酒さ様皮膚炎の症例画像
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酒さ様皮膚炎とは
- 「酒さ様皮膚炎」とは、顔面にステロイド外用剤を長期間使用することによって生じる局所性副作用の一つとされています。しかし、ステロイド外用剤をやめたからと言って、すぐよくなるわけではありませんので、その原因は充分解明されているわけではありません。欧米では「口囲皮膚炎」や「ステロイド誘発性皮膚炎」とよばれることが多いです。
酒さ様皮膚炎の原因
- ステロイド外用剤は、炎症を伴う皮膚疾患やアトピー性皮膚炎の治療には欠かせない薬であり、正しく使用する分には安全に作られています。しかし、定められた用法・用量を超えてステロイド外用剤を使い続けたり、美容目的など長期間にわたって不適切な使用を続けたりすることが原因で酒さ様皮膚炎になる場合があります。
- ステロイド外用剤の長期使用により、かならずしもすべての人が発症するわけではないので発症には体質やその他の要因が関与している可能性もあります。
- また日本では、顔にはステロイド外用剤ではなく、免疫抑制剤の一つであるタクロリムス軟膏を使うことを推奨されており、タクロリムスの長期使用が原因で発症する症例が増えています。
- 最近欧米では、酒皶様皮膚炎は毛穴に寄生する毛包虫(ニキビダニ)が発症に関与していると考えられており、ニキビダニに効果がある薬剤が使用されるようになっています。
酒さ様皮膚炎の症状
- ステロイド外用剤を長期塗布した部分の血管が拡張し、「酒さ」のような赤みが出現するとともに、ニキビのようなブツブツ(丘疹)や膿の溜まったブツブツ(膿疱)がたくさんできます。
- 患部は灼熱感やかゆみがあり、脂っぽくなります。次第に、鱗状の皮膚片がボロボロとはがれ落ちるようになります。
- 一見、酒さ様皮膚炎は酒さの症状に似ているように見えます。また顔全体に症状が及ぶこともあります。
- 口まわりに集中して症状が現れるものを「口囲皮膚炎(こういひふえん)」と呼ぶこともあります。
酒さとは
- 酒さと酒さ様皮膚炎は、別の病気です。
- 酒さとは、俗にいう「赤ら顔」と呼ばれるものです。何らかの原因によって毛細血管が広がり、鼻・顔の中心部、頬の中央部、顎・眉間などに左右対称の赤みが現れます。皮膚の赤みとともに、ニキビのような白い芯のあるブツブツができることもあります。
- たいてい顔のほてりやピリピリ感が先行します。アジア人よりも白色人にみられることが多いです。
- 飲酒や刺激物で発症するケースもありますが、原因不明のケースも多く、発症には体質が関係していると考えられています。
- 一度拡張した血管を元に戻すことは難しく、治療は困難ですが、日本人では稀な疾患です。
酒さ様皮膚炎の治療法
- 酒さ様皮膚炎はステロイド外用剤やタクロリムス軟膏の誤った使い方を止めれば、次第に治るとされていますが、洗顔や化粧といった生活習慣も原因になっていることが多いので、なかなか良くならないこともあります。
- 治療法は上記の外用剤の使用をやめて、経過を見ることになりますが、中止することで一時的に酒さ様皮膚炎の症状が悪化することがあります。その期間は個人差が大きく、2~6週間ほど続き、これまでより症状が強く出たり、顔や目がはれたりすることがありますので、医師の指導のもと、適切に治療することが大切です。
- 医師の判断により、内服治療やほかの外用剤による治療を行うこともあります。
- 欧米ではニキビダニに効果がある薬剤の内服や外用薬が治療に使用され、治療効果があることが報告されています。
酒さ様皮膚炎にならないために
- 酒さ様皮膚炎は、ステロイド外用剤やタクロリムス軟膏を治療薬としてではなく、スキンケア目的で、長期間にわたって塗り続ける場合に生じます。これらの治療薬は、定められた用法・用量を守って使用していれば酒さ様皮膚炎になることはほとんどありません。
- ステロイド外用剤やタクロリムス軟膏をスキンケア目的で使用することは厳に慎まなければなりません。
- ステロイド外用剤は、年齢や部位に合った強さのものを選んで正しく使用しましょう。
- ステロイド外用剤は湿疹などの症状に対し、患部にだけ塗りましょう。症状が出ていないにもかかわらず、周囲の健康な皮膚にまで塗り広げたり、予防のために塗ったりするなどの不適切な使用は避けましょう。
皮ふトラブル、正しく知ってしっかり治す。-...
1970.01.01
皮ふトラブル、正しく知ってしっかり治す。-ヒフノコトサイト|田辺三菱製薬株式会社
皮ふトラブル、正しく知ってしっかり治す。
監修
帝京大学医学部皮膚科 名誉教授
渡辺晋一先生
1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。