『あかぎれ』とは?原因・症状・治療法や手湿疹との関係を解説


大人から子どもまで、日常的に遭遇しやすい皮膚トラブルの一つが「手指のあかぎれ」です。手指はもともと皮脂の分泌が少なくて乾燥しやすく、水や洗剤などによるダメージを受けやすいため皮膚トラブルが起きやすい部位です。今回は、あかぎれになる原因や主な症状、あかぎれを伴う手湿疹を早く治す方法などを解説します。

あかぎれとは

「あかぎれ」とは、手指の皮膚が乾燥して弾力性を失い、皮膚表面に細い線状の切れ目(亀裂)が入る症状のことです。亀裂がまだ浅く、わずかなかゆみを伴うものを「ひび割れ」と呼ぶのに対し、亀裂がさらに深い真皮まで到達し、赤みや痛みを伴うものを、一般的に「あかぎれ」と呼びます。

空気が乾燥する冬場に多い皮膚トラブルですが、洗浄力の強い洗剤・シャンプーを使用していたり、最近ではアルコール消毒液に繰り返し触れていたりすることが刺激となり、季節を問わずにあかぎれになることもあります。

あかぎれの原因

あかぎれができる原因とメカニズム

皮膚は、一番外側の「表皮」、その下の「真皮」、さらに深くにある「皮下組織(脂肪組織など)」の3つの層で成り立っています。
皮膚の構成図

このうち、表皮は私たちを外的刺激からガードするとともに、水分を逃がさないようにする重要な働きを持っています。これが「皮膚のバリア機能」です。

しかし、冬場の冷たく乾いた空気や、洗浄力の強い洗剤・シャンプー、アルコール消毒液などに手指が繰り返しさらされることで、バリア機能が低下し、皮膚から水分が抜け出るようになります。初期の段階では、表皮が乾燥し、カサつきやつっぱりを感じるようになります。さらに乾燥が進むと、表皮が硬く、分厚くなって弾力を失い、次第にひび割れを起こすようになります。「あかぎれ」は、ひび割れからさらに深く亀裂が入り、真皮層に達したものです。真皮層には、血管や神経などの重要な組織があるため、亀裂が入ることで赤みや痛み、出血などの症状が出るようになります。

あかぎれは皮膚が乾燥しやすい冬場に多くみられますが、美容師や調理師、主婦など、水や洗剤に触れる機会の多い人は、季節を問わず症状が出ます。最近では、感染症対策として手洗い・アルコール消毒を使用する機会が増えたことにより、あかぎれを発症する人が増加しています。

バリア機能が正常な皮膚の場合、刺激やアレルゲンは皮脂膜や表皮によって侵入を阻止される。一方、バリア機能が低下した皮膚では皮脂膜や表皮が刺激やアレルゲンの侵入を阻止できず、また水分が抜け出てしまう。

あかぎれの症状

あかぎれの症状の特徴は、硬くなった皮膚がぱっくり割れて、強いかゆみ、痛み、腫れなどの炎症を伴うことです。皮膚の浅いところに亀裂が入る「ひび割れ」よりも、より深くの真皮層まで亀裂が入るため、割れたところが赤く見えます。悪化すると、痛みを伴って亀裂から出血することもあります。手指の中でも、関節部分にできやすく、動かすたびに亀裂が広がって痛みやつっぱりを感じます。手指は日常生活でよく動かす部位でもあるため、症状が出ても充分に保護するのが難しく、一度あかぎれになると治りにくく、再発しやすいのも特徴です。

手湿疹の進行過程にあかぎれがある

手指の乾燥は、あかぎれだけではなく、かぶれやブツブツなどのさまざまな皮膚トラブルを引き起こします。医学的には、手指にできるブツブツ・赤みなどの皮膚トラブルを総称して「手湿疹」と呼び、あかぎれも手湿疹の一部です。

はじめは何となくカサカサしていたり、白い粉がふいたりというようないわゆる乾燥肌の状態であっても、適切なケアをせず放置していると、ひび割れやあかぎれへと進行します。そこへさらに洗剤や消毒液などによるダメージが加わると、皮膚がかぶれを起こして、赤みやかゆみ、ブツブツなどの症状が現れるようになります。

よくある手湿疹の経過と各ステージをみてみましょう。
ステージ別手荒れ対処方法 肌の状態:乾燥肌(予防・初期) 症状:粉ふき・カサカサ 対処法:ハンドクリーム・保湿剤(洗い物の際のゴム手袋、ナイト手袋) 肌の状態:ひび・あかぎれ(進行期) 症状:亀裂・痛み・血のにじみ 対処法:ハンドクリーム・保湿剤・ひび/あかぎれ薬 肌の状態:洗剤・消毒かぶれ(悪化期) 症状:赤み・かゆみ 対処法:ハンドクリーム・保湿剤・ひび/あかぎれ薬・ステロイド外用剤

