新型コロナワクチンの接種後の副反応。腕に痛みや腫れ、かゆみなどが起きた時の対処法

新型コロナウイルス感染症の発症および重症化予防のために、接種が進められている「新型コロナワクチン」。新型コロナワクチンを接種することで、ウイルスに対する免疫が獲得できるとして期待されていますが、心配なのは新型コロナワクチン接種による副反応です。なかでも、ワクチンの接種箇所に現れる痛みや腫れ、かゆみなどの症状は、新型コロナワクチンの副反応としても比較的遭遇しやすいと言われています。

ワクチン接種後の腕の痛みや腫れ、かゆみなどの症状は不快ではありますが、腕を冷やしたり、市販薬を活用したりして症状を軽くすることができます。副反応が自然に治まるまでの数日間を乗り切るための適切なケア方法を知っておきましょう。

新型コロナワクチン接種後の副反応とは

新型コロナワクチンに限らず、ワクチンというものは、接種後に、発熱したり、倦怠感が続いたり、接種部位が腫れて熱を持ったりといったさまざまな変化を引き起こすことがあり、このような好ましくない変化のことをワクチン接種による“副反応”と呼びます。

そもそも、私たちの身体は、特定の食べ物や花粉など、外部から体内に入ってきたものに対して、アレルギー反応を起こすことがあります。ワクチン接種の場合も、人それぞれの体質やその時の体調によって、アレルギー反応などの副反応が起きることがあります。

副反応と聞くと、非常に重篤で怖いものとイメージする方もいるかもしれませんが、決してそうではなく、ほとんどの副反応は軽症で自然によくなります。

日本医師会によると、新型コロナワクチン接種後の副反応としては、次のような症状が報告されています。

新型コロナワクチン接種後の副反応で起こるかもしれない症状

  • 注射した部位の腫れや痛み:接種当日~2日程度
  • 筋肉痛、関節痛:接種翌日に現れやすく、1日程度で治まる
  • 頭痛:接種翌日に現れやすく、1日程度で治まる
  • 倦怠感、疲労感、寒気、発熱:接種翌日に現れやすく、1日程度で治まる
  • 接種した腕のかゆみ、腫れ、痛み(COVIDアーム):接種から1週間前後で現れやすく、2~3日で治まる

これらの症状は不快ではあるものの、私たちの免疫反応による一時的な生体反応であり、たいてい2~3日で自然に治まります。

しかし、ごく稀に以下のような重篤な症状が現れることもあります。

  • 接種部位以外の皮膚のかゆみ、蕁麻疹(じんましん)、皮膚が赤くなるなどの広範囲の皮膚症状
  • くしゃみ、のどのかゆみ、声のかすれ、息苦しさなどの呼吸器症状
  • 腹痛、下痢、吐き気などの消化器症状
  • ものが見えにくい、気分が悪いなどの神経症状

これらの症状が接種直後に急に現れた場合や、症状が強い場合はすみやかに医療機関を受診してください。

腕に痛みや腫れなどがある場合

現在、国内で認可されている新型コロナワクチンのうち、ファイザー社とモデルナ社のワクチンは、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの一種であり、これらのワクチンの特徴として、接種後数日から1週間後くらいに、腕にかゆみや痛み、腫れ、熱感、赤みなどの、通称「COVIDアーム」(または「モデルナアーム」)と呼ばれる症状が出ることがあります。

これは、体内に注入したワクチンの成分に免疫系をつかさどるT細胞が反応し、少し時間が経ってから皮膚に症状が出現する「遅延型アレルギー反応」の一つです。そもそも、私たちのアレルギー反応には、体内に異物が入ってすぐに起こる「即時型アレルギー反応」と、数日経ってから遅れて症状が出る「遅延型アレルギー反応」があります。このCOVIDアームは、「遅延型アレルギー反応」にあたります。

新型コロナワクチン接種後のCOVIDアームは、接種部位ではなく、接種部位の下やもっと下のひじの方に発症することが多く、男性よりも女性に多く見られることが報告されています。腫れやかゆみ、痛みなどの症状によって違和感が続くものの、健康には害はなく、たいてい数日で自然に治ります。

ワクチン接種後、腕に違和感がある場合の対処法

新型コロナワクチン接種後、腕にCOVIDアームのような違和感がある場合は、症状を軽減するセルフケアを行い、自然に回復するのを待ちましょう。かゆみにまかせて患部を掻いてしまうと、傷ができたり、掻くことそのものが刺激となってますますかゆくなったりと、悪循環に陥ります。

厚生労働省によると、腕にかゆみや腫れ、赤みなどの炎症がある場合は、濡れタオルで患部を冷却したり、かゆみをしずめる効果のある「抗ヒスタミン成分の入った塗り薬」、炎症そのものを抑える「ステロイド外用剤」を塗ったりすると、症状を軽減できるとしています。

かゆみや腫れに加えて、ひどい痛みがある時は、アセトアミノフェンやロキソプロフェン、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬を服用することで、症状が軽減することがあります。我慢できないような強い症状がある時や、数日経過してもよくならない時は、医療機関を受診しましょう。

厚生労働省の新型コロナワクチンの情報は以下のリンクをご覧ください。
新型コロナワクチンQ&A

市販のステロイド外用剤を使用する際の注意点

ワクチン接種後の副反応により、腕にかゆみや赤み、湿疹、腫れなどの症状がある時は、患部に炎症が起きているサインです。炎症を抑える働きのあるステロイド外用剤を使って、不快な症状を元からしずめましょう。

ステロイド外用剤を使用する際は、充分な強さのステロイド外用剤を塗ることが大切です。大人の場合、ステロイドの強さのランクは「ストロング」を選び、擦り込まずにやさしく患部に塗りましょう。この時、患部以外には使用せず、症状のある範囲にだけ塗りましょう。

ただし、ストロングランクのステロイド外用剤を5~6日間使用しても症状が改善しない、あるいは悪化している場合は使用を中止し、皮膚科を受診してください。また、症状が出ている範囲が手のひら2~3枚分を超える時も、セルフメディケーションの範疇を超えています。皮膚科を受診しましょう。

ワクチン接種後の腕の違和感で病院に行く目安

新型コロナワクチン接種後の腕の違和感は、掻かなければ数日で自然によくなります。ただし、症状が特にひどく、我慢できない場合や日常生活に支障をきたす場合、セルフケアをしながら数日経過しても症状がよくならない場合は、皮膚科を受診し、医師に相談しましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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