【原因別】陰部のかゆみをセルフチェック!
症状の特徴も解説
陰部のかゆみにはさまざまな原因があります。陰部がかゆくて目の前のことに集中できない、もしかして何かの感染症にかかっているのだろうかなど、デリケートゾーンの悩みは人に相談しにくく、対処法が分からず悩んでいる方も多いでしょう。
恥ずかしいからといって医療機関の受診を控えていると、症状が長期化したり悪化したりする可能性もあります。
この記事では、陰部のかゆみについてのセルフチェック方法や、日常ケアのポイントについて解説します。
陰部のかゆみの原因と症状の特徴
陰部のかゆみの原因には、次のようなことが考えられます。
- 陰部の乾燥や摩擦
- 女性ホルモンの変化
- カンジダ感染症(腟カンジダ)
- 接触皮膚炎
ここでは、陰部のかゆみの原因と症状についてそれぞれ詳しく解説します。
乾燥や摩擦による「かゆみ」
乾燥や摩擦によるかゆみの原因には、下着の締めつけや、デリケートゾーンの蒸れ、生理用ナプキンの接触などが挙げられます。
症状としては、皮膚のヒリヒリとした感覚や、広範囲にかゆみが生じる点が特徴で、一般的には、かぶれのことを指します。
疾患としては接触皮膚炎といい、かゆみやヒリヒリとした痛み、赤み、湿疹などを生じることがありますが、おりものには変化がないことが特徴です。
陰部のかゆみが乾燥や摩擦による接触皮膚炎の場合、適切にケアをおこなうことで症状を緩和できます。
とくにデリケートゾーン専用の保湿剤を使用するとよいでしょう。
また、過度な摩擦を避けるために、通気性のよい綿素材の下着を選んでみてください。
タイトな衣服や濡れたままの衣類を長時間着用しないように気を付け、清潔な状態を保つことも大切です。
かゆみがある時のシャワーや入浴は、石鹸を使ったりゴシゴシこすったりせず、できれば軽くお湯ですすぐ程度にしましょう。
皮膚に残った水分は優しく押さえるように拭き取ることで皮膚への刺激を軽減できます。
ホルモンの変化による「かゆみ」
ホルモンの変化によるかゆみの主な原因は、月経周期や妊娠、更年期による女性ホルモンの減少などです。
月経周期の間、エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンのバランスが変化します。
また妊娠中もホルモンバランスの変動が起きるため、かゆみが生じることがあります。
さらに、更年期を迎える40代頃から女性ホルモンであるエストロゲンが減少し始めます。
エストロゲンは、妊娠に向けた子宮内膜の調整や、女性らしい体つきをつくるなどの役割を果たすことが特徴です。そのほか自律神経の安定や骨量維持、さらには肌のハリやツヤを保つともいわれています。
一般的に、更年期になりエストロゲンの減少が進むと、ホットフラッシュや頭痛、肩こり、気分の浮き沈みなどの症状が現れるとされています。
さらに肌のハリやツヤにも影響しているエストロゲンが急激に減少すると、体の全体のうるおい不足も更年期症状として現れる場合もあるでしょう。
更年期によるうるおい不足を総称して、ドライ症候群(ドライシンドローム)と呼び、腟やその周辺部については、ドライバジャイナと表現されます。
更年期症状はないまでも乾燥などに悩みをお持ちの方は、女性ホルモンの減少により陰部のかゆみが生じている可能性もあるかもしれません。
カンジダ感染症(腟カンジダ)による「かゆみ」
カンジダ感染症とは、皮膚の常在菌であるカンジダと呼ばれる真菌(カビの一種)が、腟内で異常増殖することより、腟に発症する疾患のことです。
カンジダ感染症では外陰部に強い掻痒感や灼熱感が生じ、性交痛などが現れる場合もあります。
カッテージチーズや酒粕のような白いポロポロとしたおりものが出ることも特徴の一つです。
カンジダ感染症によるかゆみが原因の場合、速やかに専門医療機関を受診しましょう。
早期の適切な治療により、症状が悪化する前に不快な症状を改善できるでしょう。
陰部のかゆみセルフチェックのポイント
陰部のかゆみの原因別に、セルフチェックのポイントを紹介します。
〈セルフチェックのポイント〉
- 乾燥や摩擦による「かゆみ」
- ホルモンの変化による「かゆみ」
- カンジダ感染症(腟カンジダ)による「かゆみ」
かゆみの原因をまず自身で調べたい方は、参考にしてみてください。
乾燥や摩擦による「かゆみ」のセルフチェックポイント
ここでは乾燥や摩擦が原因で起こる、かゆみのチェックポイントを紹介します。
〈チェックポイント〉
- 陰部周辺の皮膚が乾燥している
- 陰部に炎症がある
- 下着による摩擦や締め付けを感じている
- おりものに変化はない
上記の項目に多く当てはまる方は、乾燥や摩擦によるかゆみが生じている可能性があります。
ホルモンの変化による「かゆみ」のセルフチェックポイント
ここでは女性ホルモンの変化による、かゆみのチェックポイントを紹介します。
〈チェックポイント〉
- 月経周期が乱れている
- 妊娠中である
- ほてりやイライラ、多汗などの更年期の症状が出ている
