ハチに刺された時の症状
- ハチに刺されると、毒に含まれる刺激により、患部が赤くはれあがります。刺された直後から激しい痛みが生じ、かゆみを伴うこともあります。
- ハチに初めて刺された場合は、たいてい1日~数日以内に症状は落ち着きます。
- ハチに一度でも刺されると、体内にハチの毒に対する抗体ができます。そのため、再び同じ種類のハチに刺された場合は、人によっては皮膚の症状だけでなく、ハチの毒に含まれるタンパク質に対するアレルギー反応「アナフィラキシー」が起きることがあり、注意が必要です。
アナフィラキシーの症状
アナフィラキシーの症状が出現して重症化すると命の危険が生じ、最悪の場合は死に至ることもあります。アナフィラキシーの症状は刺されてから数分以内に出現します。いずれの場合もただちに医療機関の受診が必要です。
皮膚・粘膜症状
唇や口腔内の粘膜のはれ、全身の蕁麻疹など
呼吸器症状
息苦しさ、呼吸困難、喘鳴(ぜんめい:喘息のように気道が狭くなってゼーゼー、ヒューヒューなどの呼吸音が特徴)、激しいくしゃみや鼻水など
循環器症状
動悸、めまい、意識障害、血圧低下など
人を刺すハチの種類
- すべてのハチが人に害を及ぼすわけではありません。人を刺すハチの主な種類は、スズメバチ類、アシナガバチ類、ミツバチ類などのグループに属するハチです。
- 上記3つのハチは、巣を外敵から守るために巣に近づく動物や人を攻撃する習性があり、とても危険です。
スズメバチ類
国内での死亡例の最も多いのがスズメバチ類です。国内では約16種類が生息しており、中でもオオスズメバチ、キイロスズメバチ、コガタスズメバチによる被害が多く報告されています。日本全国に広く分布し、山間部だけでなく、都市部でも神社や民家の敷地内に巣を作ります。巣に近づいただけで攻撃するため危険です。
アシナガバチ類
全国に広く分布し、民家の軒先・庭木、学校や公園の樹木などに巣を作るため、日常的に遭遇しやすいハチです。ハチがいるのを知らずに、庭木に触ったり、洗濯物に付着しているのに気づかずに触れて刺されたりすることがあります。セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、フタモンアシナガバチ、キボシアシナガバチによる被害が多く報告されています。
ミツバチ類
日本には、ニホンミツバチとセイヨウミツバチの2種類が生息しています。積極的に刺しに来ることはないものの、巣を刺激すると攻撃されることがあります。
- 日本では、ハチ刺されによる死亡事故が毎年10~20例ほど発生しており、そのほとんどが男性です。
- ハチ刺されによる事故は、ハチの活動が活発になる夏~秋が多く、8月にピークになります。
ハチに刺された時の対処法
- ハチに刺されてしまったら、まずは冷静になってその場から静かに離れましょう。慌てて手で振り払ったり、走り回ったりする行為はハチをさらに刺激してしまうため危険です。
- 刺された部位は水でよく洗い流し、針が残っている時はピンセットで取り除きます。
- 毒液や毒針を吸う専用の器具があれば、皮膚内の毒をある程度吸い出すことができます。アウトドア用品店などで市販されているので、夏に野外活動をする際には備えておくといいでしょう。
- 口で毒を吸い出そうとする人がいますが、口内に傷があった場合、傷口からハチの毒が侵入する危険があるのでやめましょう。
- 患部にはれや痛みなどの炎症がある場合は、ステロイド外用剤を塗って炎症を抑えましょう。
- 患部を冷水や、布で包んだ保冷剤を使って冷やすのも効果的です。
ハチに刺された場合に医療機関を受診する目安
- ハチに刺された後、呼吸が苦しくなる、めまい、嘔吐、口腔内のはれ、蕁麻疹などのアナフィラキシーが疑われる症状が出現した場合は、ただちに医療機関を受診しましょう。
- 特にこれまでにハチ刺されによるアナフィラキシーを発症したことのある人の場合、前よりも重症化するリスクが高いため、身体に異変を感じたらためらわず救急車を呼びましょう。
- アナフィラキシーが起きなかった場合でも、刺されてから数日たって患部のはれがひどくなる、ステロイド外用剤を塗っても症状が改善しない、または悪化しているという時は医療機関を受診し、医師の診察を受け治療しましょう。
ハチに刺されないように対策しましょう
- ハチに刺されないためには、ハチの巣に近づかないようにしましょう。特にハチの活動が活発になる夏から秋は、ハチに遭遇する機会が増えるため、野外活動をする時は注意して行動しましょう。
- ハチは黒い色を目標に攻撃してくる習性があります。野山に出かける時は、黒色の衣類やバッグ類を避け、できるだけ白っぽいものを身につけるようにしましょう。また、香水や整髪料などの強い臭いもハチを刺激するため避けてください。
- ハチは大きな声や急な動きに反応して攻撃します。ハチを見つけたら大声で叫んだり、走り回ったりせずに姿勢を低くしてゆっくりとその場を離れるようにしてください。
- 過去、ハチによるアナフィラキシーを起こしたことのある人は、自己注射タイプの緊急治療薬を携帯し、万が一に備える必要があります。専門医(登録医)に相談し、指示に従ってください。
監修
帝京大学医学部皮膚科 名誉教授
渡辺晋一先生
1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。