水いぼの症例画像
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水いぼの症状
- 「水いぼ」は、ウイルス性の皮膚感染症で医学的には「伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)」といいます。
- 丸くてツルッとした、あわ粒くらいのやわらかいブツブツができて、徐々に増えて広がります。通常、周囲の皮膚と同じ色かやや白っぽい色をしています。
- ブツブツの真ん中はえくぼのようにへこんでいるのが特徴です。ブツブツの内部には、伝染性軟属腫ウイルスと変性した表皮組織からなる白っぽい粥状物(モルスクム小体)が入っています。
- 水いぼは、腕や足、おなかまわり、首まわりにできます。水いぼを無理に潰したり、引っかいたりした手でほかの皮膚に触れると、ほかの部位に感染が広がります。
- かゆみや痛みはないことがほとんどです。
- たいてい数カ月で自然に治ることが多いと言われていますが、治らず数が増えて全身に広がることもあります。ブツブツの数が多い場合や見た目が気になる場合は、医療機関で水いぼを除去する処置もできます。ただし水いぼの除去には痛みを伴いますので、数が少ないうちに除去したほうが良いでしょう。
水いぼの原因
- 水いぼは、伝染性軟属腫ウイルスが原因で発症します。
- 伝染性軟属腫ウイルスの潜伏期間はおよそ14~50日です。感染力が強く、直接的な接触やタオルなどを介して伝染性軟属腫ウイルスが皮膚に付着し、毛穴や皮膚表面の小さな傷を介して皮内に侵入して感染を引き起こします。
- 伝染性軟属腫ウイルスは毛穴の中で増殖すると考えられており、毛穴があるところであれば全身どこでも発症する可能性があります。一方、毛穴のない手のひら、足の裏に水いぼができることはありません。
- 発症例のほとんどは、1~6才の乳幼児で、皮膚のバリア機能が未熟な乳幼児や、アトピー性皮膚炎の子どもに好発します。
- 成人の場合は稀に性感染症として、陰部を中心に水いぼを発症する例があります。
水いぼの治療法
- 水いぼは必ずしも治療が必要というわけではありません。たいてい数カ月で自然に消えてなくなるため、基本的には自然治癒を待ちます。
- ただし、水いぼの自然治癒にかかる期間は個人差があります。自然に治るのを待つ場合、経過観察中にいぼの数が増えてしまったり、ほかの子どもにうつしてしまったりするリスクがあるため注意しましょう。
- 短期間のうちに身体の広い範囲に次々と水いぼが広がっている場合、兄弟への感染が心配な時は、医療機関を受診し、医師に相談しましょう。
- 水いぼはかゆみなどの炎症を伴うことはありませんが、中には湿疹を併発してかゆみ症状が出ることがあります。そのようなケースでは、水いぼを掻き壊してしまい、手指を介して周囲の健康な皮膚にも水いぼが広がったり、ほかの子どもにうつしてしまったり、とびひなどの細菌感染症を誘発したりするリスクが高まるため、医療機関を受診しましょう。
- 医療機関では、医師の判断によって、水いぼを除去する処置をする場合もあります。
- 水いぼにステロイド外用剤を使用すると症状が悪化します。自己判断でステロイド外用剤を使用しないようにしましょう。
水いぼはうつる?
- 水いぼはウイルス性皮膚感染症のため、直接素肌が触れ合ったり、タオルを共有したりすることで、他人にうつることがあります。
- 水いぼに感染しやすいシチュエーションとしては、学校やスイミングスクールのプール活動があります。プールの水を介して水いぼに感染することはなく、あくまでも素肌同士の触れ合いや、ビート板・おもちゃなどの器具を共有することで感染が成立します。
- もともと湿疹が出ている子どもや乾燥肌の子ども、アトピー性皮膚炎の子どもの場合は、ウイルス・細菌などから皮膚を守る「バリア機能」が低下しているため、伝染性軟属腫ウイルスが皮膚層の中に侵入しやすく、水いぼへの感染リスクが高まります。
- 厚生労働省や日本皮膚科学会では、水いぼによる登園(登校)やプール活動を制限する必要はなく、タオルの共有を避けるよう指導しています。ほかの子どもへの感染が気になる場合は、水いぼの部分をラッシュガードや衣服で多い、素肌同士の接触がないようにし、水いぼから浸出液が出ている時は絆創膏で覆うなど周囲へ配慮しましょう。
水いぼの予防
- 水いぼを予防するには、日頃から乾燥肌や湿疹、アトピー性皮膚炎などによってダメージを受けた皮膚のバリア機能を正常化させることが大切です。
- ワセリンやクリームなどの保湿剤をこまめに塗って、皮膚の乾燥を防ぎましょう。
- プール活動の際は、プールに入れる塩素消毒の影響で皮脂が除去され、皮膚のバリア機能が一時的に低下してしまいます。プールから上がった後は、保湿剤で保湿ケアを行いましょう。
- 保育園や幼稚園などで集団生活をしている子どもの場合、子ども同士の接触を完全に防ぐことは困難です。しかし、子どもの皮膚のバリア機能を正常に保っていれば、伝染性軟属腫ウイルスに接触しても感染リスクを抑えることができるため、普段から保湿ケアを行うことが重要です。
監修
帝京大学医学部皮膚科 名誉教授
渡辺晋一先生
1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。