『口角炎・口唇炎』の症状、原因、治療・予防法

口角炎・口唇炎とは

  • 「口角炎(こうかくえん)」と「口唇炎(こうしんえん)」は、どちらも唇に現れる炎症を主体とした病気のことです。
  • 唇の中でも、口角(唇の左右の両端)の部分だけに症状があるものを口角炎、唇全体に症状があるものを口唇炎と呼びます。
  • 口角炎とは、口角の部分に亀裂が入ったり、炎症が起きて痛みや腫れが発生したりします。
  • 口唇炎とは、唇の一部または全体に、炎症を伴う湿疹や亀裂などが発生します。
  • 口角炎と口唇炎は併発することもあります。

口角炎・口唇炎の症状

口角炎の症状

  • 口角炎は口角の部分に亀裂が入り、炎症が起きて強い痛みや腫れなどの症状が現れることがあります。亀裂の部分にはかさぶたができますが、口を開け閉めするたびに、ぱっくりと傷が開いて亀裂やひび割れを繰り返すようになります。
  • 口角炎になると亀裂の部分がジュクジュクした傷になったり、乾燥して皮がめくれたりするなどの症状が出ます。

口唇炎の症状

  • 口唇炎は唇の一部や全体に炎症、亀裂、ブツブツ、ただれなどの症状が出ます。
  • 唇全体が乾燥してカサカサし、亀裂部分から出血したり、皮がめくれたりします。乾燥によるヒリヒリ感やかゆみを伴うこともあります。

口角炎に似た症状の疾患

口内炎

口の中の粘膜に起こる炎症のことです。口内炎にはいくつかの種類があり、免疫低下が原因で起こる「アフタ性口内炎」、ウイルス感染によって起こる「ヘルペス性口内炎」「カンジタ性口内炎」、外傷が原因で起こる「外傷性口内炎」などがあります。

口唇ヘルペス

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)によって起きる感染症で、唇の粘膜やそのまわりの皮膚に痛みを伴う「水疱(すいほう:水ぶくれ)」や「ただれ(びらん)」などの症状が現れます。単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると完全に除去することはできません。症状が軽快した後も、ヘルペスウイルスは神経の奥深くに潜伏します。その後、ストレスなどによって免疫力が低下するとウイルスが活性化し、容易に再発します。初感染では比較的症状が強くでることが多いですが、再発の場合は症状が軽く出るのが一般的です。

口角炎・口唇炎の原因

  • 口角炎や口唇炎の主な原因は空気の乾燥、唇を舐める癖、化粧品・洗顔料による刺激などがあります。
  • ビタミンB2・B6の欠乏によって口角炎が起こりやすくなるという報告があります。
  • 口角炎の中には、カンジダ菌という真菌(カビ)の一部が原因で発症するタイプの口角炎もあります。
  • 金属アレルギーやアトピー性皮膚炎、内臓疾患の影響により、口角炎や口唇炎を発症することもあります。

口角炎・口唇炎の治療法

  • 口角炎や口唇炎は、市販のOTC医薬品を使って治療することもできます。口角炎や口唇炎に対する市販薬として、抗炎症成分・ビタミン成分などが配合された塗り薬や、ビタミン成分などを配合した飲み薬といったOTC医薬品があります。まずは市販のOTC医薬品を使って治療しましょう。
  • 口角炎や口唇炎には、唇の乾燥が伴います。悪化させないためには、OTC医薬品によるケアと同時に保湿ケアを並行して行い、乾燥を防ぐことが大切です。ワセリンやリップクリームなど、保湿力の高い保湿剤をこまめに塗って唇を乾燥から守りましょう。また、洗顔後や歯磨きの後、食事の後など、唇の乾燥が気になるタイミングで、こまめに保湿ケアをする習慣を身につけましょう。
  • 痛みが強い、OTC医薬品によるセルフケアを1週間行っても症状が続いているといった場合は皮膚科を受診し、医師に相談しましょう。
  • 医療機関では、症状の程度に応じて、保湿剤やステロイド外用剤による外用治療、ビタミンB2・B6製剤の内服治療を行います。
  • 医療機関での検査の結果、カンジタへの感染が疑われる場合には、抗真菌薬による治療を行います。

口角炎・口唇炎の予防法

口角炎や口唇炎は、日々の生活習慣の見直しが予防に役立つ場合があります。口角炎や口唇炎にならないために、気をつけるべきポイントを解説します。

口まわりを清潔に保つ

口のまわりで雑菌が繁殖するのを防ぐため、常に清潔に保つようにしましょう。ただし、唇の表面は薄く、刺激に弱いため、洗浄力の強い洗顔料を使用したり、強くこすったりすると負担がかかり、皮膚トラブルの原因になるので注意してください。また、指で唇を頻繁に触ったり、舌なめずりをしたりするのはやめましょう。唇に唾液をつけると、一瞬潤ったように感じますが、すぐに蒸発して唇の乾燥を助長します。唾液には消化酵素が含まれており、皮膚にとって刺激になるため、唾液で唇をぬらす行為は避けましょう。

保湿ケアをする

唇を乾燥から守るため、こまめにワセリンやリップクリームなどを塗って、保湿をしましょう。保湿ケアは外気が乾燥する秋冬だけでなく、春夏も続けることが大切です。紫外線が多い春から夏にかけては、紫外線のダメージから唇の乾燥が進むこともあるので、直射日光を避けるとともにUVカットのあるリップクリームを活用しケアするとよいでしょう。

食事習慣を整える

規則正しい食習慣を身につけ、身体の内から皮膚の調子を整えましょう。特に、ビタミンB2・B6は健康的な唇を維持するのに重要な栄養素です。ビタミンB2が豊富な緑黄色野菜、レバー類、チーズ、ビタミンB6が豊富な赤身魚、豚肉、鶏肉などを日々の食事に積極的に取り入れましょう。

睡眠習慣を整える

睡眠不足は全身の健康状態に影響を及ぼすだけでなく、ホルモンの分泌や皮脂の分泌のバランスを乱し、乾燥などの皮膚トラブルを引き起こすきっかけになるといわれています。質のよい睡眠をとって、皮膚が本来持つ回復力を高めましょう。

ストレスを溜めない

過度なストレスは、ホルモンの分泌や皮脂のバランスを乱す原因になります。また、人によっては、イライラすると唇を噛んだり、触る癖があったり、唇の皮をめくってしまったりなど、心の状態によって唇の皮膚トラブルを悪化させているケースもあります。疲れを感じたら早めに休む、運動や趣味の活動などでリフレッシュする時間を意識的に作るといった工夫をして、ストレスを溜めないようにしましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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