『乳児湿疹』とは?原因・症状・治療法やアトピーとの違いを解説


赤ちゃんの肌は、みずみずしく、すべすべしているイメージですが、顔面や頭部を中心に、ブツブツなどの湿疹が現れることがよくあります。新生児期から乳児期にかけて現れるこれらの湿疹は、「乳児湿疹」と呼びます。乳児湿疹の症状は、比較的広い範囲に出ることもあり、「このまま治らないのでは?」と心配する方もいるかもしれません。しかし、乳児湿疹の多くは一過性なもので、成長とともに自然に治ります。今回は、赤ちゃんによくある皮膚トラブルと、正しい対処法について解説します。

乳児湿疹とは

乳児湿疹とは、母乳やミルクを飲んでいる乳児の皮膚に現れる、赤いプツプツ・カサカサの湿疹などの皮膚トラブルの総称です。乳児湿疹は、食べ物や繊維の刺激に触れやすい、口の周り・顎の周りを中心とした顔面をはじめ、皮脂の分泌が盛んな頭部、蒸れて汗がたまりやすい首回り、手首、足首などにも現れます。

乳児湿疹でみられる主な皮膚トラブルには、次のようなものがあります。

  • 新生児中毒性紅斑(しんせいじちゅうどくせいこうはん)
  • アトピー性皮膚炎
  • 乳児脂漏性湿疹(にゅうじしろうせいしっしん)、新生児脂漏性湿疹(しんせいじしろうせいしっしん)など

乳児湿疹の原因・治療法

新生児中毒性紅斑

生後数日間に、胸や背中などに赤い斑点やブツブツ、小さな水ぶくれなどができる新生児特有の皮膚トラブルです。新生児中毒性紅斑の原因は不明ですが、胎内環境から胎外環境への急激な変化に適応する過程で起きる、生理的な変化だと考えられています。2週間ほどで自然に治るのが特徴です。

乳児脂漏性湿疹(新生児脂漏性湿疹)

生後2~4 週以降の赤ちゃんに多い皮膚トラブルの一つです。皮脂の分泌が盛んな頭部、額などに、黄みがかったかさぶたができて、湿り気のあるフケがたくさん出ます。乳児脂漏性湿疹は、患部をよく洗って清潔に保つことで、生後8~12 か月ごろまでには自然に治ります。基本的には積極的な治療は不要ですが、赤みやかゆみなどの炎症を伴う場合、症状が長引いている場合は外用薬による治療が必要です。

アトピー性皮膚炎

乳児脂漏性皮膚炎と似ているため乳児脂漏性皮膚炎と区別することは難しいです。ただしアトピー性皮膚炎では頭や顔以外の部位にも湿疹病変がみられることが多いです。さらに乳児脂漏性皮膚炎と異なるのは、再発を繰り返すことです。

乳児湿疹で病院に行く目安

乳児湿疹の多くは、積極的な治療をしなくても、成長とともに自然に治ることが多いです。ただし、乳児湿疹の症状が長引いている、かゆみ・赤みが出ているといった場合は、アトピー性皮膚炎の可能性もあります。

大人の場合は、市販のステロイド外用剤などでセルフケアをすることができますが、赤ちゃんや子どもの場合は、乳児湿疹の原因を特定することが難しく、アトピー性皮膚炎など他の病気が隠れていることがあるため、自己判断で市販薬を使用することはできません。「乳児湿疹かな?」と思ったら、まずは医療機関を受診しましょう。

小児科や皮膚科では、赤ちゃんの皮膚トラブルの症状をみて、適切なケア方法や治療を指導します。患部に炎症が出ている場合は、医師の判断でステロイド外用剤やその他の塗り薬などが処方されることがあります。

乳児湿疹の予防・ケア方法

乳児湿疹を予防したり、症状を改善させたりするためには、正しくスキンケアを行うことが大切です。赤ちゃんの皮膚は乾燥しやすくてデリケートなため、清潔に保ち、保湿をして皮膚へのストレスを減らす工夫をしましょう。ただし、お風呂などで洗いすぎると、皮膚を傷めてしまいます。低刺激性の石鹸やシャンプーを良く泡立てて、泡で包むようにやさしく洗ってあげましょう。

乳児脂漏性湿疹が出ている部位は、黄色っぽいかさぶたのようなものが付着しています。無理にはがしたりせず、あらかじめオリーブオイルなどでなじませてから洗いましょう。洗い残しにも注意が必要です。残った洗浄成分が刺激となり、かぶれを起こしてしまう恐れがあるため、しっかりとすすぎましょう。

入浴後は、清潔なタオルでやさしく水分をふき取り、保湿ケアを行います。すでにかさつきやブツブツなどが出ている部位には、ワセリンなどの低刺激性で保護作用のある保湿剤を選びましょう。また、赤ちゃんの肌に直接触れる衣服や寝具なども、皮膚に負担の少ない綿素材などを選びましょう。衣服のタグや縫い目、ボタンなどが擦れると、皮膚トラブルを誘発することがあるため、注意してください。

乳児脂漏性皮膚炎とアトピー性皮膚炎の違い

乳児脂漏性皮膚炎とアトピー性皮膚炎は乳児期には区別が難しいため、合わせて乳児湿疹と呼ばれます。アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹ができて、悪化と軽快を繰り返す慢性の皮膚の病気です。月齢が低い赤ちゃんの場合は、乳児脂漏性皮膚炎とは見分けが難しいため、ブツブツなどの皮膚症状が2か月以上繰り返しできるかどうかなどを医師が経過を見ながら乳児脂漏性皮膚炎かアトピー性皮膚炎か区別します。

アトピー性皮膚炎と診断された場合でも、専門医のもとで適切な治療を続ければ、症状の悪化を防ぎ、良い状態を保つことができます。湿疹が長引いたり、症状を何度も繰り返したりするなど、アトピー性皮膚炎の心配がある時は専門医を受診しましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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