腟カンジダが再発?!
注意すべきポイントや予防法を解説
腟カンジダを経験したことがある方は、外陰部のかゆみやカッテージチーズ状の特徴的なおりものがみられた場合、腟カンジダの再発を疑うことが多いでしょう。
腟カンジダの原因であるカンジダ菌は、健康な方でも腟や皮膚、消化管などに存在する常在菌です。
そのため、腟カンジダは完治してもさまざまな要因で再発しやすい疾患といえます。
本記事では、腟カンジダの再発の原因や治療法を紹介します。
日常生活で注意すべきポイントや予防法も解説するため、腟カンジダの再発が疑われる方、再発を繰り返している方はぜひ参考にしてください。
腟カンジダの症状について
腟カンジダは、カンジダ菌という真菌(カビの一種)が何らかの原因により腟内で異常増殖することで発症します。
カンジダ菌は、健康な方でも腟や皮膚、口内、消化管に存在する常在菌です。
通常、腟内はデーデルライン桿菌(かんきん)という乳酸菌の一種により、細菌のバランスが保たれています。
しかし、免疫力の低下やホルモンバランスの変化などにより、腟内でカンジダ菌が異常増殖すると、かゆみやおりものの変化などの症状が現れます。
腟カンジダは性交渉で感染する可能性もありますが、免疫力低下などの理由からカンジダ菌が増殖し、感染症を引き起こすことが多い疾患です。
腟カンジダの代表的な2つの症状を紹介します。
掻痒感(そうようかん)
掻痒感とは、かゆみやチクチクする感じなど、痛み以外の皮膚の不快な症状のことです。
腟カンジダを発症すると陰部に強いかゆみが起こり、痛がゆいと表現する方もいます。
夜も眠れないほどの激しいかゆみを感じる方もいますが、かくことで引っかき傷ができると、その傷からカンジダ菌が侵入しさらに悪化する場合がありますので、かゆくてもかかずに我慢して、なるべく早く治療を開始しましょう。
また、陰部に次のような症状を感じる場合もあります。
- 刺激感
- 灼熱感
- 排尿時の痛み
- 性交時の痛み
これらの症状は、腟カンジダのみならず細菌性腟症やクラミジアなどの性感染症でも生じる可能性があります。
初めて症状が出た場合や、腟カンジダの再発かわからないなど、自身で判断できない場合は、何の病気なのか確定診断を受けるために、病院で医師の診察を受けましょう。
おりものの変化
腟カンジダを発症すると、おりものがカッテージチーズや酒粕のような、白くポロポロとした状態になります。
ただし、おりものの見た目や量は変化しますが、臭いについてはあまり変化がないといわれています。
このように、白くポロポロとした明らかに通常と状態の異なるおりものがみられる場合は腟カンジダが疑われます。医療機関の受診や、市販薬を使用するなど、速やかに治療を開始しましょう。
カンジダ菌を保有していても発症しない場合も
腟にカンジダ菌を保有していても、菌が増殖しなければ発症しません。
ホルモンの変化による発症リスクはあるものの、免疫力が高い状態であればカンジダ菌を保有していても症状が出ないことから、腟カンジダを発症させないためには、免疫力の向上が重要です。
腟カンジダは再発しやすい?
腟カンジダの原因であるカンジダ菌は、皮膚や消化管に存在する常在菌であるため、腟カンジダは一度完治しても再発しやすい疾患です。
腟カンジダの再発には大きく分けて、再感染によって発症する場合と、腟内に少量残っていたカンジダ菌が再増殖して発症する場合があります。
ここでは、腟カンジダの再発の割合や、治療法を紹介します。
腟カンジダ経験者のうち、2人に1人は再発している
調査※では、腟カンジダを経験したことがある女性は約5人に1人で、そのうち再発したことがある方は約2人に1人です。
腟カンジダを経験した方のうち、12.6%の方が3回、16.4%の方が4回再発したことがあると回答したほど、腟カンジダは再発しやすい疾患です。
- ※ 女性20~50才代 回答者数30,008人 2010年5月インターネットによるアンケート調査 調査委託先:株式会社読売広告社
1年間に4回以上再発する場合は、再発性外陰腟カンジダ症(RVVC)になっている可能性があります。
カンジダ菌はもともと腟や皮膚に存在する常在菌であるため、きちんと治療しても、腟内からカンジダ菌を全て無くすことはできません。
カンジダ菌をある程度減らしても、免疫力の低下やホルモンバランスの変化などで、カンジダ菌が腟内で異常増殖すれば腟カンジダは再発します。
一方で、環境の変化や免疫力の低下が再発の原因となっている場合、日常生活を改善することで、腟カンジダの再発防止に役立ちます。
