誰しもが一度は経験したことのある「やけど」。やけどをすると、数時間から半日ほど経ってから患部にぷくっとした水ぶくれができることがあります。水ぶくれができてしまった時はどのように対処すればよいのでしょうか。やけどによる水ぶくれができた時の対処法や治療法を解説します。
やけどをするとなぜ水ぶくれができるの?
やけどとは熱に一定時間以上触れることによって起こる皮膚の損傷であり、日常的に最も遭遇しやすいケガの一つです。医学用語では「熱傷(ねっしょう)」といいます。軽いやけどであれば皮膚が2~4日ほど赤くなるだけで自然に治る場合もあります。しかし、ひどいやけどの場合は赤みや痛みのあとに、水ぶくれ(水疱:すいほう)ができることがあります。
水ぶくれとは、傷ついた皮膚の細胞から染み出た液体(血液のうち、赤血球を除くタンパク質や水分などが混じった透明の液体)が表皮内やその直下に溜まっている状態をいいます。
やけどの症状
やけどによる症状は皮膚の組織がどの深さまでダメージを受けたかによって異なり、ダメージの浅いものから、Ⅰ度熱傷、Ⅱ度熱傷、Ⅲ度熱傷の3つに分けられます。
熱傷(Ⅰ度)の症例画像
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Ⅰ度熱傷
皮膚の浅層にある表皮だけがダメージを受けた軽度のやけどで、患部の赤みが主な症状です。たいてい2~4日程度で自然に治り、水ぶくれはできません。
Ⅱ度熱傷
熱によるダメージが真皮層にまで達したやけどで、赤み、ヒリヒリ感、痛みなどの症状のあと、水ぶくれができます。Ⅱ度熱傷はダメージの深さによって、浅達性Ⅱ度熱傷と、深達性Ⅱ度熱傷に分けられます。
- 浅達性Ⅱ度熱傷…真皮の表層までダメージが達したやけどで、強い赤みと痛みがあり、水ぶくれができます。適切な治療を受けると、たいてい1~2週間程度で痕を残さずに治ります。
- 深達性Ⅱ度熱傷…真皮の深層までダメージが達したやけどで、患部の一部が壊死し、白っぽい色調に変化します。痛みは軽度のこともありますが、治癒に時間がかかります。適切な治療を行っても、ひきつれや傷痕などの後遺症が残ります。
Ⅲ度熱傷
皮膚の表層から皮下組織まで(血管、神経を含む)が損傷したやけどです。高温の熱源に長時間触れた場合に起こります。患部は白っぽくなり、痛覚も失います。手術を要し、入院が必要になることもあります。適切な治療を行っても、瘢痕が残ります。
分類 | 症状 | ダメージの深さ | 治癒にかかる期間 |
Ⅰ度熱傷 | 患部の赤み、ヒリヒリ感 | 表皮まで | 2~4日 |
浅達性Ⅱ度熱傷(浅いもの) | 患部の赤み、ヒリヒリ感、強い痛み、はれ、水ぶくれができる | 真皮表層まで | 1~2週間 |
深達性Ⅱ度熱傷(深いもの) | 患部の赤みあるいは白色化、強い痛み、はれ、水ぶくれができる | 真皮深層(皮下組織のすぐ上)まで | 3週間~1カ月程度 |
Ⅲ度熱傷 | 患部が白く、硬くなる | 皮下組織まで | 長期間 |
やけどの水ぶくれは潰してもいい?
やけどの水ぶくれは自分で潰してはいけません。水ぶくれがあることで細菌の侵入を防いでいるため、潰さないように注意しましょう。
水ぶくれを潰すと、ジュクジュクした傷になり、強い痛みを感じるだけでなく、乾燥の刺激によってやけどの症状が進行することがあります。さらに、水ぶくれが潰れたところから細菌が侵入し、細菌感染を引き起こすリスクが高くなります。水ぶくれができた場合はできるだけ早く皮膚科や形成外科を受診しましょう。
やけどの応急処置
やけどをしたら、早く患部を冷やすことが重要です。患部を冷やす時はヒリヒリとする痛みが落ち着くまで、20分以上流水をかけましょう。服の上からやけどをした時は慌てて脱ごうとはせず、服を着たまま冷水をかけて冷やします。しかし、氷や保冷剤を押し付けて冷やすと凍傷になることもあるため、注意が必要です。
患部が赤くなるだけのⅠ度熱傷であれば、やけど用の市販の薬を塗って自分で治療することもできます。ただし、やけどの深さは自分で判断することが難しいため、判断に迷ったら医療機関を受診して医師に相談しましょう。また、身体の広範囲にやけどをした場合はやけどの程度に関わらず、すぐに医療機関を受診してください。
やけどで水ぶくれができた時の対処法
やけどによる水ぶくれは、たいていやけどをしてから数時間~半日ほどしてから出現します。やけど直後に水ぶくれができなかったとしても、半日程度は注意深く患部を観察しましょう。
水ぶくれができた場合は自分で治療することはできません。水ぶくれを潰さないように絆創膏やガーゼで保護し、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。しかし、水ぶくれは薄く引き伸ばされた表皮で包まれているため、破れやすくなっています。衣服の着脱や運動時・睡眠時にうっかり破れてしまったり、中の液体が多すぎる場合は圧力で破れてしまったりすることもあります。万が一破れてしまった場合は表皮をはがさず、ガーゼやタオルで患部を覆って、すみやかに医師の治療を受けましょう。
医療機関ではやけどの深さを診断し、症状に応じた治療を行います。水ぶくれの大きさや場所によっては医師の判断で水ぶくれを取り除いてから、外用剤や被覆材(傷を覆うシート)で治療を行います。痕を残さずきれいに治すためにもできるだけ早く適切な治療を受けましょう。
監修
帝京大学医学部皮膚科 名誉教授
渡辺晋一先生
1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。