暑い季節、「あせもがなかなか治らず、長引いている」「汗をかいた後の赤みやヒリヒリがつらい」そんな悩みはありませんか。その症状は、もしかしたらあせもではなく、「汗かぶれ」かもしれません。
あせもと汗かぶれはどちらも汗が関係している皮膚トラブルですが、間違いやすく、症状の現れ方や発症メカニズムが異なります。今回は、その違いや見分け方、正しくケアするための方法を解説します。
あせもと汗かぶれ(汗あれ)の違いとは
かゆみのある「あせも」と「汗かぶれ(汗あれ)」は、どちらも汗が原因で起きる皮膚の病気ですが、発症メカニズムや症状の出方が異なります。
あせもは、大量の発汗に伴い、汗の通り道が詰まることによってブツブツ(水疱)ができる病気です。出口をふさがれ、行き場をなくした汗が、皮膚の内部に染み出して炎症を起こすと、強いかゆみと赤みが出てきます。これは「紅色汗疹(こうしょくかんしん)」と呼ばれ、あせもの典型的な症状です。
一方、汗かぶれは、汗に含まれる塩分やアンモニアが刺激となって皮膚がかぶれた状態です。「汗あれ」と呼ぶこともあります。発汗するたびに、皮膚が刺激され、ヒリヒリ・チクチクとした痛みを伴うこともあります。
典型的なあせもと汗かぶれは、患部をよく観察して見ると、おおよそ見分けることができます。汗の出口に沿って、赤いブツブツが点状に現れるものがあせもの特徴で、皮膚の表面に面状に症状が広がっているのが汗かぶれの特徴です。
ただし、かゆくて掻きむしったり、炎症が進行したりすると、両方の症状が混在して見分けにくくなることもあります。
汗かぶれ(汗あれ)ができる原因
汗かぶれ(汗あれ)は、かいた汗を放置することで水分だけが蒸発し、あとに残った塩分やアンモニアなどの成分が皮膚に浸透して炎症を起こす皮膚炎です。
健康な皮膚であれば、皮膚本来のバリア機能によって守られているので、少しの刺激を受けてもかぶれることはありません。このバリア機能は「皮脂膜」という汗と皮脂が混ざり合った天然のクリームが、皮膚表面にある角質層を隙間なくコーティングすることによって維持されています。
ところが、「入浴の際にタオルでゴシゴシとこする」、あるいは「石鹸やボディソープで一日に何度も洗う」などの日々の習慣が角質層や皮脂膜のコーティングに亀裂を生じさせ、そこから皮膚の水分が失われていきます。その他、紫外線やエアコンの影響によって、皮膚の乾燥が進んでしまうこともあります。
このような、いわゆるドライスキンの状態では、バリア機能が低下し、汗に含まれる成分が浸透しやすくなるのです。皮膚の内部に入り込んだ汗の成分は、周囲の細胞を刺激し、炎症による赤みやかゆみ、ヒリヒリした痛みを生じさせます。
汗かぶれの対策と予防法
日常生活で気をつけること
汗かぶれを予防するには、まず皮膚を清潔に保つこと、そして正しいスキンケアによって皮膚のバリア機能を高めておくことが大切です。仕事や運動でたくさん汗をかいた時は、シャワーで洗い流す、または清潔なタオルでやさしく汗を吸い取るなどして、皮膚に残った汗の成分や汚れを取り除き、皮膚を清潔に保つ習慣を身につけましょう。
ただし、一日に何度も石鹸やボディソープで洗うことは、皮膚の潤いを保つための皮脂膜まで除去してしまうので避けましょう。入浴の際は皮膚をこすらずに泡でやさしく洗うようにします。皮膚の乾燥が気になる時は入浴後に保湿剤を活用し、みずみずしく健康な皮膚を維持することが大切です。
また、汗をかく季節には、着衣にも工夫しましょう。襟元や袖口など、衣服のこすれによって繰り返し皮膚が刺激される箇所や、下着、ベルトなどで締めつけられている箇所は汗かぶれの症状が起きやすい部位です。通気性のよい素材や、繊維による摩擦が起きにくいデザインの衣服にするなどの工夫をしましょう。
汗かぶれに気づいたら早めの治療を
軽度の汗かぶれの場合は、正しいスキンケアを行うことで改善することもありますが、かゆみの強い汗かぶれには早めの治療が必要です。汗かぶれによるかゆみを感じながら、治療せずに過ごしていると、無意識のうちについ掻いてしまい、それが刺激になり、さらにかゆくなるという悪循環に陥ります。掻き壊して悪化した汗かぶれは、治りにくく、痕が残ってしまうこともあります。汗かぶれは、気付いたら、掻き壊してしまう前に、適切な治療をすることが大切です。
汗かぶれに関する治療薬
汗かぶれに対しては、ステロイド外用剤を使って、かゆみの元である炎症を抑え、症状の悪循環をしっかりと断ち切ることが大切です。赤みやかゆみなどの症状が気になる部分に市販のステロイド外用剤を塗って、早めのセルフケアを心がけましょう。
市販のステロイド外用剤の中には、抗生物質が配合されたタイプもあります。かき壊してしまった汗かぶれには抗生物質が配合されたタイプのステロイド外用剤が適しています。掻いてはいけないと分かっていても、つい掻き壊してしまいがちな汗かぶれには、抗生物質が配合されたステロイド外用剤を上手に活用しましょう。
監修
天下茶屋あみ皮フ科クリニック 院長
山田貴博 先生
2010年名古屋市立大学医学部卒。NTT西日本大阪病院(現・第二大阪警察病院)にて初期臨床研修後、大阪大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学講座助教として基礎医学研究に従事。阪南中央病院皮膚科勤務を経て、2017年天下茶屋あみ皮フ科クリニック開院。