ステロイド外用剤の「副作用」について。よくある誤解と正しい使い方

かぶれや虫刺されをはじめとする様々な炎症性皮膚疾患の治療薬として欠かすことのできないステロイド外用剤。60年以上という長きにわたって医療現場で広く使用されてきたステロイド外用剤は、いまやOTC医薬品として市販されており、私たちにとってとても身近な医薬品のひとつになっています。

ステロイド外用剤は、皮膚トラブルに伴う局所的な炎症反応をすみやかに抑えてくれる頼もしい薬です。しかし、その一方で「一度使うとやめられなくなる」、「体に蓄積する」、「骨が弱くなる」など、ステロイドによる副作用に関する誤った情報を聞いて「ステロイドは怖い薬」というイメージを漫然と持ってしまっている人がいます。

ステロイド外用剤は有効成分が局所にだけ作用し、全身への影響が少ないように合成された薬剤ですので、正しく使用する限り、重篤な副作用が起きることはまず考えられません。ステロイド外用剤に対する不安をなくし、上手に活用するためには、ステロイド外用剤の特性と起こり得る副作用について正しい知識を持つことが大切です。

副作用はなぜ起こるか

「ステロイド」とは、ヒトの副腎皮質という臓器で作られている抗炎症作用を持つステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)を基礎にして合成した薬効成分「合成副腎皮質ホルモン」の通称です。化学的に合成することにより、副腎皮質ホルモンが持っている抗炎症作用などの有益な作用を強化しています。ステロイドを主成分として配合したお薬を「ステロイド剤」と言います。ステロイド剤には、内服薬、外用剤、注射剤などがあり、目的や症状、重症度に合わせて使用します。

これらのステロイド剤のうち、炎症性皮膚疾患の治療で広く使用されているのが、患部に直接塗るタイプのステロイド外用剤です。ステロイド外用剤は、有効成分が局所にだけ作用し、皮膚の炎症をすみやかに抑え、かゆみや赤みなどのつらい症状を抑える働きがあります。しかしながら、どんな薬剤でも言えることですが、使い方によってはその薬効が諸刃の刃となり、望ましくない症状、つまり副作用があらわれることがあります。例えばステロイド外用剤を著しく長期間にわたって塗り続けるなど、本来の使い方の範疇を超えて使用すると、局所的な副作用が起こる可能性があります。

ステロイド外用剤の主な副作用

ステロイド外用剤によって起こる可能性のある主な副作用についてみてみましょう。まず、ステロイド外用剤による副作用は、「局所性の副作用」と「全身性の副作用」の2つに大別されます。

「局所性の副作用」とは、ステロイド外用剤を塗った部位にだけ副作用があらわれるものを言います。一方「全身性の副作用」とは、強力なステロイド外用剤を長期間にわたって広範囲に使用するなど、通常ではあり得ない使い方をすることによって、皮膚からステロイドが血中に吸収され、全身的な影響を及ぼす副作用のことです。

これらのうち、全身性副作用に関しては、ステロイド外用剤を適切に使用する限りは、通常起こり得ないもので、ステロイドの内服や注射などステロイドの全身投与を行った場合に見られます。そのためステロイド外用剤の使用にあたり、注意する必要があるのは、主に局所性の副作用です。ただし、ステロイド外用剤によって万が一局所性の副作用が出たとしても、一過的なものであり、使用を中止したり、適切な処置をすることで回復します。

ステロイド外用剤の主な作用は抗炎症作用ですが、その他にもステロイドホルモンの持つ血管収縮作用、細胞増殖抑制作用、免疫抑制作用などが複合的に働きかけることで、皮膚の炎症を抑制する力を発揮します。ステロイド外用剤による副作用は、このようなステロイドホルモンが持つ副次的な生理活性作用によって発生することがあります。

例えば、ステロイド外用剤には、炎症を引き起こす細胞の増殖を抑える働きがありますが、長期間使用していると、塗った部位の皮膚の細胞の増殖が抑えられ、皮膚が薄くなったり、血管が浮き出てみえるなどの副作用が出たりすることがあります。また、ステロイド外用剤のもつ免疫抑制作用によって、ごく稀にカンジダ症、ヘルペスなどの感染症が起こりやすくなることがあります。その他、ニキビが出やすくなります。

局所性副作用

ステロイド外用剤を長期にわたって連用した場合や、皮膚が薄くデリケートな部位に強いステロイドを使用し続けることによって、塗ったところに局所性の副作用が出ることがあります。

代表的なものとしては以下のような副作用が報告されています。

  • にきび(ステロイドざ瘡:ざそう)
  • 皮膚が薄くなる
  • 毛細血管が拡張して血管が浮き出てみえる
  • 酒さ様皮膚炎(しゅさようひふえん)
  • カンジダ症やヘルペスなどの感染症の誘発や悪化

