ステロイド外用剤に関するQ&A

Q:ステロイド外用剤は、副作用があるのでは?

A:ステロイド外用剤は、正しい使い方をすれば過剰に副作用を心配する必要はありません。

ステロイドは「よく効くけれど副作用が心配だ…」と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

ステロイドには外用剤(塗り薬)以外に、飲み薬や注射などがあり、塗り薬による「局所の副作用」と飲み薬や注射による「全身性の副作用」は異なります。「骨がもろくなる」、「糖尿病になる」などは飲み薬や注射を大量に長期間使った場合に起こることがある全身性の副作用です。

通常、飲み薬や注射を長期間使用する必要がある場合には、医師が定期的に検査を行い、副作用に対して細心の注意を払いながらステロイドの使用量を調節しています。一方、塗り薬では体の一部に使うだけで、体に吸収される量が非常に少ないので、このような全身性の副作用が起こることはほとんどありません。

このように、ステロイド外用剤は全身性の副作用はほとんどありませんが、長期間使用し続けた場合、局所に副作用を起こす可能性があります。例えば、顔のようにステロイド外用剤を吸収しやすい場所では、長期間ステロイド外用剤を塗り続けるとだんだん皮膚が薄くなったり、にきびが出てきたりする場合があります。しかし、OTC医薬品を使うような症状の範囲内では、使用期間が短いため、あまり問題になることはありません。いずれにせよ、使用上の注意をよく読み、正しい使い方を心がけることが大切です。

Q:ステロイド外用剤を使うと、皮膚が黒くなるの?

A:ステロイド成分が原因で皮膚が黒くなることはありません。

「黒くなった」と誤解されるのは、ステロイド外用剤を使ったことによるものではなく、日焼けした部位やけがをした痕がしばらく黒ずむことと同じで、湿疹・皮膚炎で傷ついた皮膚が治癒していく過程で一時的な変化によるものです。「長い間、治療をせずに放置しておいたことにより炎症が悪化した」「治療を途中でやめてしまっていたために皮膚の状態がよくなかった」という場合などに、黒くなると考えられます。

Q:ステロイド外用剤を使うと、体内に残ったり、やめられなくなったりするの?

A:いいえ、ステロイド外用剤の成分は体内に蓄積されることはありません。

また、充分な効き目のステロイド外用剤を使い、患部の症状がよくなれば、ステロイド外用剤の使用を中止することができます。

Q:ステロイド外用剤を使うと、顔が丸くなったり、骨がもろくなったりするの?

A:大量に長期間使用した場合には、そのような可能性があります。しかし、ここでいう大量とは、強いステロイド外用剤のチューブを1日に4本も5本も半年~1年と長期間使い続けるような場合なので、セルフメディケーションンの範囲ではない使い方です。

このような誤解が生じてしまう理由は、まれに起こるステロイド成分の注射や内服などによる全身的副作用と勘違いされているからだと思われます。顔が丸くなる“ムーンフェイス”と呼ばれる現象は、ステロイド成分の注射や内服を長期間続けるとよく見られる副作用ですが、投薬を中止すると元に戻ります。

また、ステロイド成分の注射や内服の長期大量投与により、骨がもろくなることもありますが、通常はそのようにならないように担当医の専門医が投薬管理を行っています。

Q:「副作用」と「リバウンド」が心配なのですが?

A:ステロイド外用剤を使うにあたっては、どちらも過剰に心配をしなくてもよいです。

とはいえ、多くの患者さんが気になっている「副作用」と「リバウンド」については、もう少し詳しくご説明します。

Q:ステロイド外用剤の「副作用」とは?

A:ステロイド外用剤を使うときに抱く一番の不安は、「ステロイド=副作用が怖い」というものだと思われます。

ステロイド外用剤の副作用は、主に2つに分けられます。

  • 全身的副作用
    「顔が丸くなる」「骨がもろくなる」というように症状が全身レベルで現れるもの
  • 局所的副作用
    長期連用した場合に「皮膚が薄くなる」「ニキビができやすくなる」など、塗った部分に症状が現れるもの

ステロイド外用剤の使用に際しては、適量を正しい使用方法で塗布することが大前提になりますが、特にOTC医薬品でセルフメディケーションをする場合、使用量や期間を守って使用すれば全身的副作用が起きることはまず考えられません。

局所的副作用にしても、短期間の使用であらわれることはありませんし、塗布したところに必ず現れるということではありません。例えば、化粧下地やひげそり後の使用など治療目的以外に毎日連用してしまうと、局所的副作用が起こりやすいことがわかっています。疾患部位だけに短期間の使用にとどめるという正しい使用方法で、副作用を起こさないようにこころがけてください。

ステロイド外用剤に限らず、医薬品全体に言えることですが、副作用は恐怖心をあおるためのものではありません。もし、副作用が起こってしまった場合には、早めに気づき対処することが何よりも大切です。そのために医薬品の添付文書には、非常に低い確率でも起こりうる可能性のある副作用をすべて記載しています。過剰に副作用をおそれて薬を使わないことは、疾患を悪化させたり、長引かせてしまう結果となってしまいます。

Q:ステロイド外用剤を中止すると「リバウンド」が起きますか?

A:使用法が適切でないと、症状がわるくなることもありますが、それを「リバウンド」とはいいません。

ステロイド外用剤でいわれているリバウンドのほとんどは、もともとの病気の症状が強くなったものと考えられており、ダイエットでいわれている“リバウンド”とは、違う意味で使用されています。

アトピー性皮膚炎に代表される慢性湿疹は、かゆみや赤みがなくなるまで、発疹がある部位だけにステロイド外用剤をつけなければなりません。また良くなった部位にはステロイド外用剤をつけるのをやめましょう。少し良くなったからという理由でステロイド外用剤を急に中止すると悪化します。このことを「リバウンド」と言っているようですが、これはリバウンドではなく、治療しないことによる単なる悪化です。良くなっていないのに急に治療をやめると、悪化するのはどの病気でも同じで、これをリバウンドとは言いません。良くなったと自分勝手な判断で治療を中止することなく、専門医の指示に従うようにしましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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