日差しの強い季節。海水浴や野外でのレジャーを一日楽しんで帰ってきたら、日焼けで皮膚が真っ赤になってしまった!という経験のある人は少なくないでしょう。
直射日光を長時間浴びていると、紫外線によって皮膚がダメージを受け、赤みやヒリヒリした痛みが出たり、ひどい場合は水ぶくれ(水疱:すいほう)ができることがあります。
日焼けによって水ぶくれができてしまった場合の対処法について解説します。
日焼けはやけど?水ぶくれができる理由
強い紫外線は、肌に大きなダメージを与え、炎症を引き起こします。症状の出方には個人差がありますが、たいてい強い紫外線を浴びた数時間後から、皮膚の赤みやヒリヒリした痛みが現われ、ひどいと小さな水ぶくれによるブツブツや、比較的大きな水ぶくれができることがあります。
このような、紫外線が肌を傷つけることによって起きる皮膚の炎症を総称して、医学用語では「日光皮膚炎」といいます。
軽度の日光皮膚炎では、炎症反応によって毛細血管が拡張し、一時的に皮膚の赤みやヒリヒリした痛みが出ますが、炎症反応が治まると、これらの症状も数日で自然に治まります。
一方、重度のものでは、紫外線によって皮膚の細胞が深刻なダメージを受け、強い炎症反応によって大小の水ぶくれができます。
この水ぶくれは、紫外線によって壊された細胞から染み出た成分などが刺激になって炎症によって拡張した血管から染み出た水分が、表皮の薄い膜の下にたまって膨れたものです。
日焼けによる水ぶくれは、やけどと同じような症状
日焼けによる水ぶくれは、いわばやけど(熱傷)と同じような症状だといえます。
やけどは、高温による皮膚の損傷によって起き、損傷の深度からⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分類されています。
- Ⅰ度熱傷…皮膚表面までの損傷で、皮膚が赤くなり、ヒリヒリした痛みを伴います。通常は3~4日で痕を残さず自然に治ります。
- Ⅱ度熱傷…皮膚の奥の真皮層に損傷が達するものです。やけどをした直後に強い痛みを伴う赤みと灼熱間が出始め、数時間以内にびらんや水ぶくれができます。
- Ⅲ度熱傷…最も重度のやけどです。皮膚のすべての層が破壊された状態で、皮膚はほとんど再生することができません。一見通常の皮膚と変わりなく見えることもあります。
やけど直後には軽いやけどだと思っていても、時間の経過とともに進行することもあり、水ぶくれはある程度時間が経過しないとみられないことが多いです。
紫外線による水ぶくれ症状は、皮膚の損傷の深さでみるとI度熱傷に相当するような症状ですが、やけどと同様に重症度の判断は難しいので、明らかに軽度のもの以外は医師による診断と治療が必要です。
まずは患部を冷やす!日焼けで水ぶくれができたときの対処法
流水で30分以上冷却を
「やけどをしたら、患部をすぐに冷やすことが大切」。これは、やけどに対する応急処置として誰もが知ることです。日焼けによってできる水ぶくれに対してもやけどに対する考え方と同じで、できるだけ早く患部を冷やすことが肝心です。
症状に気がついたら、水道水の流水を使って30分以上冷やしてください。日焼けの場合、背中~腕全体など、広範囲に症状が出ることもあるので、そのような場合は濡れタオルを患部全体にかけて、その上から扇風機の風をあてて冷却する方法もあります。早期に患部を冷やすことで、炎症と痛みの広がりを抑えるとともに、皮膚の深い所への進行を抑えることができます。このとき、氷水などで冷やし過ぎると、皮膚をさらに傷めてしまいますので、冷やし過ぎに注意しましょう。
水ぶくれは自分でつぶさないこと
日焼けの後の皮膚は、肌のバリア機能が破壊されている状態なので、決してこすったりしないようにしてください。水ぶくれをつぶすのも厳禁です。水ぶくれの中は、無菌状態に保たれていますが、皮が破れてしまうと、そこから雑菌が入り込み、感染を起こす危険性があります。
水道水による応急処置が済んだら、そのままの状態ですぐに医療機関を受診しましょう。
水ぶくれはどうなるの?おすすめのアフターケアは?