 
ステロイド外用剤を正しく使用する分には、これらの局所性副作用があらわれることはほとんどありません。しかし、健康な皮膚に使用したり、症状がなくなった後にも長期的に使用し続けることで皮膚の細胞増殖が抑制され、皮膚がだんだんと薄くなり、赤みが出たり、血管が浮き出てみえるようになることがあります。また、同様にステロイド外用剤を長期間使い続けると、ステロイド成分の持つ免疫抑制作用によって、皮膚の抵抗力が低下し、ニキビができやすくなったり、カンジダ症や白癬などの感染症が起きやすくなったり、治りにくくなったりすることがあります。ただしステロイド外用剤の局所性副作用が一番多くみられるのは、ステロイドは怖いからと言って、症状を抑えることができない弱いステロイド外用剤を使用することにあります。弱いステロイド外用剤だと症状を充分抑えることができないため、ステロイドの外用が長期に及び局所性副作用が出るようになるからです。


全身性副作用

ステロイド剤によって以下のような全身性副作用が起こる可能性があります。

  • 副腎皮質機能の抑制…血中に合成副腎皮質ホルモンが過剰に存在することによって、副腎皮質がもともと持っている働きが弱まり、副腎皮質ホルモンが作られなくなる状態になります。
  • 骨粗しょう症…合成副腎皮質ホルモンによって骨密度が低下し、骨粗しょう症のような症状が起きます。
  • 糖尿病の誘発や憎悪など…合成副腎皮質ホルモンによって糖代謝が乱れ、糖尿病と同様の症状が起きます。

 

ただし、これらの全身性副作用は主に内服薬や注射剤など、体内への吸収率の高いステロイド剤を使用した場合に起こるもので、外用剤によって起こることはまず考えられません。ただし、極めて強いステロイド外用剤を大量に、かつ極めて長期にわたって使用を続けたような場合には、内服薬や注射剤と同じように、全身への影響が出る可能性があります。

ステロイド外用剤に対するよくある誤解

時折、ステロイド外用剤に対して、「ステロイドを使うと骨が弱くなる」、「糖尿病になってしまう」など、「ステロイドは怖い薬」というネガティブな印象を持っている人がいるようです。しかしこれらの全身性副作用に関する問題は、ステロイド剤を内服薬や注射剤などによって、長期間にわたり全身に投与した場合に生じるものです。また、「ステロイドは一度使うとやめられなくなる」、「体に蓄積する」といった誤解も見受けられますが、ステロイドホルモンの性質として依存性を生じたり、身体に蓄積したりといったことは科学的に起こり得ないので、心配する必要はありません。

ステロイド外用剤は、全身への影響を軽減し、皮膚局所へしっかり作用するように作られています。特に市販されているOTC医薬品のステロイド外用剤を使用する場合は、使用量や使用期間を守り、正しく使えば全身的副作用が問題となることはほぼないと言えるでしょう。誤った情報に惑わされて、治療の機会を逃さないためにも、ステロイド外用剤に関する正しい知識を身につけましょう。

ステロイド外用剤を正しく使うには

使う人に合ったステロイド外用剤を選びましょう

ステロイド外用剤には、作用がおだやかなものから、非常に強力なものまで様々な種類があり、医療用としては作用の強いものから「ストロンゲスト」、「ベリーストロング」、「ストロング」、「マイルド」、「ウィーク」の5つのランクの製剤が、そして市販のOTC医薬品としては、「ストロング」、「マイルド」、「ウィーク」の3つのランクの製剤があります。

医療機関でステロイド外用薬による治療を行う場合には、皮膚症状の程度をみてステロイドの強さを決めますが、さらに患者の年齢、使用部位などを加味して、ひとりひとりに合った強さのステロイドを選択されることが多いです。

一方、市販のOTC医薬品を使用し、セルフケアする場合は、使う人の年齢によって異なる皮膚のバリア機能に合わせて、大人には「ストロング」、幼児から小学生までの子どもには1ランク下の「マイルド」、2才未満の赤ちゃんにはさらに1ランク下の「ウィーク」を使用しましょう。使う人の年齢に合わないステロイド外用剤を使うと、充分な効果が得られなかったり、逆に作用が強すぎて、局所性副作用が起こりやすくなったりするので、注意してください。

ステロイド外用剤の正しい使い方

ステロイド外用剤は、適量を指に取り、擦り込まずにやさしく患部に塗りましょう。ステロイド外用剤の適量は、口径5mmのチューブから大人の人差し指の第一関節の長さに押し出した量(約0.5g)で、大人の手のひら約2枚分の範囲に塗るのが一般的な目安です。ただし日本でよく使われているステロイドのチューブは5gチューブのことが多く、大人の人差し指の第一関節の長さに押し出した量は0.25~0.3gです。この目安を基準に、実際の患部の広さに合わせて1回当たりの使用量を決めましょう。

ステロイド外用剤は、塗ったところにだけ効果を発揮する薬です。ステロイド外用剤は、患部だけに塗るようにし、健康な皮膚には塗らないようにしましょう。症状が出ていない部分に漫然と塗布したり、予防的に使用するなど、誤った目的で使い続けていると、局所性副作用が起きるリスクが高まります。

また、使用期間を守ることも大切です。市販のステロイド外用剤を使ってセルフケアする場合は、1週間以上続けて使用しないようにしましょう。特に陰部や首から上の部位は、皮膚が薄く、薬剤の影響を受けやすいため特に注意しましょう。5~6日使用しても症状が改善しない、または悪化しているときは、医療機関を受診しましょう。その他、手のひら2~3枚分を超える広範囲に症状が出ているときや、症状が長引いて慢性化しているときは、OTC医薬品での治療はできないため、医療機関を受診しましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』を執筆。

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