胃腸薬の有効成分のひとつ、
ウルソデオキシコール酸(UDCA)。
あまり聞き慣れない名前ですが、
消化器官に対してさまざまな働きかけをし、
総合的に消化機能を高めてくれる
働き者の成分です。
そんなウルソデオキシコール酸が
体内で
どのように作用するのかについて解説します。
[監修]勝矢 由紀子
大学病院勤務の後、現在は埼玉県、都内のクリニックなどにて一般内科、消化器内科外来、内視鏡検査を担当。
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ウルソデオキシコール酸ウルソデオキシコール酸(UDCA)について説明する前に、UDCAと関わりが深い胆汁と胆汁酸についてお話します。
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「熊胆」とウルソデオキシ熊の胆汁を乾燥した「熊胆(ユウタン)」は、漢方医学で使用される生薬の一種です。その歴史は古く、奈良時代、遣唐使によって日本に伝来したと言われています。
古くから動物の胆汁は薬として使用されていましたが、熊胆は特に効果があるとされていました。その熊胆の主成分を科学的に合成したものが、UDCAなのです。
熊胆の有効成分であるUDCAの解明、それを科学的かつ効率的に作り出すことができる合成方法の確立、そして製剤化、全て日本人の手によって行われています。
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胆汁酸の分泌を促進する
胆汁酸は、腸での脂肪の消化吸収に働いた後、95%以上が腸管で再び吸収されて肝臓に取り込まれます。この流れは「腸肝循環」と呼ばれています。ようするに、胆汁酸のほとんどが体内でリサイクルされているのです。
しかし、肝臓の機能が低下すると胆汁の量が減ります。そうなると腸肝を循環する胆汁酸が不足し、脂肪の消化吸収もうまくいかなくなってしまいます。
そこでUDCAの出番です。経口摂取したUDCAはそのまま腸肝循環のサイクルに入り、肝臓に働きかけることで胆汁酸の分泌を促進。脂肪の消化力を高めてくれるのです。
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胆汁酸の分泌機能を高めるウルソデオキシコール酸
胆汁酸には5つのタイプがあることに触れましたが、それぞれ水への溶けやすさ・混ざりやすさ(親水性)が異なります。実は、水と溶けにくかったり混ざりにくかったりするタイプほど、消化器官を刺激して傷つけてしまうのです。
UDCAは、5つのタイプの中でもっとも親水性が高い性質を持ちます。そのため、消化器官を傷つけることはなく、むしろ細胞を保護するかたちで消化力を高めます。
また、UDCAを継続的に服用することで消化器を刺激するタイプの胆汁酸が徐々にUDCAに置き換えられていくことが分かっています。
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こんな場面で役立つ年齢を経るにつれて脂肪の消化機能は衰えると考えられています。「脂っこい食事で胃がもたれてしまった」なんて経験、多くの人にありますよね。消化機能が衰えると、以下のような症状を自覚することがあります。
これらはいずれも脂肪の消化が関係している症状です。UDCAの服用を始めて脂肪の消化促進が行われることで、症状の緩和が期待できます。
>脂肪で胃がもたれる仕組みと、胆汁酸の役割