾向があります。入浴後や乾燥が気になるタイミングに保湿剤を塗るなど、保湿ケアも習慣づけましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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