食べ物に含まれる炭水化物は唾液で、タンパク質は胃液でも分解されます。
しかし脂肪はほとんど分解されずに十二指腸まで到達します。
十二指腸は、胃から送られてきた脂肪に反応して、消化管ホルモン「コレシストキニン(CCK)」を分泌します。
CCKは小腸での脂肪の消化吸収を促進する一方、胃の運動を抑制する作用があります。脂肪が小腸内に停滞しているとCCKの分泌が続くので、胃の運動が抑制されたままになり、胃もたれを起こします。
胆汁酸は、胆汁の主要成分(固形分の約70%)です。胆汁酸は肝臓でコレステロールから作られます。
食事をすると胆嚢が収縮し、十二指腸に胆汁が排出されます。そこで、胃から送り出された脂肪と胆汁酸が出会います。
油(=脂肪)と水は混じり合いませんが、
胆汁酸には油を水中に均一に混合させる作用(界面活性作用)があります。
この作用から、
「生体内の石鹸」「腸内の洗剤」と呼ばれます。
さらに
詳しく!
胆汁酸には油になじみやすい側(疎水基)と水になじみやすい側(親水基)があります。
胆汁酸は十二指腸で脂肪に出会うと、疎水基と脂肪がくっつきます。
胆汁酸がたくさんあると、脂肪を取り込んだ微粒子(ミセル)になります。
ミセル化した脂肪の外側は親水基で覆われます。
これにより脂肪は水中に分散します(乳化)。
脂肪分解酵素リパーゼは水溶性なので脂肪滴の中に入ることができず、界面でしか作用しません。0.1~0.3ミリメートルの脂肪滴は、胆汁酸によるミセル化で30~100ナノメートルまで微粒子化します。
これにより界面の面積が飛躍的に増加、つまり、胆汁酸がリパーゼによる脂肪分解を助けているのです。
十分な胆汁酸が存在すると、脂肪はミセル内に取り込まれます。ミセルの外側は水になじみやすい親水基で覆われているので、十二指腸は脂肪がなくなったと判断して、CCKの分泌を止めます。
すると、CCKによって抑制されていた胃の運動が再開し、食べた物が胃から腸に送られるようになります。
胆汁酸が胃排出を促進して胃もたれを防ぎます。