上記の項目に多く当てはまる方は、女性ホルモンの変化によりかゆみが生じているのかもしれません。
カンジダ感染症(腟カンジダ)による「かゆみ」のセルフチェックポイント
ここではカンジダ感染症による、かゆみのチェックポイントを紹介します。
〈チェックポイント〉
- 陰部に激しいかゆみがある
- かゆみが陰部周辺に限定されている
- 陰部に強い掻痒感、灼熱感など、痛がゆい感覚がある
- 酒粕状のポロポロとした白いおりものが出る
- 性交痛がある
上記の項目に多く当てはまる方は、カンジダ感染症によるかゆみが生じている可能性があります。
カンジダ感染症の場合、原因であるガンジダ菌に対する抗真菌薬での治療が必要です。
心当たりのある方は放置せずに、早めに医療機関を受診しましょう。
陰部のかゆみ日常ケアのポイント
ここでは、悩ましい陰部のかゆみに対する日常ケアのポイントを解説します。
〈日常ケアのポイント〉
- 適度な衛生管理
- 適度な保湿
- 通気性のある下着の着用
- 適切なトイレタリー用品(トイレットペーパーや生理用ナプキンなど)の使用
陰部のかゆみを繰り返している方は、再発防止のため参考にしてみてください。
適度な衛生管理
陰部がかゆいからといって、頻繁にゴシゴシ洗っていないでしょうか。
デリケートゾーンの皮膚は非常に薄く、洗浄力の強い石けんでゴシゴシ洗うと皮膚への負担がかかります。
また、腟内まで洗うことも控えるようにしましょう。
腟内まで洗ってしまうと必要な常在菌が洗い流されて自浄作用が弱まってしまうからです。
自浄作用が弱くなると菌に感染しやすくなり、かゆみが増す場合があります。
陰部の適度な衛生管理をするためにはお湯で優しく洗い、洗浄剤を使用する場合はデリケートゾーン専用製品を選ぶことが大切です。
適度な保湿
陰部が乾燥するとかゆみが生じやすくなるため、ワセリンやデリケートゾーン専用の保湿剤で適度に保湿するようにしましょう。
とくにお風呂上がりは乾燥が進行しやすいため、体に残った水分を優しく拭き取りましょう。
陰部は、押さえるように優しく拭き取り、速やかな保湿をおすすめします。
通気性のある下着
陰部の蒸れは、かぶれやかゆみの原因となるため、通気性の高い綿素材などの下着を選ぶとよいでしょう。
また、下着は締め付けの少ないものを選び、生理用ナプキンやおりものシートはこまめに取り替えましょう。蒸れや摩擦による刺激をできるだけ避けることも大切です。
適切なトイレタリー用品
陰部のかゆみを抑えるためには、トイレットペーパーや生理用ナプキンなどのトイレタリー用品を適切に選ぶことが大切です。
肌に直接触れるものが合わないと、刺激になってかゆみを引き起こす場合があります。
トイレットペーパーや生理用ナプキンには、芳香タイプの製品もありますが、陰部のかゆみや炎症がある場合は、なるべく刺激の少ない、添加物がふくまれていない製品を選ぶようにしましょう。
腟カンジダが疑われる場合は
腟カンジダが疑われる場合は、先のセルフチェック項目を参考に自身の症状を確認してください。該当する場合は、早めに専門医療機関である婦人科や産婦人科を受診しましょう。
また、再発の場合は、ドラッグストアで市販薬を購入しセルフケアをすることも可能です。
デリケートゾーンにかゆみ以外の症状がないかを確認
腟カンジダの疑いがある場合、おりものの状態や陰部の掻痒感、炎症などの症状がないかを確認しましょう。
腟カンジダの場合、白いポロポロとした特徴的なおりものがみられたり、性交痛を感じたりする場合もあります。
専門医を受診する
陰部のかゆみがある場合、原因により治療法や対処法が異なるため、専門医である婦人科や産婦人科などを受診しましょう。
たとえ症状が軽くても、治療しなければほかの人に感染させることもあります。
陰部のかゆみでお悩みの方は、かかりつけまたは近くの専門医療機関へ受診が可能か確認しましょう。
適切な治療薬を使用すれば、数日で症状が改善する場合もあるため、早めの受診をおすすめします。
まとめ
本記事では、陰部のかゆみの原因や、原因別のセルフチェック、日常ケアのポイントなどについて解説しました。
かゆみの原因が腟カンジダなどの細菌感染症の場合、放置すると完治まで時間がかかる可能性があります。
陰部のかゆみが細菌感染症の場合は、医療機関を受診することで治療期間が短くて済みます。
また、再発の場合はドラッグストアなどで販売している市販薬での治療をおすすめします。
セルフチェックの項目と自身の症状を比較し、腟カンジダなどの疑わしい症状がある場合は、速やかに専門医療機関である婦人科や産婦人科を受診しましょう。
監修
花クリニック 院長
濱野 恵美
専門
日本産科婦人科学会機構専門医
日本女性医学学会専門医
経歴
2006年浜松医科大学医学部医学科卒
JA静岡厚生連遠州病院にて初期臨床研修後、豊橋市民病院、聖隷福祉事業団 聖隷三方原病院婦人科で後期研修し日本産科婦人科学会専門医を取得。その後福島赤十字病院 産婦人科 第一産婦人科、かば記念病院、新神戸ウェルネスクリニック勤務を経て、花クリニックを開院。