初期

手全体または手指の一部がカサカサして、粉をふいたような状態です。乾燥によって表皮のバリア機能が低下しはじめます。

進行期

乾燥肌を放置していると、表皮が硬く、分厚くなって弾力を失い、やがて大小の亀裂を生じます。亀裂が浅い場合は「ひび割れ」、亀裂が真皮に達すると「あかぎれ」になります。ひどいあかぎれでは、赤くなって血が滲む・痛みが出ることもあります。亀裂がある部分は、皮膚のバリア機能が障害され、外的刺激に対して無防備な状態になっています。

悪化期

ひどい乾燥やひび・あかぎれによって皮膚のバリア機能が低下した部位に、洗剤や消毒液などの刺激が加わることで、かぶれを起こすようになります。かぶれが起きると、ひび・あかぎれのある部位やその周辺に炎症が起き、ブツブツやかゆみ・痛みが出る場合や、ブツブツがつぶれてジュクジュクした傷になる場合があります。これが、手湿疹でよくみられる経過です。手湿疹やあかぎれを放置していると慢性化して治りにくくなったり、傷から感染を起こしたりすることもあります。

あかぎれ伴う手湿疹を早く治す方法

手湿疹は「予防・初期」「進行期」「悪化期」と各ステージで症状が異なるため、各ステージに合った治療が必要です。あかぎれを伴う手湿疹を早く治す方法を解説します。

全ステージの手荒れに共通の基本的なスキンケア

全てのステージの手湿疹に対して大切なのは、「手指を保護すること」と「しっかりと保湿ケアすること」です。これら2つのケアを習慣づけて、肌のバリア機能を正常に保ち、健康な皮膚を維持することが重要です。

手指は日常生活の中で、どうしても水や洗剤などに触れる機会が多く、そのたびに皮脂が失われて皮膚にストレスがかかります。水仕事をする際は、ゴム手袋を使用して、手指を保護しましょう。ただし、ゴム手袋を着けていると、手袋についているパウダーや手袋の素材であるラテックスなどでかぶれる人がいます。そのような人はパウダーフリーやラテックスフリーのゴム手袋を選んで下さい。ひび割れができている部位は液体絆創膏で保護するのもよいでしょう。

水仕事、手洗い、アルコール消毒などのあとは、毎回保湿剤を塗って保湿し、皮膚を乾燥から守りましょう。空気の乾燥にも注意が必要です。外気が乾燥して冷える冬場は、手袋をはめるなどして皮膚を保護しましょう。エアコンで部屋が乾燥している場合は、加湿器を使って湿度を適切に保つようにしましょう。睡眠時にナイト手袋をはめて寝るのも効果的です。

ステージごとの治療

「予防・初期」「進行期」「悪化期」の各ステージに必要な治療について詳しくみてきましょう。

  • 予防・初期…カサカサする部分や白く粉をふいている部分を中心に、ワセリンなどの保湿剤あるいはハンドクリームで手指全体を保湿しましょう。皮膚が硬くなっているところには、尿素配合クリームを使用するのもよいでしょう。
  • 進行期~悪化期…赤みや痛み、かゆみのないひび割れの場合は、保湿剤によるケアが有効です。最近は、ひび・あかぎれに適応があり、カバー力のある塗り薬も市販されているため、市販薬を使ったセルフケアも可能です。ただし、赤み・かゆみが出てきた場合や湿疹を伴う場合は、患部に炎症が起きているサインです。炎症がある部位に関しては、充分な強さのステロイド外用剤を併用して、すみやかに炎症を抑えましょう。

一方、亀裂が裂けて痛みがある、出血している、湿疹を掻き壊してジュクジュクしているなどの場合は、傷口から細菌感染を起こす恐れがあります。細菌感染が心配な時は、抗生物質入りのステロイド外用剤を塗って治療しましょう。

こんな時は受診を

手指の乾燥などの初期の症状に対して、基本の保湿ケアを続けても改善しない場合や、進行期・悪化期の手湿疹にステロイド外用剤を5~6日間使用しても症状が悪化している場合は、皮膚科を受診してください。

あかぎれができる前に

あかぎれは、一度できると治るまでに時間がかかる皮膚トラブルです。手指の乾燥を感じたらすぐに保湿クリームをこまめに塗るなど、あかぎれを予防することが大切です。また、かゆみが出てきた場合は、患部を掻き壊してしまうと、手湿疹の症状が悪化します。かゆみ、赤みなどの炎症が出てきたら、ステロイド外用剤を塗ってすみやかに治療しましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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