『脂漏性角化症(老人性イボ)』の症状・原因・治療法

脂漏性角化症(老人性いぼ)とは

脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は年を取れば誰にでも見られることが多い「良性の皮膚腫瘍」で、「いぼ」のように見えることから「老人性疣贅(ゆうぜい)」とも呼ばれます。

周囲の健康な皮膚よりもやや盛り上がり、色調は褐色から黒色をしたイボ状のものが、顔まわりや頭部、おなかまわりなどに現れます。早い人では20代から出現し、個人差はありますが、80代ではほぼすべての人に見られます。どこにでも生じますが、顔面、頭部、手、前胸部、上背部などにできることが多いです。

脂漏性角化症の症状

褐色から黒色をした大小の盛り上がりができ、加齢とともに数が増えます。ただしあまり色がついていないこともあります。一般には粘土細工を皮膚に押しつけたような見た目をしており、盛り上がりの表面には色ムラやボコボコとした凹凸が生じます。一つの盛り上がりは数mmから大きくても2cmまでで、かゆみや痛みはありません。盛り上がりの程度が小さいうちは単なるシミ(老人性色素斑:ろうじんせいしきそはん)のよう見えることがあります。一度できてしまうと自然になくなることはなく、徐々に濃く、大きくなりますが、表面の凸凹が一時的に取れ、平らになることもあります。

脂漏性角化症の原因

いぼとは表皮にある角化細胞(角層を作る細胞)という細胞が異常に繁殖してできる皮膚の盛り上がりのことをいいます。いぼには、主にウイルスに感染してできる「ウイルス性のいぼ」と加齢などの影響によってできる「脂漏性角化症」の2つのタイプに分類されますが、いぼは医学用語ではなく一般用語ですので、いぼ状に見えるさまざまなものをいぼと呼んでいる人がいます。少なくとも脂漏性角化症はウイルス性のいぼではありませんので、感染性はなく、人から人にうつることはありません。

脂漏性角化症ができる原因は、皮膚の老化と考えられていますが、はっきりした原因はわかっていません。

脂漏性角化症とシミ(老人性色素斑)の違い

脂漏性角化症は同じく皮膚の加齢現象であるシミと混在していることがあります。そのため皮膚科専門医でも、あまり盛り上がっていない脂漏性角化症を老人性色素斑と診断している医師もいます。

ただし、簡単な目安としては、シミには凹凸がないのに対し、脂漏性角化症では角化細胞の異常増殖による凹凸があることなどから、表面を触ってみて、ザラザラがあるかどうかで区別できることもあります。ただし皮膚生検(皮膚を切除して顕微鏡による検査)をしないと区別できないこともあります。

脂漏性角化症の対処法

脂漏性角化症による色素変化や皮膚の凹凸は一度できると自然によくなることはありませんが、表面のいぼ状の角化物が機械的刺激などによって一時的に取れることがあります。

いぼのように見える症状の中には稀に悪性の腫瘍が混じっていることもあるため、自己判断はせず、症状が気になる場合は皮膚科を受診し、正確な診断を受けてください。

医療機関ではほかの皮膚疾患や悪性腫瘍などと見分けるための診断をし、症状にあった治療を行います。脂漏性角化症と診断された場合は良性のため、必ずしも治療は必要ではありません。しかし、見た目が気になる場合は治療ができることもあるため、皮膚科の医師に相談してください。治療には液体窒素療法やレーザー治療、その他の外科治療があります。

脂漏性角化症の予防法

脂漏性角化症の発症には個人差があり、たくさん老人性疣贅が生ずる人とあまりできない人がいます。脂漏性角化症は老化現象の一つであるため、完全に予防することは難しいでしょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

他の症状を探す

他の症状を探す場合はこちらから

症状一覧ページへ