夏は、海や山のレジャー、河原でのバーベキューなどのアウトドアで遊ぶことが増えますが、つい日焼けしすぎて、酷い炎症を起こしてしまう方がいます。
「単なる日焼けだから、放っておくしかない」と思っていませんか?
そもそも日焼けは、「日光皮膚炎」という皮膚炎の一種。
症状のレベルによっては、ステロイド軟膏が役立ちます。
今回は、日焼けの症状のレベルに沿って、適切な治療法をお伝えします。
甘く見てはいけない日焼けの正体「日光皮膚炎」って?
日焼けと聞くと、「肌がほってったり、一時的に肌の色が赤や褐色に変化したりするものの、そのうち表皮が剥けて治る」程度のものをイメージする人もいるのではないでしょうか。
はじめはたいした日焼けじゃないと思っていても、強い紫外線を長時間浴びていると、皮ふが赤くなったりヒリヒリ痛むことも。
皮ふの炎症が酷い場合にはむくみや水ぶくれ、脱水、高熱、熱射病などを起こし、重症化することもあるので注意が必要です。
起きてしまった日光皮膚炎、どう対処したら良いの?
では、日光皮膚炎になってしまった場合には、どのような対処を行えばよいのでしょうか?
比較的軽度な日光皮膚炎の場合
【症状】
肌が赤みを帯びてほてり、ヒリヒリする
【対処法】
日焼け後の肌は紫外線によるダメージで皮ふのバリア機能が壊れてしまった状態です。
日焼けをした部分が熱っぽく、ヒリヒリと痛む時は、濡れタオルや氷水入りのビニール袋をタオルで包んだものを日焼けした箇所にあてて、しっかりと冷やしましょう。
中程度の日光皮膚炎の場合
【症状】
日焼けした箇所を冷やしても赤みやヒリヒリとした痛みが残る
【対処法】
日焼けした箇所を冷却した後も赤みや痛みが続く場合は、ステロイド軟膏を塗るとよいでしょう。
日焼けは炎症であるため、強い抗炎症作用を持つステロイド軟膏がオススメです。
ステロイド軟膏を使用する際は、決められた用法用量を守り、効果を得るためにも「適量」を塗付することが大切です。
「口径5mmのチューブから、大人の人差し指の先から第一関節まで押し出した量(約0.5g)を大人の手のひら2枚分くらいの広さに伸ばして塗る」 のが適量の目安です。
日焼けした患部の広さと比較して使用量を決めます。
※製品によって口径は様々です。5gチューブなど口径が小さい場合は多めに出すなど調整してください。
症状が改善しなかったり、逆に悪化してしまったりする場合は使用を中断し、医師による専門的な治療を受けるようにしてください。
重度の日光皮膚炎の場合
【症状】
日焼けした範囲が広い
水疱、発熱、倦怠感、頭痛、嘔吐などの症状がある
【対処法】
日焼けした箇所が広い場合や、皮ふの赤みや痛みに加え、水疱、発熱、倦怠感、頭痛、嘔吐などの症状を併発している場合は重症化しているため、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
受診するまでの間に自分で行える対処法としては、日焼けした部位の皮ふを冷やすことです。
小さな子どもの症状にはどう対処する?
子どもの場合であっても日光皮膚炎のそれぞれの症状に対する対処法は基本的に同じですが、ステロイド軟膏は薬の効き目によってランク分けされているので次のように年齢によって使い分けましょう。
- 赤ちゃん(2歳未満)…「ウィーク」
- 子ども(幼児〜小学生)…「マイルド」
- 大人(中学生以上)・高齢者(65歳以上)…「ストロング」
ドラッグストアでステロイド軟膏を購入する際は、薬剤師などに子どもの年齢や症状を伝え、適切なランクの薬を選ぶことで、小さな子どもでも安全に使用することができます。
日光皮膚炎ではなく「日光過敏症」の可能性も!
日光皮膚炎と間違いやすい皮膚炎に、「日光過敏症」というものがあります。
日光過敏症は、健康体の人にとっては問題が起きない程度の強さの日光でも、浴びた部分に赤みやぶつぶつが発生してしまうのが特徴。
また、抗菌薬、降圧薬、血糖降下薬といった薬の副作用でもまれにこうした症状が起こることがあります。
ぶつぶつができた場合は、かきむしる前にステロイド軟膏で対処すると良いでしょう。
「日光過敏症かも?」と思った時は医師に相談しましょう。
まとめ
紫外線は頭上から浴びるものというイメージを持つ人も多いかもしれませんが、実際は空中で散乱したり、地面からの照り返しがあったりと、四方八方から浴びているもの。日光皮膚炎を防ぐためには、まずはしっかりと日焼け対策をすることが大切です。
特に紫外線の強くなる5月〜8月にかけては、日焼け止めの使用はもちろん、日傘やつば広の帽子・サングラス・長袖の服・手袋などを身に付ける、日陰を歩くなどして紫外線から身を守りましょう。
それでも皮膚炎を起こしてしまった際は、決して放置せず、適切な処置を施すようにしましょう。
監修
帝京大学医学部皮膚科 名誉教授
渡辺晋一先生
1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。