たとえば免疫力向上のため、食事や睡眠に配慮することや、デリケートゾーンのケアを見直すなど、日常的に少し意識するだけで腟カンジダの再発リスクを減らせます。
腟カンジダの治療法
再発の場合も含めて病院では腟カンジダの治療は、次のような流れでおこなうことが一般的です。
1.内診と確定診断
2.腟洗浄などの処置
3.抗真菌薬の使用
腟カンジダを発症した経験がある方は、強いかゆみが出たり、おりものが変化したりすると、まず腟カンジダの再発を疑うことが多いでしょう。
しかし、腟カンジダと似たような症状の別の疾患も多いため、初めて症状がでた場合は病院で検査や診断を受けたうえで治療を行うことをおすすめします。
再発と考えられる状況でも以前と同じ症状か判断できかねる場合は、他の感染症の疑いもあるため医療機関を受診しましょう。
診断は、腟や陰部の症状、おりものの状態を調べ、おりものを採取し検査をおこなうことで確定されます。
腟カンジダと診断されたら、抗真菌薬の腟錠(腟に入れる錠剤)や軟膏、クリームなどが処方され、これらを使用して治療します。
再発を繰り返している場合は、治療薬を変更したり、経口薬を用いたりする場合もあります。
また、以前は再発でも治療薬をもらうために医師の処方が必要でしたが、現在は次の条件に当てはまれば、ドラッグストアで治療薬を購入できるようになりました。
- 以前に医師から腟カンジダと診断を受け、治療を完了した経験がある
- 前回と同様の症状がある
ただし、購入時は薬剤師から書面により説明を受ける必要があります。ドラッグストアによっては、営業時間と薬剤師が勤務している時間が異なる場合があるため、事前に電話で確認するとよいでしょう。
腟カンジダ再発治療薬なら、忙しくて病院に行く時間が取れない方や、病院の診療時間外にかゆみが出てきた場合でも、自身ですぐに治療が開始できます。
再発治療薬には、腟錠を1回使用する1日療法タイプと、6日間連続して使用する6日療法タイプがあり、好みの治療スタイルを選べます。
また、腟カンジダの治療薬を使用している間は、ビデの使用は避けましょう。
ビデを使用すると、薬が洗い流されてしまったり、薬の効果が弱まったりします。
さらに、パートナーへの感染を防ぐために、治療薬を使用している間は性交渉も避けましょう。
腟カンジダ再発の原因
腟カンジダの原因となるカンジダ菌は常在菌であるため、体からなくすことはできません。
一度完治して腟内のカンジダ菌がなくなったとしても、皮膚や消化管から、または性交渉で感染するなど、再発する可能性があります。
ここでは、腟カンジダが再発する原因を紹介します。
ホルモンの変化
妊娠中や産後、生理の前後や更年期など、ホルモンの状態が変化する時期には、腟カンジダを発症しやすくなります。
出産時に腟カンジダを発症していると、産道感染で赤ちゃんが鵞口瘡(がこうそう)に感染する可能性があり注意が必要です。
性交渉
腟カンジダは性交渉でも感染する場合があるため、パートナーが感染していると性交渉で再発する恐れがあります。
男性は女性に比べ、性器カンジダ症の発症率が低く、症状が出ない場合が多いものです。
女性の腟カンジダが完治しても、男性側で増殖したカンジダ菌が性交渉で女性に戻ってきて、再発するピンポン感染といった現象も考えられます。
そのため、パートナーとともに治療することが重要です。
完治したとの思い込み
自己判断で腟カンジダが完治したと思っても、体内に残ったカンジダ菌が再び増殖し、症状が繰り返し出ることがあります。
腟錠を用いた腟カンジダの治療期間は、約1週間です。
外陰部のかゆみやおりものの異常などの症状がなくなったら、腟カンジダの治療は完了です。
カンジダは常在菌であるため、腟内にカンジダ菌が少数存在していても症状の消失をもって完治となりますが、完治しないまま自己判断で治療をやめると、カンジダ菌の再増殖を招いてしまいます。
治療中は、医師の指示に従い処方薬を使用する、陰部を清潔に保つ、性交渉は避けるなどの対策が重要です。
医師の指示どおりに処方された薬を使用しても症状が治まらない場合は、別の原因が考えられるため、医師に相談しましょう。
その他
腟カンジダが再発する原因には、次のような場合も考えられます。
- 抗生剤や制癌剤の投与
- コントロールされていない糖尿病
- 免疫抑制剤の投与
- 通気性の悪い下着の着用や自己洗浄
抗生剤を服用すると正常な腟内の細菌バランスが崩れるため、腟カンジダ発症要因の一つとなります。
また、糖尿病を発症しており、血糖コントロールが不十分な場合も、腟カンジダにかかりやすいでしょう。
