『りんご病(伝染性紅斑)』の症状・原因・治療法

りんご病(伝染性紅斑)とは

  • りんご病(りんごほっぺ)は俗称で、医学用語では「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」と呼ばれます。パルボウイルスB19に感染することで起こります。幼児期から学童期に起こりやすいウイルス性感染症であり、5類感染症に指定されています。
  • 主に飛沫感染や接触感染によって広がり、4~5年周期で大流行します。実際、大阪府内のデータでは、過去に2007年、2011年、2015年、2019年と4年おきに流行しました。季節では、春先から7月上旬頃にかけて流行し、9月頃に減少する傾向があります。
  • 子どもに多い病気ですが、大人も感染することがあります。妊娠時期に感染すると胎児に影響が出ることがあるため、注意が必要です。

りんご病の症状

  • パルボウイルスB19に感染してから、7~9日程度の潜伏期間を経て、ウイルスが血液を介して全身に広がり、まず発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛など、風邪のような症状が現れます。その後、6~7日経った頃に顔面や身体に赤い発疹が出ます。
  • ウイルスに感染しても、大人の場合は7割程度、子どもの場合は3割程度の人は無症状と報告されており、感染に気づかないこともあります。
  • 発疹は、顔面に出た場合は頬が赤くなります。医学的には、蝶々が左右対称に羽を広げた姿や、平手で叩かれた痕のように見えることから「蝶形紅斑」や「平手打ち紅斑」とも呼ばれます。
  • 身体には、網目状、レース状または大理石紋様の赤い発疹が出ます。
  • 発疹は、1週間程度で痕を残すことなく消えていきます。

りんご病の原因

  • 原因はパルボウイルスB19への感染です。感染者のくしゃみや咳でウイルスを含んだしぶきが飛び散り、それを吸い込むことによる飛沫感染や、感染者と触れ合ったり、タオルや食器を共用したりすることによってウイルスを体内に取り込む接触感染によって発症します。
  • 鼻や口から侵入したウイルスは血液に含まれる赤血球に感染し、血流にのって全身に広がり、さまざまな症状を引き起こします。
  • パルボウイルスB19は感染力が強く、家庭内に感染者がいる場合は感染者と接触した人の約50%が感染します。幼稚園・保育園や小学校で流行した場合は、感染者と同じクラスの子どもが感染する可能性があります。
  • パルボウイルスB19に一度感染すると免疫(終生免疫)ができるので、通常であれば再びりんご病を発症することはありません。日本人の約50%が感染したことがあり、抗体を持っているといわれています。

りんご病の治療法

  • りんご病はウイルス感染症であり、治療薬もないため、症状が強い場合は対症療法を行いながら自然に回復するのを待ちます。
  • 赤い皮疹が出ている期間に、熱い風呂に入ったり、激しい運動をしたり、紫外線を浴びたりすると、赤みが増して症状が長引くことがあるので注意しましょう。
  • 症状が軽く、子どもが元気にしているようであれば基本的に自宅で様子を見ましょう。しかし、赤い発疹が出た場合はほかの病気と鑑別するため、医療機関を受診してください。
  • 幼稚園・保育園や小学校、地域内でりんご病が流行している場合や、家庭内に感染者がいる場合は、風邪のような症状があれば医療機関を受診しましょう。
  • りんご病は初期の風邪症状が出ている時に感染力が最も強く、赤い皮疹が出る頃には感染力がなくなります。したがって風邪症状がなくなった段階で、基本的には登園・登校が可能です。
  • 赤い発疹が治った後数週間は紫外線をたくさん浴びたり、運動したりすると赤い皮疹が再び現れることがあるので注意してください。

妊娠中はりんご病に注意

  • 妊娠中の女性がパルボウイルスB19に感染した場合はウイルスが血流にのって胎盤を通過し、胎児に影響を及ぼすリスクがあります。
  • 特に妊娠の早い時期(妊娠28週未満)での感染は、胎児に深刻な症状を引き起こすことがあります。妊娠中の女性がウイルスに感染すると、約20%が胎盤を経由して胎児に感染します。さらにそのうちの約20%が胎児にむくみが生じたり(胎児水腫)、貧血が起きたりして、流産や死産の原因になることがあります。
  • 妊娠の後期(妊娠28週以降)の女性の感染例では、胎児への影響は少ないといわれています。
  • 残念ながら、パルボウイルスB19に対するワクチンはなく、胎児への感染を防ぐ方法もないため、妊娠中の女性はウイルスに感染しないように基本的な感染症対策を徹底しましょう。

りんご病の予防法

  • りんご病を予防するためのワクチンはありません。感染を予防するには飛沫感染や接触感染を防ぐために、手洗いやうがい、咳エチケットを徹底しましょう。
  • 特に風邪の症状がある時はウイルスの感染力も強いため、他の人との接触は避け、感染を広げないように配慮しましょう。
  • 原因ウイルスであるパルボウイルスB19に対しては、アルコール消毒は無効です。手指に付いたウイルスは、石鹸と流水による手洗いでしっかりと除去する必要があります。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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