突発性発疹とは
- 突発性発疹(とっぱつせいほっしん)は3~5日続く高熱と解熱前後の発疹を特徴とするウイルス感染症です。
- 乳幼児期のうち、新生児~1才半の間に罹患するケースが多く、2才までにはほとんどの子どもが罹患します。5才以上の子どもが罹患することもありますが、非常に稀です。
- ウイルスに感染しても症状が出ないケースが20~40%あるといわれています。
- 季節性はなく、年間を通していつでも発症します。
突発性発疹の原因
- 突発性発疹は、ヒトヘルペスウイルス6型及び7型によって起こる感染症です。
- 現在、日本の成人のほぼすべての人がヒトヘルペスウイルス6型及び7型にかかったことがあると考えられており、感染経路は家庭内での感染(水平感染:人やものから周囲に広がる感染)がほとんどです。
- ヒトヘルペスウイルス6型及び7型が一度体内に入ると、唾液を作る細胞の奥深くに住み着いて、唾液中に少しずつウイルスを排出します。そのため、大人が使用した食器やスプーンの共有などから、唾液を介して子どもの口から体内に入ることで(経口感染:けいこうかんせん)感染し、初感染時に発熱や発疹などの症状が出ます。
- ヒトヘルペスウイルス6型及び7型は、経口感染のほかに、咳やくしゃみを介した飛沫感染、手指やものを介した接触感染でもうつることがあります。しかし、感染力は比較的弱いので、みずぼうそうやインフルエンザのように、幼稚園・保育園などの集団生活で流行することはほとんどありません。
- 一度ヒトヘルペスウイルス6型及び7型にかかると、それぞれのウイルスに対しては免疫ができますが、ウイルス自体は唾液を作る細胞の中に休眠状態で潜み、一生体内に残ります。
- 再発することはほとんどなく、初感染以降は無症状の状態が続きます。
突発性発疹の症状
- 突然発熱して、38度以上の高熱が3~5日ほど続きます。
- 一般的な風邪とは異なり、鼻水や咳などの呼吸器症状はほとんどの場合は見られません。
- 解熱すると同時におなかや背中、胸などの体幹部分から発疹が出現し、次第に腕~手、首(頸部:けいぶ)へと広がっていきます。顔や脚にはあまり発疹は出現しない傾向があります。
- 発疹は2~3㎜から1cm程度のブツブツです。かゆみはないものの赤みが目立ち、密集してたくさんできることで身体全体が赤っぽく見えます。
- 発疹は通常3~4日で、痕を残さず消失します。
- のどちんこ(口蓋垂:こうがいすい)の両側が真っ赤になる、まぶたがはれる、リンパ節がはれるなどの症状を伴うこともあります。また、頭のてっぺんの柔らかい部分である大泉門(だいせんもん)が盛り上がる場合もあります。
- 一般的な経過としては見た目の症状の割には子どもの機嫌も良く、1週間ほどで自然治癒しますが、中には重篤な症状に陥るケースもあります。
- 特に気をつけたい合併症は、発熱時の熱性けいれんや脳症があります。熱性けいれんは、高熱に伴って全身のけいれんを起こす病気です。急激に体温が上がる発熱の初期段階に現れやすく、発熱する度にけいれんが繰り返し起きることがあります。
- 脳症は高熱やけいれんに伴って起こる意識障害です。高熱によって神経細胞がダメージを受け、治癒後に軽度~重度の後遺症が残る場合もあります。
突発性発疹で医療機関を受診する目安
- 突発性発疹は、まずは突然高熱が出ます。発熱時点で突発性発疹かどうか判断することはできません。日中に発熱があった場合はできるだけ早めに小児科を受診しましょう。
- 38度を超える熱がある、ぐったりしている、食欲がない、眠れないほど機嫌が悪い、苦しそうにしている、下痢をしているといった症状があり、普段とは明らかに様子が異なる場合はすみやかに小児科を受診しましょう。
- 発熱時に5分以上続くけいれんや意識障害が起こっている場合は、後遺症が残るような重篤な症状に陥る危険があります。夜間や休日でも早めに救急外来を受診してください。
- 過去に高熱によるけいれんや意識障害を起こしたことがある場合は症状を繰り返すこともあります。早めに小児科を受診しましょう。
突発性発疹の治療法
- 突発性発疹はウイルス感染症のため治療薬はありません。通常は1週間ほどで自然治癒するので、経過観察と対症療法が主になります。
突発性発疹になった時の自宅での過ごし方
- 医療機関で突発性発疹の可能性があると診断された場合は自宅で安静に過ごしましょう。
- 発熱時は高熱で脱水症状が起こりやすいので、湯ざましや麦茶、乳幼児用イオン飲料、経口補水液などをこまめに飲ませましょう。
- 高熱がある時は、入浴は避けてください。入浴によって体力を消耗したり、汗で水分を失ったりして症状が悪化することもあります。汗をかいたら濡れタオルで身体を拭き、こまめに着替えをさせましょう。
- 突発性発疹に限らず、小児の病気では朝・昼・夕の体温測定や顔色、機嫌、食欲、便の状態、尿の回数など、全身の観察と記録が大切です。医療機関での診断時に役立つので記録しておきましょう。
- 発熱中はウイルス量が多く、周囲の子どもにうつしてしまうことがあります。家庭内に小さな兄弟姉妹がいる場合は家庭内感染に気をつけましょう。
- 突発性発疹は学校感染症には指定されていないため、平熱に戻り、本人が元気にしていれば、発疹が残っていても保育園や幼稚園に登園してもよいとされています。ただし、園によっては登園許可証や治癒証明書が求められることもあるので、各園のルールに従いましょう。
突発性発疹の予防法
- 突発性発疹の予防法は特になく、ワクチンもありません。突発性発疹はほとんどの子どもが罹患するため、普段から基礎体力をしっかり身につけておくこと、発症時に慌てないように保護者が症状や対処法について事前に知っておくことが大切です。
監修
帝京大学医学部皮膚科 名誉教授
渡辺晋一先生
1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。