『毛孔性苔癬』の症状・治療法

毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)とは

  • 毛孔性苔癬とは、皮膚の毛穴に一致した粟粒大のブツブツ「皮疹(ひしん)」がたくさんできる皮膚の病気です。
  • 患部にさわると、サメ肌やおろし金のようにザラザラしており、乾燥しているのが特徴です。
  • ブツブツは毛穴の中にある毛包の細胞が変化し、異常に厚く・堅くなる「角化(かくか)」によって発生します。
  • “毛孔性角化症(もうこうせいかくかしょう)”と呼ぶこともあります。
  • 赤みやかゆみなどの自覚症状はほとんどありません。
  • 発症しやすい部位は、二の腕の外側や太ももの前面などで、左右対称に出現する特徴があります。
  • 毛孔性苔癬は、軽症のケースも含めると10代の約30~40%に見られ、比較的ありふれた皮膚疾患です。
  • 大人になると自然に軽快し、中年以降はほとんど目立たなくなります。
  • 遺伝する傾向があることが分かっています。
  • 感染性はなく、他の人にうつることはありません。

毛孔性苔癬の原因

  • 毛孔性苔癬は、毛穴の奥深くにあり、毛根を包んでいる皮膚組織である毛包(もうほう)の細胞が異常な早さで角化することによって起こります。
  • 角化とは、表皮の最も奥にある「基底細胞(きていさいぼう)」が細胞分裂によって「角化細胞」へと変化し、成熟しながら皮膚表面に押し上げられ、角質層を形成するプロセスのことです。
  • 通常、形成した角質層は最終的には垢やフケとなって皮膚から剥がれ落ちます。しかし、毛孔性苔癬の場合は、毛包内の細胞の角化が異常なスピードで進むために、古い角質が角栓(角質のかたまり)になって毛穴に詰まり、堅いブツブツとして皮膚表面に残ります。
  • 発症の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的な要因が関係していると言われています。
  • 家族に毛孔性苔癬を発症したことがある人のほか、肥満体型の人も発症しやすいと考えられています。
  • もともと乾燥肌・敏感肌の人、アトピー性皮膚炎の人も発症しやすいという報告があります。

毛孔性苔癬の症状

  • 二の腕の外側や太ももの前面などを中心に、皮膚の毛穴に一致して、粟粒大のブツブツがたくさんでき、ブツブツの中心部には、古い角質が詰まってできる角栓が見えます。
  • 通常、左右対称に症状が出るのが特徴です。
  • 赤みやかゆみなどの炎症を伴わないため、自覚症状はほとんどありませんが、患部はサメ肌やおろし金のようにザラザラとした質感になるのが特徴です。
  • 秋冬など乾燥しがちな季節は悪化しやすく、乾燥によるかゆみを伴うことがあります。
  • ザラザラが気になって掻いたり、無理に削ったりすると、それが刺激になって色素沈着が起きることがあります。
  • 症状の多くは5~6才頃に出現しはじめ、思春期を迎える頃にピークになります。

毛孔性苔癬に似た症状が見られる疾患 

ニキビ(尋常性ざ瘡:じんじょうせいざそう)

ニキビの症例画像

ニキビの症例画像

ニキビの症例画像

ニキビの症例画像


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思春期に多くみられるありふれた皮膚疾患のひとつ。皮脂の分泌過多と毛穴の詰まりによって、毛穴に皮脂が溜まり、その中でアクネ菌が増殖することで炎症をおこしてブツブツができます。ブツブツは、はじめは白っぽくなり、悪化すると芯のある赤いブツブツや膿の溜まったブツブツになります。

マラセチア毛包炎(もうほうえん)

皮膚に常在しているマラセチアというカビ(真菌)の一種が、毛包内で異常繁殖することで、皮膚に炎症が起きる病気です。胸や背中、首の後ろなど汗をかきやすい部位を中心に、毛穴に一致して、かゆみを伴う赤いブツブツがたくさんできます。発症する場所が毛孔性苔癬とは異なります。

アミロイド苔癬(たいせん)

アミロイドという繊維状のタンパク質が皮膚の内部に蓄積することによって、足の脛や前腕部、背中などに数mm程度のブツブツがたくさんできます。患部の皮膚はやや暗褐色になり、かゆみを伴ってザラザラした状態になります。湿疹やアトピー性皮膚炎による慢性的な炎症をきっかけに、アミロイド苔癬に移行することがあります。もともと湿疹などがあって、搔き壊している場所に生じるので、毛孔性苔癬と間違うことはありません。

雀卵斑(じゃくらんはん)

遺伝的な要因によって、薄茶色~褐色の米粒大の小さな斑点が散らばるようにたくさん発生します。かゆみや痛み、皮膚の凹凸は伴わず、色調変化が主体です。いわゆる“そばかす”と呼ばれるもので、顔の他、腕や肩、背中などにもあらわれることがあります。幼児期から発生し、思春期ごろにピークを迎えます。紫外線を浴びると濃くなるため、よく日に当たる部位や春~夏場にかけて症状が目立つことがあります。いわゆるそばかすなので毛孔性苔癬と間違うことはありません。

毛孔性苔癬の治療法

  • 毛孔性苔癬の症状は思春期頃にピークを迎えますが、加齢とともに軽快し、中年以降には自然に治ることがほとんどです。そのため、基本的に特別な治療は必要ありません。
  • 症状が気になる場合は、医師に相談しましょう。医療機関では主に外用剤を用いて対症療法を行います。サリチル酸、尿素などを含む塗り薬を塗って、堅くなった角質を軟化させ、皮膚のザラザラした質感を軽減します。

生活習慣で気をつけるポイント

  • 毛孔性苔癬のブツブツをつぶそうとしたり、硬いボディタオルで無理に削ろうとしたりすると、皮膚を傷つけ、痕が残ったり、細菌感染のリスクが高まったりするのでやめましょう。
  • ボディスクラブやカミソリを使用すると、炎症や色素沈着の原因になるため、避けてください。
  • 患部を清潔にすることは大切ですが、洗いすぎやこすりすぎは良くありません。適度な洗浄力のボディソープを良く泡立て、泡でやさしく包むように洗いましょう。
  • 皮膚が乾燥すると、毛孔性苔癬の症状が悪化する傾向があります。入浴後や乾燥が気になるタイミングに、こまめに保湿剤を塗るなど、保湿ケアを習慣づけましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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