強い紫外線を浴びた数時間後から、皮膚が赤くなり、灼熱感と共にヒリヒリと痛みだします。はじめは赤みと痛みだけですが、日焼けの程度により24時間以内に水ぶくれが発生することがあります。
日焼けによってできる水ぶくれは大小さまざまで、広範囲に点在することも珍しくありません。水ぶくれができるということは、皮膚表面近くの細胞が壊れてしまっている状態です。新しい皮膚を再生し、元通りに回復するにはそれなりに時間がかかります。
ごく小さな水ぶくれであれば、数日で中の液体が徐々に吸収されることもありますが、中の液体は吸収しきれず、やがて皮が破れてジュクジュクした傷になることもあります。そこから2~3週間かけて、徐々に新しい皮膚が再生され、傷が修復されていきます。ひどいものでは、治癒までに4週間程度かかることもあり、新しい皮膚が再生しても、色素沈着などの痕が残ってしまうことも稀にあります。
ただし、以上の経過は、医療機関で適切な治療を行う場合のものです。医療機関を受診する前に水ぶくれをつぶしてしまったり、適切な処置を受けないでいると、傷口から細菌感染を起こし、悪化してしまうことがあります。水ぶくれの治療に関しては、必ず医師の指導を受けましょう。
日焼け後のその他のケア
水分補給をしっかりと
日焼けによる症状は、一般的なやけどに比べて広範囲に及びがちです。プールや海水浴などのレジャーでの日焼けの場合、背中や体幹部全体に症状が出ることもあります。一見軽い症状に見えても、広範囲に炎症が起きた場合は、脱水症状を起こしやすい状態になっています。こまめな水分補給を心がけましょう。
熱いお風呂には入らない
患部が赤く、ヒリヒリしている間や、水ぶくれができているときに患部を温めると、それが刺激になって炎症や痛みが強くなります。症状が落ち着くまで患部を熱い湯につけずに、シャワーで済ますようにしましょう。
新たな日焼けは避ける
日焼け後は、肌のバリア機能が低下しているので、紫外線によるダメージを受けやすい状態になっています。さらに日焼けをしてしまうと、新たな炎症や色素沈着を引き起こす原因になるため、できる限り日焼けを避けましょう。
ひどい症状を避けるために、基本的な予防を!
ひどい日焼けを避けるためには、紫外線による肌へのダメージを減らすことが大切です。特に、紫外線が強い季節や時間帯、地域などでは、基本的な紫外線対策をしっかりと行う必要があります。
気象庁のサイトでは、紫外線による人体への影響の度合いを表す指標「UVインデックス」の季節、時間帯、地域ごとの変化に関する情報を発信しています(下表)。UVインデックスは、1~11までの数値で表され、数字が大きいほど人体への悪影響が大きいことを示します。
それによると、UVインデックスは、季節でいうと4~9月、時間帯では10~14時、地域では南に近づくほどUVインデックスが高くなる傾向があります。
表:UVインデックスと対策
UVインデックス | 人体に影響を及ぼす紫外線量 | 必要な紫外線対策 |
1~2 | 弱い | 安心して戸外で過ごせます。 |
3~5 | 中程度 | 日中はできるだけ日陰を利用しよう。 |
6~7 | 強い | できるだけ長袖シャツ、日焼け止め、帽子を利用しよう。 |
8~10 | 非常に強い | 日中の外出はできるだけ控えよう。 |
11+ | 極端に強い | 必ず長袖シャツ、日焼け止め、帽子を利用しよう。 |
(環境省 紫外線 環境保護マニュアル2020)
自分の住んでいる地域のUVインデックスをチェックし、紫外線の強さに応じた紫外線対策を行いましょう。ただし、UVインデックスが低い季節や時間帯であっても、紫外線は一年を通して降り注ぎます。毎日少しずつ浴び続けることで、皮膚に有害な影響を及ぼしかねません。少しの外出でも油断せず、基本的な紫外線対策を意識しましょう。
監修
帝京大学医学部皮膚科 名誉教授
渡辺晋一先生
1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。