免疫抑制剤を投与されている方は、免疫力が低下しているため腟カンジダにもかかりやすくなります。
その他、通気性の悪い下着や陰部の洗い過ぎなど、腟カンジダにはさまざまな要因が考えられますが、原因不明な例も多くあります。
腟カンジダが再発した際の症状
腟カンジダが再発した際の症状は、かゆみとおりものの異常が代表的で、初めて感染した場合と大きく変わることはありません。
かゆみと炎症
腟や陰部のかゆみと炎症は、腟カンジダを発症した方の多くが悩む症状です。
かきむしりたくなるほどの強いかゆみを感じても、かいてしまうと刺激によってかゆみが悪化したり、引っかき傷になったりして感染が広がるケースも少なくありません。できる限りかかないように注意しましょう。
かゆみ以外にも、ヒリヒリした掻痒感や灼熱感を感じる場合もあります。
また、性交時の痛みや、赤みのある発疹が生じる方もいます。
生理前の1週間は、とくにかゆみや炎症などの症状が悪化する方が多いことも特徴です。
おりものの異常
腟カンジダを発症すると、おりものの状態や量が変化します。
おりものの状態は、カッテージチーズや酒かすのように白くポロポロとした見た目に変化します。なお臭いについてはあまり変化がありません。
臭いが変化している場合は、他の疾患の可能性が考えられるため、腟カンジダと自己判断せず病院を受診しましょう。
腟カンジダ再発予防のポイント
腟カンジダは再発しやすい疾患であるため、日頃の生活をとおして発症を予防するための取り組みが重要です。
腟カンジダを再発させないためには、次のポイントに気をつけましょう。
- 常在菌であることを意識する
- 腟内のバランスを考える
- 高温多湿にしない
一つずつ解説します。
常在菌であることを意識する
カンジダ菌は腸内にも存在する常在菌であるため、おしりを後ろから前に拭くとカンジダ菌が腟に付着する恐れがあります。
トイレの後は、おしりを前から後ろに拭くようにしましょう。
また、タオルの共用は他の方への感染が懸念されます。
同居している方への感染を防ぐためにも、体を拭くタオルの共用は避けることも重要です。
腟内のバランスを考える
通常の腟内はさまざまな菌が共存しており、乳酸菌によりバランスが保たれています。
入浴時に陰部を洗い過ぎたり、腟内まで洗ったりすると、常在菌のバランスが崩れ、カンジダ菌が増殖しやすくなります。
デリケートゾーンはお湯で洗い流す、もしくはデリケートゾーン専用ソープを十分に泡立てて泡で優しく洗うようにしましょう。
高温多湿にしない
カンジダ菌は高温多湿な環境を好みます。
下着やデリケートゾーンについて、次のような点に気をつけましょう。
- 通気性のよい下着を選ぶ
- 締め付ける下着やストッキングを避ける
- ナプキンやおりものシートをこまめに交換する
- 入浴後や水泳後は陰部をよく乾かす
- 濡れた下着はすぐに着替える
下着は、通気性のよい綿やシルクなどの素材がおすすめです。
また、デリケートゾーンが蒸れるのを防ぐために、タイトなボトムスやタイツ、ストッキングは避けたほうがよいでしょう。
生理中はとくに蒸れやすいため、ナプキンやタンポンはこまめに交換してください。
おりものシートも同様に、長時間付けたままにせず定期的に取り換えましょう。
入浴や水泳などで陰部が濡れた場合は、よく拭き、乾かしてから下着を着けるようにします。
また、汗で下着が湿った場合は放置せず、すぐに着替えましょう。
まとめ
腟カンジダは、発症した方の2人に1人が再発した経験があるとの調査結果があるほど、再発しやすい疾患です。
腟カンジダを発症すると、陰部の激しいかゆみを感じたり、カッテージチーズ状のポロポロとしたおりものがみられたりします。
特徴的なおりものの異常がみられたら、初めての場合は病院を受診し、腟カンジダの確定診断してもらい治療を受けることが重要です。
腟カンジダと診断された経験があり、前回と同じ症状が出ている方は、再発治療薬をドラッグストアで購入し、自身での治療もできます。
また、カンジダ菌は高温多湿の環境を好むため、通気性のよい下着を選び、ナプキンやおりものシートをこまめに交換するなど、生活習慣の改善も腟カンジダの再発予防に有効です。
監修
花クリニック 院長
濱野 恵美
専門
日本産科婦人科学会機構専門医
日本女性医学学会専門医
経歴
2006年浜松医科大学医学部医学科卒
JA静岡厚生連遠州病院にて初期臨床研修後、豊橋市民病院、聖隷福祉事業団 聖隷三方原病院婦人科で後期研修し日本産科婦人科学会専門医を取得。その後福島赤十字病院 産婦人科 第一産婦人科、かば記念病院、新神戸ウェルネスクリニック勤務を経て、花クリニックを開院。